卵子凍結の話③

卵子凍結の採卵は全3回しました。
凍結した卵子の内訳は以下の通りです。

1回目:8個
2回目:9個
3回目:6個

ここでは1回目の採卵までの道のりを書いていきたいと思います。

診療の流れ

基本的に採卵周期は月経が始まってからスタートします。

採卵当日以外、やることは毎回ぼぼ同じ。

クリニックに到着したら、まず血を抜きます。
LH(黄体形成ホルモン)などの各種ホルモン値を確認し、
内診で先生に子宮や卵胞の発達具合を診てもらいます。

その状態に合わせて女性ホルモンを投与・服用しながら、
卵胞成熟を促していきます。

ホルモン値に排卵直前の兆候があらわれたら、
排卵を止めて卵子を成熟させ、
いよいよ採卵という流れです。

通っていたクリニックの方針は自然周期採卵だったので、
毎朝の基礎体温の計測が義務付けられていました。

基礎体温値やホルモン値を総合的に見ながら、
最適な採卵のタイミングを見極めていきます。

全てのことが初めて。
「このデータ、この行為にどんな意味があるんだろう・・・?」
よくわからないまま治療は進んでいきます。

先生や看護師さんに指示されるまま、
目の前の作業を淡々とこなしていきました。


体に起きた変化

年齢のせいか、高いAMH値のせいか、
私は体質的に卵胞の成熟が遅いようでした。

私の通ったクリニックは比較的投薬量が少ない方らしいのですが、
採卵が近づくと、ホルモン剤の服用に加えて皮下投与も始まりました。

それでもなかなか卵胞が大きくならず、
徐々に投与量を増やしました。

それに伴い、
卵巣がずっしりと重く腫れているような、
言葉で言い表せない感覚が下腹部に増していきます。

自分の体が知らない風に変わっていく気がして、
なんとも言えない不安感が募りました。

いよいよ採卵準備

5回目の診察の日。
生理開始から数えて15日が経っていました。

内診室のモニターに映し出される卵胞の黒い影が、
窮屈そうに卵巣の中でひしめいています。

「いっぱいある」
「かなりでかいな」

内診中の先生のつぶやきに、
「いよいよ採卵か・・?」
と高まる期待と不安。

卵胞たちは最大で直径20ミリくらいに大きく育っていました。
加えて、ホルモン値にも排卵の兆しが。

「あさって採卵だね」
「今日から黄体化を止める薬を飲むからね」
と先生。

排卵抑制剤と卵子の成熟を促す点鼻薬を受け取り、
クリニックを後にします。

服用時間は厳重に決められており、
すっぽかしてしまうと採卵はできません。

これまでの努力が水の泡だと思い、忘れないようにタイマーをセット。

「いよいよ、卵子をとるんだ・・・」
「痛いのかな・・・」
採卵まで2日あるのに、すでに緊張していました。

コントロールできないこと

初診から採卵まで、2週間弱かかりました。
この間に通院した回数は計6回。
2~3日に一回は通院していた計算になります。

特に採卵直前は頻度が高まります。
排卵のタイミングを慎重に見極めるため、
2日おきに通院する必要がありました。

1回の診療で待ち時間を含め約2〜3時間程度かかります。
移動時間を含めるともっとです。

毎回の診察後に「次は○○日にきてね」と通告されます。

何もかもが初めてのこと。
次に起きることが予測できないので、
まるで爆弾を抱えているような感覚になります。

幸い自由度が高い仕事のため、
半日休などを駆使して対応していきましたが、
仕事の予定とニアミスしそうになることもしばしば。

毎回ヒヤヒヤでした。

とりわけ、採卵日は動かせません。
診察時の先生の言葉を元になんとなく予想し、
その日あたりはいつでも休みが取れるよう、
仕事の予定を調整する必要がありました。

さらに、
採卵は外科手術なので、当日は少なくとも半日は潰れます。
ホルモン値を自在にコントロールすることは不可能なので、
体の状態に合わせて仕事を調整していく必要があります。

体調管理も必須です。
コロナやインフルなどに感染したら通院はできません。
採卵はもちろんストップ。
それまでにかかった費用も戻ってきません。

不妊治療を頑張っている先輩たちの苦労話はこれまでも折に触れて聞いてきました。
「大変そうだな・・」とは思っていましたが、
女性の体の中のことなので、
第三者にはいまいちイメージしにくいのが不妊治療。

一連の流れを、仕事もしつつ妊娠成立まで続けるのは、
精神的にも体力的にもかなりキツいということを初めて理解しました。

卵子凍結の場合は凍結さえできればミッションコンプリートですが、
不妊治療はゴールの見えないマラソンとも言われます。

旦那さんやパートナーの理解や支えは不可欠だと思います。


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