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[Interview]Deadletter ーダンスはビートに対する自然な反応ー

もしshameのように闘志みなぎった激しく鋭い姿勢があり、Yard Actのように観察した世界のグレーゾーンをユーモラスに描き、The Raptureを想起させるダンサブルなグルーヴの海でエネルギーを燃やすバンドがいたら最高だ。そして、それは現行のシーンに存在する。

Deadletterというロンドンのアーティストを知っているだろうか?
上記のバンド像はまさに私が2020年に彼らを知った時、つまり、デビューリリースとなった『Good Old Days』『Fit For Work』を聴いた時の私のファーストインプレッションだ。ダンスフレンドリーなビートは切れ味の強い
ギターとサックスの交差で加速度と鋭利度を増長し、ダークサイドを探求したリリックが捲し立てられる。Deadletterの楽曲は痛快で楽しい。

"Human nature is a looking glass, and look we shall, avid spectators"
「我々の本性は覗き窓。見ないといけない。中毒的な観衆」

"Life's a binge"
「人生は暴飲暴食」

Binge

"Catalogue utopia
Leads to a lack, to a lack, to a lack, to a lack of morality"
「カタログのユートピアによってモラルの欠如が量産される」

"I've got shoes but no soul / And I live in a material world"
「素敵な靴を手に入れたが、魂は無い。物質的な世界で暮らす。」

Madges Declaration

2022年11月にリリースした1st EP『Heat!』は、過食と物質主義がテーマになっているみたいだが、接続過剰な現代において、快楽を求める以外に何もできない兆候を鬱病的快楽主義として論じたイギリスの批評家である故マーク・フィッシャーの言説に重なるものがある。このEPに収録された楽曲で、踊ったり笑ったりしながらもそこに何かヤバい空気を感じ、何かを考えるきっかけになるかもしれない。

Deadletterは、私が先般リリースした記事『2023年に絶対に注目したい若手UKバンド』のトップバッターとしてもピックアップしたが、彼らは新たな時代の語り手となり得る。

今回、誠に僭越ではあるが、Deadletterへのインタビューを実施し(日本初!)、フロントマンのZac Lawrenceより回答を頂いた。
2034年に発売されるであろうDeadletterの自伝にはより詳細な情報が得られると思うが、まずはこのインタビュー記事がDeadletterの音楽にアクセスするきっかけになったら嬉しく思います。


──”Gang of Fourの剽軽な怒りやTalking Headsの異質なリズムを燃え上がるポストパンクの緊張感に取り入れ、物語的な快楽のレンズを通じて暗黒面を探求する”という紹介文をメディアでよくお目かけしますが、これはあなたたちが考えた言葉でしょうか?

マネージャーのDanが色んな人の観察に基づいて、プレスリリース用に書いたものなんだ。個人的な意見だと、プレスリリースなんてぶっちゃけデタラメで、本来はリスナー個々に自分たちでイメージを作る方がいいと思う。とはいえ、特に音楽が飽和した環境の中では、こうした表現が使われる理由は理解しているけどね…。

──UK北部のノースヨークシャーを出身としつつも、音楽でのチャンスを掴むために2017年8月にロンドンへ移住しDeadletterを結成したと聞きました。すごいチャレンジ精神だと思いますが、その素晴らしい熱意はどこから来るのでしょうか?

アートに真剣に取り組むのであれば、情熱とモチベーションは切っても切れない関係となってくる。北部の小さな町に留まるよりも、ロンドンに引っ越した方が僕たちの表現のポテンシャルを最大限に育める可能性は明らかだったんだ。

──Deadletterの楽曲はクールで激しい熱量と同時に、ダンスフロアに着火点があるような踊れる楽曲が多い印象を受けています。そのあたりについて意識することはありますか?

それは核心をついているね。僕たちの音楽に合わせてオーディエンスがはしゃぎ狂っているのを見るのは素晴らしいことだし、同時に踊っているのを見るのも満足感のある反応だ。ダンスはビートに対する自然な反応だから。

──2020年の5月に初のデジタルリリースとなった”Good Old Days”であなたたちのことを知ったのですが、バンド結成からこのファーストリリースまでの間はどのような感じだったのでしょうか?

あっという間だったよ。以前組んでいたバンドから名前を変更して、バンドを再構築し、…そしてこの1stシングルがリリースされたんだ。

──2020年初旬からパンデミック禍が続きましたが、この期間でバンドにもたらした影響があれば教えてください。

僕らが音楽的に何をしようとしているのか、曲作りにどうアプローチしていくのかをよくよく理解する時間になったよ。

──So Youngでもライターを務めるPoppy Richlerがサックス奏者としてバンドに加入しましたが、この経緯について教えてもらえるでしょうか?最近のライブ映像をいくつかチェックしましたが、明らかにサウンドに幅と凄みが増して、Deadletterの特徴を更に強力にする補強に感じました。

前サックス奏者のTomが他の都合でバンドを離れてしまったので、Poppyにリハーサルをお願いしたんだ。バンドメンバーのほとんどが当時は初対面だったけど、リハーサル後の週末を僕らのスタジオで過ごし、1週間のツアーにも参加してもらい、加入となったんだ。彼女はとても才能のあるミュージシャンで、一緒にツアーに出る上で最高の人物だよ。

──2022年は9月にUKツアー、10〜11月はヨーロッパツアーと長いツアーを経験した年でもあったと思います。長いツアーを経ての感想だったり、印象的な出来事があれば教えてください。

印象的な瞬間は本当にたくさんあったよ。具体的には2034年に発売されるDEADLETTERの自伝を待ってて。

──Fred Perryのインタビュー記事で、影響を受けたサブカルチャー(?)としてMisanthropy(人間不信)の考えを挙げていたことが印象的です。最新作のEP『Heat』の収録曲のリリックにもそのニュアンスを多く感じましたが、この影響について、説明を補足してもらうことは可能でしょうか?

これは僕の作詞に向けたジョークなんだ。別に僕自身が人間不信に陥っているわけではなかったけど、何度か僕自身にメンタルチェックをしなくちゃいけないことがあった。

──あなたたちの視点から現在のUKの音楽シーンはどうでしょうか?

音楽に溢れているね。素晴らしいものもあれば、ひどいものもある。

──2023年のプランや展望について可能な範囲で教えてください。

楽曲は増えてきたし、ライブ予定もどんどんと増えているよ。

──日本についてイメージはありますか?

ライブをするのに最高な場所だと聴いているよ。

──いつかあなたたちのライブを日本でも観たいと思っています。
最後に日本のリスナーにメッセージを頂けると嬉しいです。

近い将来にあなたたちの国で演奏できることを願っています。その時が来るまで、僕らの楽曲で欲望を刺激し続けて欲しいね。


[Artist information]
ロンドンを拠点に活動。Zac、George、Alfieはノースヨークシャーを出身としており、幼馴染でもある。2020年5月に『Good Old Days』を初のデジタルリリース。2022年には<Nice Swan Recordings>から『Pop Culture Connoisseur / Hero』の7inchシングルのリリースや、<M.A.D>から『Line The Cows』の12inchシングルのリリースを経て、11月には初のEP作品『Heat!』を<SO Recordings>リリースした。So Young Magazineでは「ロンドンで最もエキサイティングなバンドの一つ」と評されている通り、ネクストブレイク候補のバンドとして大きく注目を集めている。

■Member
Zac Lawrence (vocals)
Will King (Guitar)
Sam Jones (Guitar)
Poppy Richler (Saxophone)
George Ullyott (Bass)
Alfie Husband (Drums)

■Twitter: https://twitter.com/_DEADLETTER
■Instagram: https://www.instagram.com/_deadletter/



🙏 英訳協力:Dew (https://twitter.com/tiagraslx)


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村田タケル🍩
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