王道刑事ドラマは絶滅危惧種かもしれない
はじめに
今更ながら、改めて言うことではないかもしれないと思いつつ、このnoteを書いている。
昨今、知られざる職業に光を当てるお仕事ドラマは好調である。
しかし、刑事ドラマはどうなのか。
視聴率が取れている番組もあるかもしれないが、王道刑事ドラマは過去のものとなって久しいと個人的に思う。
ここで便宜上分類する王道刑事ドラマとは、主人公が警察官であり、淡々と起きた事件を刑事として追って解決するというパターンの刑事ドラマを言い、巻き込まれ探偵型や職業探偵型は除外する。
現在の刑事ドラマが視聴率が取れているのは1話完結で「とりあえずは勧善懲悪」になっているからではないか。
最近は、根幹部分は連続の話になっていたり、後味が悪いものもある。
意外と後味が悪い作品がリアリティの点で高い評価を受けたりするが、「現実も理不尽なのにドラマも理不尽なのか」という意見()が出たり、視聴率が伸びない。
最近は警察官が主人公でも、背後に組織の腐敗や新しい技術などが加味され、「刑事が淡々と事件を解決する1話完結」王道刑事ドラマは絶滅しているのではないかと個人的に思う。
1.リアリティと虚構の狭間
理由の1つとして、昨今の現実世界で起きた事件が虚構を飛び越えることが多くなっていることがあげられる。
また、リアルな事件は、動機が必ずしもドラマチックなものばかりとは限らない。
現実では、つい手が勝手に動いてしまったとか、衝動的にとか、些細なことの積み重ねとかいう動機の事件が多い。
2.自主規制との闘い
リアリティと自主規制の乖離が甚だしい。
「盗んだ車で逃走する犯人がシートベルトを必ず締める」
リアリティという点では、疑問符がつくのに、制作現場ではまかり通る事例である。
虚構と現実を一緒にしないために「このドラマはフィクションです」の一文が差し挟まれて久しいというのに、自主規制に引っかからないギリギリを責めてみる演出&出演俳優渾身の演技も、団体からの抗議で後に問題になったりする。
自主規制のない、リアリティ溢れる「実際にあった話をドラマ化しました」的な王道刑事ドラマを見てみたいが、実際に撮影・放映できるのはNHKだけだろう。
3.トリックの枯渇
斬新なトリックは出尽くしている。そもそもリアリティで言えば、トリックありきで事件を起こす人間は稀だろう。
古今東西の刑事ドラマを焼き直し、独自視点をプラスしたり、最新事情や最新技術を加味したりするくらいしか最早手段が残されていないのではないか。
4.これからの刑事ドラマ
理解しがたい動機で事件が起きれば「面白くない」と叩かれ、独自視点やメッセージ性が強すぎると、また叩かれ、古き良き刑事ドラマにすると「時代とあっていない」と叩かれてしまう。
王道刑事ドラマどころか、刑事ドラマそのものが今後減っていくのではないか。
新たな視点・技術や、各組織の腐敗を絡めたところで、その手の作品も数多出ている。
刑事ドラマより、ホームドラマや職業ドラマが好まれる傾向は加速する。刑事ドラマが生き残れるかは、微妙なところだ。
一定期間、刑事ドラマを放送しないというのも手かもしれない。