毎日ショートショート『バイリンガル餃子』
僕達は餃子。七人兄弟。
七人じゃない餃子兄弟もいるらしいけれど、まあ大体は七人、いや、個というべきか。
そんな事はどうでもいい。
問題は端っこの長男が放つ謎の言葉だ。
『モコミチ!モコミチ!』
何語なんだろう。
なるほど。先程浴びてしまったオリーブオイルで餡がやられてしまったのか。バイリンガル気取りかと思った。
ジュウッ。
鉄板の水分が蒸発する音がした。いよいよ僕達の最後の時か。若奥様の手によって生まれた命はあとわずか。ああ、フライパンが熱そうだ。
『さよなら、兄弟』
『狭い』
『ニラくっさ』
『ヒダ元がニラくっさい』
『お前のヒダ変やな』
『餡少ない』
『モコミチ!モコミチ!モコミチ!』
長男だけが何を言っているのかわからないのが残念だ。だけど同じ言葉でも他の兄弟の会話も通じ合ってはいない。そうか言葉は気持ちとつなぎ合わさってこそ意味を成すのだ。
『しまった!』
若奥様が僕達の上に、うっかり何かの油をかけてしまった。
僕達は一斉に声を上げた。
『セサミン!』
何の油か 伝わった。
※たらはかにさんの企画『バイリンガル餃子』参加。419文字でした。
もこみち、、セサミン、、伝わりますでしょうか。