大嫌いだったネオン街でビジネスに出逢う。
正直、夜の仕事は身体に合わなかった。
田舎の繁華街で育ったようなものなので、むしろ「ホームタウン」なのかもしれないけど僕はそうしたネオンや喧騒に馴染めなかった。
これを書いている今まで、能動的にスナックやクラブに出かけたことはありません。
誰かに連れていかれたことばかりで、もちろん何人か一緒にいて楽しかった人もいたけど大半は「無駄な金と時間を使った」と言う気持ち。
「仕事」にするとその想いは加速していた。
出勤するたびに激しい吐き気にみまわれた。
それでも、学んだことは多かった。初めはクラブでボーイから初めて、姉妹店のショーパブでバーテンをしながらショータイムの技術を身に着けていった。
何が求められるのか?相手は酔っ払いで忖度が一切存在しない。
欲望だけをむき出しにした客席に、怯えていた日々だったと思う。
それでも、そこに食らいついていた。
そうした生活も何年もやっているうちになれるもので、マネージャー代理までやるようになった。オーナーは僕に店長として店を任せたいと言ってくれていましたが、それは固辞しました。いつも辞める事ばかりを考えていた僕にはとても勤められなかった。
でも、そうした「いつでも辞めるつもり」というスタンスが丁度良かったのか、学ぶという余裕は僕の中に在ったと思う。
「代理」というポジションも良かった。マネージャーはいたので、責任はそちらに・・・というつもりでいたし、マネージャーは仕事をさぼりがちだったので、その日は僕が運営をしていく。そうしているうちに運営や経営について随分と学ぶことが出来たし、田舎とはいえ少し値が張る店だったので来店する客は経営者が多かった。また幸いにもそうした客に気に入られたので同席を求められ随分たくさんの経営の話を聞く幸運にも恵まれた。
正直に言うと、そうして気に入られてインサイドに入るというのは作戦だった。
僕はそうした一流が身に付けそうなアイテムを調べ上げ、見抜けるように目を磨いた。
来店した客のカフスボタンを褒め、時計を羨み(というポーズ)スーツの仕立てを称賛した。
そうしていく内に「あいつは「目」を持っている」となっていく。彼らが求めているのは「会話ができる人物」どんな専門的な話をしても対話が出来る人間を求めている。それは必須だ。
売れっ子のホステスやホストは外見では続かない。そうした客の興味視点で会話ができる事。僕はバーテンというポジションでそれを身に付けて、経営を体中に染み込ませた。
そうして「夢中」になれることを見つけたと思った。
つづく
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