ミルク
私が信じてたものは愛だったはずだった。
恋人がいる人を好きになってしまっただけで、それは恋人がいるからその人を好きになったのではないということ。私は彼のことを一人の人間として尊敬していた。慕っていた。そして恋焦がれていた。騙されていた訳でも遊ばれていた訳でもなくて、私は彼が好きで、彼も私を好いてくれていて、それだけだったのに。出会ってから絶縁するまでの10ヶ月間、楽しかったのに。それら全部、全部が間違いだったということ。これは決して優しい恋ではなかったということ。
私なりの愛だったのになあ。私にとっては愛だったのになあ。私から見た世界は綺麗だった。だけど、これは世間一般から見たらただの浮気で、道徳から免れた行為で、不誠実なことで、もう何だかよく分からないや。
良くない関係だって自覚はずっとあって、でもお互い様だから私にも彼にも同じくらい罪はあるのに、年齢と立場によって早々に私だけ許されてしまった。おかしいじゃないか。対等なはずなのにね。
人間は綺麗なまま生きられないって分かってはいる、つもり。それでも己の醜さを突きつけられるのはなかなかに苦しい。
2ヶ月くらい前から、離れようとはしていた。絶縁までしなくとも2人で会うのをやめる、とか。私ずっと、あなたのことが好きで大切だから、あなたに幸せでいてほしいから、離れようとしてたのに。それを拒んできたのはあなただったじゃないか。突き放してくれなかったじゃないか。だから今回絶縁を選んでくれたのは一種の救いでもあった。あなたが私に見向きもしないなら諦められたはずの想いだから。中途半端に好いてくれているから無いに等しい可能性に縋りついてしまって苦しかったんだよ。
あなたに幸せでいてほしくて、だから苦しいけどちゃんと離れたんだよ。
私が信じてたものは愛だったはずだった。