贈与論から読み解く缶コーヒーの呪い
まず初めに。これはプロ奢られヤーという謎の人物の元に集まったあいまいな人類達と「贈与」について研究したものについてのレポートである。
これを読む人は今までプロ奢サロンのzoom贈与論の研究に参加していた人達を前提に書いているのでそこら辺の概要は省略させていただく。
贈与論の輪読が本格的に始まる初期の段階で「贈与」とはなんぞや?という議題が上がり、僕は工事現場でベテランのおっちゃんが謎にくれる缶コーヒーやソープ嬢が謎に提供してくれる「謎ドリンク」がそれにあたるのでは?と発言した。
自販機のドリンクなんてせいぜい100円ちょいである。それなのにハードワークな肉体労働の休憩中におっちゃんから奢ってもらった缶コーヒーは格別に美味しく嬉しいのだ。(寒い冬場は感動さえする)
ここで考えてみた。工事現場、ガテン系の仕事のおっちゃん達は何故缶コーヒーを奢ってくれるのだろうか?
まだ贈与論を知る前はただのおっちゃん達の善意だと思っていたがどうやら違うようだ。
ちょうど先週の土曜日の事。ここ最近にしては寒くて雨の日だった。ガテン系の仕事はだいたい日給制で時間時給制ではなくその日の自分達のノルマを終わらせたら帰る事が出来る。雨だったので相方と要領良くさっさと終わらせて帰ろうと思っていた。この日は新設の小学校のプールの手摺りの搬入で少し重いが量は少なかった。4トントラックから軽トラックに積み替えプールサイドまで運べたのでさほど重労働ではなかった(雨さえ降ってなければ)指示通り所定の場所に手摺りを運び終えたのでおっちゃんに作業終了報告すると「よし!一服するか。ニイちゃんこれで全員分のコーヒー買って来い」と千円札を渡された。自分達仕事終わったんすけど…
雨だしなんとかして帰りたい。偉そうな監督にコーヒーを渡す際にそれとなく自分達仕事終わったんすけどあとは何したらいいすかね?と聞いたら時間までおっちゃん達の手伝いしてってとの事。
サビ残である。ここまで書けば勘の良い贈与論履修者の皆さんはお解りいただけるだろう。
このたった100円ちょいの缶コーヒーは紛れもないな「贈与」でもれなく「ハウ」がついているのだ。このハウをおっちゃんにお返しするのに我々労働者は同じ缶コーヒーで返礼するのではなく「労働」でお返ししなければいけなくなる。おっちゃん達は我々に缶コーヒーという「贈与」を与える。ここにもバッチリ「ハウ」がいた。この缶コーヒーを持ち逃げする事は許されず我々はサビ残や小めんどくさい一仕事で「ハウ」を返さなければならないのだ。そう、おっちゃん達は缶コーヒーに「ハウ」をくくりつけ頼みにくい仕事や残業を命じる事が出来るのだ。そして奢ってもらったという謎の関係性さえも構築されている。それ故に缶コーヒーと共に与えられた仕事を断りにくくなるのだ。ガラの悪そうなガテン系の仕事の中にも「贈与論」は存在した。たった100円ちょいでサビ残やめんどくさい仕事を擦りつける事が出来る。このテクニックをどう使うかはあなた次第です。
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