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TOKYO&OSAKA, Make It Happen ~Tramhaus来日公演を終えて~

※本記事はTramhaus来日公演のライブレポートでは決してなく、どうして私がTramhausu来日公演を主催することになったのか、その準備の最中で起きた出来事などの記録です。

たまに勘違いをされていることがあるので最初に私の自己紹介をさせて欲しい。まず、私は音楽で生計を立てていない。今の本業は製造業で経理。DJやイベント運営、ライターなどの活動も行っているので、そうした類を本業だと勘違いされる方もたまにいらっしゃるが、普段はあくまで一般企業の会社員。上記の音楽での各活動の収入も多少はあれど、基本は費用の方が多い。

なので、このしがないサラリーマンの私が何故にこのオランダの新鋭ポストパンクバンドTramhausの来日公演を主催することになったのか、不思議なことではある。しかしMake It Happen、それは起きた。

2023年5月下旬。Gmail受信。

”このバンド興味ないですか?アジアツアー周って日本来たいらしいんだけど、オランダがお金を出してくれそうであまり金はかからずやれそうな雰囲気です。わからないけど。もし興味あったらおしえてください!”

メールの発信者は私がレコードをよく購入している原宿のBig Love Recordsの仲さんだった。これまであくまで店主と客という関係性でしかなかったわけで、突然このような連絡を頂けてめちゃくちゃビビった。笑

当時私自身もTramhausの存在を知らなかったので、まず彼らの音源を聴けば、そこには私がここ数年夢中になって追いかけてきたまさにそれ。バンドについて調べると、2020年の結成とキャリアは間もないながらも数々のヨーロッパの大型フェスへの出演も決めていて、最も加速度を伴った時期といってもいいだろう。

例えば、2023年は念願だったFontaines D.C.を観ることができたが、欲を言えばあと4年くらい早く観たかった。それに比べれば彼らの来日は早すぎるくらいだけど、まあ観たいヨネ、、、

個人的に、当時はSchool In Londonの今度の運営方法を迷っていた時期でもあったはずで、なんなら辞めようとも思っていた最中でこういう話がふと湧いてきて、困ってしまった。でも、嬉しさもある。

とはいえ、本当に難しいと思った。Tramhausのレコードは日本で全く流通されておらず、そもそもの認知度が極めて低い。この話を承った時に、XでTramhausの日本語ツイートがあるかを検索したが、なんと「0件」。仕方がないので、バンドの認知度向上を期待してとりあえず記念すべき(?)「1件目」のツイートをした。

開催を決めたら、やることは沢山ある。ライブ会場の予約、共演者へのオファー、フライヤー作成。当日までにTramhausの日本での認知度をどこまで向上させ、興味を持ってもらえる人を増やすのか。色々な要素が未知数な中で収支シミュレーションをしながら、あまり赤字にならないように、、、、

Tramhausとも苦手な英語で連絡を取りながら(DeepL頼りだけど)、ドラムで日本通のJimとはDMで他愛の無いやり取りも日々取りながら、準備を進めていくと、彼らは青山のライブ会場の月見ル君想フ様からも出演の打診を受ける。そっちのライブオファーも承諾していいか私に相談をしてくれたが、月見ル君想フのような他には無い美しい会場でライブをするのは彼らにとっても素晴らしい体験になるだろうし、首を縦にふった。

集客が割れるという危惧ももちろんあったが、個人的にこれは正解だったと思う。なぜなら、来日公演を主催するには私はあまりにも何も知らなさすぎた。月見ル君想フがビザ関連の手続きのほとんどを主導してくれた。今後も同じような機会があれば、一緒に企画できたら、すごくうまく行く気がする。

日本の共演者のブッキングに苦戦しながらも、9月末になんとか告知開始までこぎつけられた。出演してくれたバンドはどのバンドもすぐに返事をくれて、無理な要求もなく出演を快く受け入れてくれて感謝!Tramhausに共演者のSpotifyリンクを送ったら、彼らのツアーバンで移動中に聴いてくれたようで、共演者の音楽を気に入ってくれた。

そして2023年9月25日に告知解禁。

告知開始後にSNSでの反応はぼちぼちあったけど、正直「えっ、だれ?」って反応がほとんどだったんじゃないかな。告知開始の1週間くらいでチケット予約が大阪と東京のどちらも確か5件ずつぐらいだったと思う。予想通りの厳しい初動ではあった。開催まで残り2ヶ月弱。

10月10日にSorryのライブの終演後に行ったフライヤー配り。古来からの告知手段だが効果はほとんど無いだろう。知り合いから「頑張ってください」と励まされる一方で、一部の人から怪訝そうな視線を向けられるのでお勧めできる手段ではない。

冒頭であまりお金はかからないと書いたけど、かかるものはかかる。今回の主な費用で言うと、会場の使用料、Tramhausへの出演料、日本の共演者への出演料、大阪開催に伴う私自身の旅費など。他にも細かい費用が色々と重なって、トータル費用は60万円弱くらい。(当記事の有料部分で補足という名の私の反省あり)

芳しくないチケットの売れ行き。自分もそうだが、ソールドアウトしないであろう公演のチケットの購入は直前になりがちだ。そんな傾向は分かっているものの、心臓はバクバク。えっ、このままだと45万円くらい赤字やんけ。

仲さんに泣きついたら、この収録をしてもらえた。笑

音声記事の3:30ぐらいで笑いながら喋っているけど、Big Love Recordsでそのうち扱ってくれるのかなと思ってたのは実際めちゃくちゃあった。ただ、これを泣きついた時は、少し宣伝してもらえるたらいいなってぐらいを期待していたけど、実際はサポート企画の提案などもしてもらえ、「仲真史パワー、ハンパネぇ…」と驚愕したのだった。

Tramhausのインタビュー記事に組み込んだサポート企画には15名の方より計21口のサポートが集まりました。感謝!
実際、このサポート企画が立ち上がって、直接的に収支を良化させただけでなく、以降の宣伝もかなりしやすくなった。

ちなみに、このインタビュー記事自体とても熱量の高い記事になったと思いませんか?実は相互フォローだった方が高知にお住まいということで、自分がDJで高知に行くことがあったのでそのイベントにお誘いしたところ、イベントには行けないけど、昔海外記事の翻訳をやっていたので、手伝えることがあれば手伝うというありがたい申し出をしてくれたのが今回協力してくれた(Never Get) Lost in Translation 様。最初は、とてもありがたいけど、翻訳サイトも充実した現代でそんなに必要かな?ともちょっと思ってしまったのですが、恐れ入れいました。返ってきた翻訳には単なる和訳だけではなく、無数の細かな注釈が付いていて、バンドが回答した言葉だけでは理解しきれない中身まで把握することができました。(Never Get) Lost in Translation 様の中の人はなんと11月14日の東京公演に高知から駆け付けてくれて会うこともできました。涙

SNSでの告知は、単調な文字情報の羅列にならないように気をつける。SNSでの告知情報はタイムラインを最もマッハで駆け抜けるポストであり、数が多くなればウザがられてミュート・ブロックされることもある。以前とは違う伝え方であるとか、情報や動画を加えて、新鮮さを維持しながらも、一人でも多くの目に触れられるように。

私ぐらいの規模のイベント主催者の常套手段だが、とにかく「これは貴重な公演なんだ」「自分が全身全霊を注ぎ込んで主催しているんだ」と知り合いに訴えて来てもらう。「こういう時にしか連絡をしてこないヤツ」と思われるのをビビりながらもDMの絨毯。妻からは「赤字だったら引退動画をYouTubeに出せ」とハッパをかけられる。

イベント直前まで本当に色んな人に連絡をさせてもらい、一人でも多くの人が来てくれるように動いた。そして、11月11日(土)の大阪公演で39人、14日(火)の東京公演で80人と集客数を伸ばすことができた。

そして、、、、、、




トータルの収支は若干の黒字で着地した。奇跡過ぎる、、、、

14日の東京公演でそこそこ集客できたことに加えて、来てくれたお客さんがたくさん飲んでくれたおかげで(上の動画からでも会場の熱気は伝わるんじゃないかな?)、会場である下北沢BASEMENT BARからのバックを多くしてもらえたことで、最終的に黒字化できました。最後、確かに集客は増えてきたけど、トータルで数万円は赤字かなと腹を括っていたので、赤字を完全に挽回できたのは本当に驚き。

収支の内訳でみれば、東京公演で+9万円、大阪公演で▲15万円、その他(サポートの売り上げや細かい費用)で+6万円。
自分は大阪と京都に合わせて約8年間住んでいたこともあって、どうしても大阪公演をやりたいと思って今回も組み込んだけど、大阪でマイナス15万円っていうのは考えものだなって思ってもしまった。

そういう気持ちを覚えた最中に、大阪公演に来て頂いたお客さまからこんなに熱量の高いライブレポートをA Lucid Dreamというサイトに投稿してもらえた。大変嬉しい。無理してやる必要があったのかという気持ちと、こんなに喜んでくれる人がいるんだからやって良かったの気持ちの迷子になってしまった。えーんー

Tramhausの7inchの買い逃して無いですか?
実は、彼らが物販用に持ってきて余った7inchをオランダに持って帰らせるのも悪いので、彼らの帰国前に私の方で一旦買い取って、扱ってくれるレコード屋を探して、、、みたいなことも行っていました。(私、優しすぎる〜)

お陰様で、

Alffo Records(大阪)
Flake Records (大阪)
oomalama(ex. Sone Records) (静岡)→既に売り切れ!
Marking Records (長野)
BAGISM (福岡)
to’morrow records (WEB)

でお取り扱いして頂けているので、お気に入りやお近くのレコードショップで是非お求めください!ちなみにSubroutine Recordsのレーベルストアでは既にソールドアウトしているようですので今後レア化するかも笑



そんなこんなでここまでTramhausのライブレポートではない、Tramhaus来日公演が決まってからの私自身のレポートでした。

改めて振り返っても、大変なことが多かったし、自分のオペレーションや語学力など含めて反省点ばかり(有料部分で補足します)。で、やって後悔したかと言われると、全くの逆。

Tramhausの来日公演の主催をしたことは私の人生の中で最も誇りにできることの一つとなった。

それは、なんといってもTramhausのライブが素晴らしかったこと。

私のスマホ撮影で収録した彼らのライブ動画を、11月9日の月見ル君想フでの公演も含めて私のYouTubeチャンネルに複数アップしているので、よかったらどうぞ。

そして、彼らがとんでもなく音楽好きのナイスガイで友好的だったこと。彼らは常に周囲に気を配りながら行動してくれたし、私からの色々なお願いにも進んで協力してくれた(大量のサインにも応じてくれたし)。居酒屋でも音楽の話をずっとしていたし、レコード屋では沢山のレコードを買っていった。こういうDIY性を大切にするアーティストが私は好きだし、そういうフィーリングの中で生まれてくるカルチャーにワクワクしてきた。

彼らとは本当に良い友達となれたと思う。またいつかTramhausに会える日が来ることを願うし、これからもずっと応援するだろう。2024年はアルバムのリリースを楽しみにしている。

11月14日の東京公演で元々予定していたカメラマンが体調不良で当日来れなくなってしまったこともあり、その日の昼ぐらいにダメ元でお願いしたら駆け付けて写真を撮ってくれたセキドくんの写真をInstagramにアップしているのでよかったら是非ご覧になっていってください!

以下の有料部分では今回の主催を通じての私の反省点や教訓などを書いています。また、細かな収支内容についても触れています。将来、自分と同じように、この規模ぐらいのアーティストの来日公演の主催を目指す人がいれば、役に立つかもしれないと思い、残すことにしました。物好きな人も是非よろしくお願いします。笑


11月11日。Tramhaus大阪到着時の写真
11月14日。東京公演終演後の記念写真。

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