Sweet like Springwater ⑦ 天然氷のような甘さ (短編小説)
Part1~6アップしています!①から読むのをお勧めです。
7.
春香の青春、空き時間はしょっちゅう音楽を聴いていた。音楽さえあれば、それ以外願わくことはない。豊かな人生はそれだけだ。大好きなジャンルはポップス、でもロックも嫌いではなかった。宿題中といい、怠ける時間といい、とにかくスピーカーかイヤホンから好きな曲が流していた。この頃は、もう既にスマホ時代が改元したこととて、音楽はほぼネットを通して聴いていた。初めはそうでも、母から古いCDプレイヤーを受け継げてから、CDプレイヤーにはCDコレクションが不可欠だと信じ、小遣いでCDを買いまくった。
明るい曲、涙を流す曲、落ち着かせる曲、癒する曲。心が求めるものは日に日に変わるが、どんな感情でも音楽は伝えてくれる。大海のように、天気は日にちによって変化するけど、いつでも綺麗。それは音楽も同じ。歓喜の波、退屈の波、良くいかなかった日の波、もろもろの波が押し寄せて、気分が上がったり下がったり、揺らされてなびいた。
いつからだろう、あっと言う間に音楽を聴かなくなった。春香はある日思い付いた。今なんか、カフェで流れてるBGMを除いたら、沈黙に包まれた暮らしだった。
このマイナス傾向をひっくり返すように、春香はミュージックアプリをダウンロードした。まず高校時代に憧れていたアーティストを検索して、次は新しいアーティストの宝探しに出掛けた。特にアデルという歌手が好きになった。英語は分からにけど、コーラスだけは覚えて口ずさむ。
カラオケは一度しかやったことがなかった。一番初めのバイトの仲間に誘われた。でも、あまり楽しく感じなかった。その時は春香は浮いていたからだと思える。私はどこに行っても馴染めず、どんな地に到着してもいつも仲間外れだ。そう春香は思った。でも、いつも一匹狼ごっこしてなくてもいい。実情を変える力は自分にある。今まで寂しいと言う訳でもないけど、友達がいることは価値がある。そう反省した。
その時期、春香は友達作りが次のチャレンジだと考えていた。カフェの事務所でいつものように休憩を取ってたら、手が勝手に動き始めて、バッグからスマホを出した。
突然で申し訳ございません。シアトルコーヒー店からのハルカです。先日、お手紙を頂戴しました。とても綺麗な文書を書いてくれて、感謝を伝えたいと思っています。
考えず、送信ボタンを押した。寺山拓摩にメッセージを送ってしまった。その次の瞬間、雷のように後悔が天から降ってきた。自分が何をしたかよく分かっていなかった。手が勝手に、心が勝手に、作戦を決めた。最近、こんなことが多い。昔はもっと臆病で、自分を常にコントロールし、人の迷惑を起こさないように注意深い人だった。段々とゆるゆるになって、自業と自得を気にせず、安閑とした情勢で風が吹いたまま航海するようになった。
でも、今回は流石やり過ぎだ。以前、メッセージを送らないと言ってたのに。なぜ、手紙を捨ててなかったのか。鳥肌が広がった。
数十分はやばいと感じて胸がそわそわしてた。しかし、悩みは長引かなく、これのこともすぐ忘れて、仕事モードのスイッチを入れ、休憩が終わるとすぐ切り替えた。多分、寺山拓摩はメッセージを無視するだろうと信じ込んだ。その夕方、スマホを確認したら、リプライは来ていなかった。
次の日に、リプライが来た。
お手紙をお読みになって頂き、痛みに入ります。正直、何を言っていいのか分からない気持ちでおりますが、まず感謝を言葉にしたいです。私は、はにかみ屋で、いつも他人を無視して、代わりに他人から無視される、そんな人生でした。ハルカさんに届けたお手紙を書いた後、恥ずかしさに負けて、もうお店には行けませんでした。それは、お店が悪いわという意味ではないです。コーヒーも美味しさ、落ち着く雰囲気、全てが好ましくて何回かお邪魔しました。コーヒーをゆっくり飲みながら、ノートパソコンを開いて仕事に集中できました。
手紙を書くという大胆な行動は、そのお店の穏やかな雰囲気に持ち去られたではないかと思います。昔の幼馴染に手紙を書こうと思い、百円ショップでレターセットを買っていたのですが、幼馴染へ書いた手紙は結局出しません。何を言いたかったのか分からなかったからだと思います。その時、カウンターの向こう側にハルカさんが立っていました。
初めてお店をお参りした日に、Wi-fiが繋がらなくて困っていました。そこで、ハルカさんが、たまたま隣のテーブルを片付けいたので、文句を言うように、どうすればいいのですかと話し掛けました。その時の態度はますます傲慢で、大変失礼いたしました。男性としては、パソコンで手伝ってもらうことは恥ずかしいことで、悔しい気持ちを抱えていたかもしれません。しかし、ハルカさんはとても親切にお手伝してくれます。丁寧にログインの仕方を教えてくれました。ハルカさんのもてなしは今でも記憶に残っています。
その日、Wi-fiの繋がりだけではなく、もう一つの意味で助かりました。私はオンラインの仕事を長く続けたせいか、孤独感に苦しんでいました。一言でも話してくれると、心が本当にすっきりします。ハルカさんは誰よりも気持ち込めた挨拶をしてくれ、温かい笑顔を見せてくれ、どんなに楽になったか伝えにくいです。この心配りに感動しました。どうか、恩返しをしたいと思ってお手紙を書きました。
少し仲良くなりたいと思っています。もし、都合が良ければ、どこかでお茶でもして、ゆっくり話せればと思います。
寺山拓摩は自画像の写真も送った。20代後半から30代前半に見える。悲しそうな目をしていた。口は笑っているが、虹彩には抑えきれない感情がにじんでいた。春香はその写真にじっと見ている間、もしかしたら、彼も私みたいに、この世の中で懸命に生きている孤独な人なのかもしれない、と思った。長く写真を勉強していると「真剣に見ない方がいい…真剣に見ると恋に落ちちゃうからね」。その一言を思い出して、春香は目を反らした。
次の策戦を決めなければ。じっくり考えた。次の休日、スケジュールに空間があって、どうにかして塞げたい気持ちがあった。最近、「暇」っていうものは「淋しい」ものだと考え始めてきた。多少悩んだけど、最後は感情に任せて、リプライを書き出した。
はい。休みも取れますので、どこかで会いましょう。
少し離れた町に可愛いカフェがあります、と返信がきた。どうですか?ここでも宜しければ…
宜しいです、と春香は返信を送った。
楽しみな日がすぐそこだと、そういう期待を持っていると人生観は少し変わる。お客さんには丁寧に話して、気持ち込んだ輝かしい笑顔を見せて、機械的に仕事をこなした。寺山拓摩からきたデートの誘いに「イエス」と答えた。デートなんて。これも、人生初の体験だった。最近はいろいろな初体験が重なる。これは良いことのやら、怖いことなのやら、あまり悩まず、空気を読んでリズム通りに足を踏む。ただ、人の気持ちを大事にして、優しくしていけば幸運が追ってくる。そんな教え、どこかで聞いたような感じがした。これを信じて、もっともっと新しいものに向き合おうという気分になった。
「春香は休みの日になにするの?」と沙也加に突然聞かれた。
げっと感じた。なんで、こんな日にこんな質問を?と思ったら、コンテンポラリーダンスの話をした時を思い出した。沙也加は個人的な質問には個人的な質問で払い返ししていたのか。
いや…休んで、喫茶店にちょっと寄ろうかな。春香は一番重要な部分を省略して返答した。寺山拓摩のこと、なぜか秘密のままにしたかった。沙也加は頷いて、すぐ仕事に戻った。春香もそのあとショックから回復して、チェックリストに目を付けた。
デートの日がまだ遠いと思ってたら、意外とすぐ回ってきた。春香は心の準備不足で、ひやひやした気分で朝起きた。一時間近く衣装を選ぶ行事に潜み、次はメイクをしっかり、そして多めに付けた。恵美にアドバイスを聞けばよかったと後悔した。でも、これは秘密のデートなんだと自分でそう決めた。
デートの行き先への電車に乗ると胸ざわめきが猛烈に振舞う。手足のみならず、骨まで緊張感が染み込んで全身がぶるぶるしていた。キャンセルしよう。身体が耐えられない。やっぱり、断るべきだった。デートなんか無理。メッセージ一本で全部忘れてもらえば。そう考えたが、最後は約束を守るべきだという道徳の考えが勝った。良心に従って、体が壊れてもこの約束のデートにいくことを決意した。
予定より十分前にカフェに到着した。席を取って待つことを決めて、中に入ったら寺山拓摩が隅っこのテーブルに座っていた。写真の方がもっと格調高くてハンサムだった気がする。今の寺山拓摩は厳然たる表情。何か深刻なことを考え込んでる風に。そして悲しそうな目。そこで、春香に気付いたとき、寺山拓摩はその深刻な顔を笑顔で割った。春香は近づき頭を下げた。ステージに出る直前が一番怖い、でも音楽が流れてくると全部忘れる。沙也加はそう言ってた。デートもダンスと同じ、電車が一番緊張する。でも、カフェに入った途端、手足の震えが止まっていた。笑顔が自然に咲いて、寺山拓摩のテーブルに自信を持って向き合った。
はじめまして。
彼はまだ、注文してなかった。春香は座ってまずメニューに注目する。その間に、周りの環境を吟味した。ここで働くのはどうだろう?ここのオーナーさんは優しい人かな?裏にある事務所はうちのお店より広いかな?などと考えた。
寺山拓摩は喉払いして、なんとなく話しを始めた。自分の学歴とか経歴とか。春香は聞いているようにしてたが、胸ざわめきがまだ残って、話をよく聞き取れなかった。これがデートなのかと思い、ちょっとこの話しは面白くない気もした。そして、なんでこんな面接ぶっているのか。その時、目線を上げて相手の顔を見つめた。何かに気づいた。もしかして、相手も緊張しているのか。それを思ったら、自分も少し楽になった。
寺山さん、凄いですねと言って、相手をほっとさせてあげた。これも、接客業の経験を生かしていた。
吉本さん、本当に可愛いですね。寺山拓摩が言った。
その時、「そうだ」と思った。仕事中は常にマスクを着用しているから、春香の素顔は初めて見せたのだ。寺山拓摩は顔を見た事ないのに、デートに誘った。どういう風にこの事情を取り上げるべきか、と考えた。
褒められるのは好きでもない嫌いでもない、どっちと言ったら好きだけど、恥ずかしくもあまり感じない。春香はそういう人格だった。
ねえ、敬語はやめよう。お互いに知り合うとしたら、建前を続けるのは無駄じゃない。
そうですね…寺山拓摩は緊張のまま笑って言った。
ブレンドコーヒー二杯がテーブルまで運ばれた。味わって飲んでいる間、話すトピックが浮かび上がった。春香は独り笑いしながら喋った。
最初は覚えてなかったけど、今思い出した。五六回は会ったことあるよね。これから常連客が一人増えたと思って、バカなことだけど、ニックネームも付けたんだ。「スパイ」と勝手に名付けて…
スパイ?そうですか…なんで?
いつもパソコンで何か真剣にやっていて、そしていつも格好いいスーツ着ていて。映画ではそうでしょう?スパイ男は必ずスーツで。
寺山拓摩は穏やかな笑い顔をみせた。そう?いや、私はただの経理者ですけど。
彼の態度が気に入った。女性をいたわる人だと分かってきた。
彼は、申し訳ないように言った。私は三十歳ですけど、吉本さんはもっと若く見えますけど。
ううん。それでもいいです。私はいつもお兄さんがほしいと思ってて。
飲み物を飲み干し喫茶店から出た。桜の花びらの並木が早咲きで、綺麗な街並みの風景。明治時代の建築物が立っている、カップルがぽつぽつ腕を組んで散歩している、珍しい店が並んである。中心から離れた静かで面白いものが多い町だった。桜の名所として知られる公園がすぐ近くにあったから、ここに連れたかったんだと寺山拓摩が言う。二人はそのうち幾つかの店に入り、装身具や高級品をひやかす。その中に、春香がどうしても気に入ったスノーグローブがあった。買ってあげようか、と寺山は言う。春香は遠慮したが、そう言われて嬉しかった。
一時間が過ぎて、さらにもう一時間。屋台の食べ物を美味しく食べて、もっと話している間に、またお腹が空いてきたから、そろそろ夕食取ろうではないかという話になった。寺山の心当たりのタパスバーに移動することにした。春香はワインを一杯飲んで、もう限界だった。頭がくらくらになり、緊張が解けて興奮に変わった。今日が終わらなければと思った。元「スパイ」だった寺山拓摩と近づきたい、そんな気持ちになった。その時、春香が自分を驚かせるセリフを言った。
私の部屋に戻ろう、と言った。
一瞬に、寺山拓摩と一緒にアパートで、ベッドの上に隣同士に座っていた。春香はブラウスを脱いだら、しなやかな身体を見せた。透明感がある肌を他人が触れたことがなかったが、不思議に春香は恥ずかしくない。寺島拓摩はすこし躊躇したが、逃げようともしない。「いいよ」と言って、春香はゆっくり、愛人というか可愛い弟みたいに抱きしめた。
(つづく)
aoba22neuと言うアーティストの作品を借りました。とても、可愛いイラストが多くインスタグラムのページに載っています。是非、ご覧になって下さい。
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