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日々のまま

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エッセイ。みたもの、聞いたこと、感じたこと。あの日の旅のこと。日々のままに、そのままに。
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2023年4月の記事一覧

好きなバンドの曲を聴きながら、噛み締めた幸せと決意の話

好きなバンドの曲を聴きながら、噛み締めた幸せと決意の話

サニーデイサービスというバンドのライブに久しぶりに行った。前回行ったときはまだ制限がたくさんあって、行儀良く並べられた椅子に腰掛けて、声も出さず手拍子だけで気持ちを表現していた。今回は好きなだけ歌い、好きなだけ踊り、好きなだけ声を出して笑った。バンドのボーカルの曽我部さんが「最高だねえ」と笑った。

気持ちよさそうに演奏する彼らを見て、歌うことが、奏でることが、好きなのだと思った。音楽を、メンバー

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東京も好きだということ

東京も好きだということ

銀座の夜の街を歩いていた。たくさんの外国人と洗練されたファッションで歩く人々。ネオンがきらり、きらりと、輝いていた。

わたしが今の部署に異動してオフィスに来た頃、この道にはほとんど誰も歩いていなかった。電気は消されていて、レストランには休業の張り紙があって、コンビニだけが賑わっていた。でもみんなマスクをしていて、嬉しそうな人はいなかった。いたのかもしれないけれど、分からなかった。

それがまるで

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置かれた場所で咲くために

置かれた場所で咲くために

パスポートの更新が必要だったので、3月に手続きをした。できあがったとの連絡が入り、市役所に取りに行くと若い女性と中年の男性が出てきて担当をしてくれた。若い女性はどうやら4月に入ったばかりの職員さんのようだ。中年の男性が手順をひとつひとつ教えていた。

ふと、あたりを見渡すと、あちらのほうにもふたりペアで動いているひとたちがぽつり、ぽつり。あぁ、そうか春だなあと。なんだか新しい新鮮な気持ちが心にぐっ

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思い出は過去を解放する

思い出は過去を解放する

平野啓一郎さんの『マチネの終わりに』を貸してくれた友だちがいた。そのあと自分で本も買ったし、映画も何度か見た。今はもうあんまり会わなくなってしまった友を大切なときに思い出す。

そしてこの本の通り、少しすれ違った人生のあとにきっと、また出会う。細く、細く、繋がっているのだと感じる。

これはわたしの携帯電話のメモに記されたいつかのもの。確か、北海道に訪れたときに書いたような、気がする。いや、もっと

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日々のなかにあるもの

日々のなかにあるもの

桜はいつの時代も人々の心を魅了したのだと思う。今年も、去年も、おととしも。世界がコロナという脅威におびやかされていたあの春も、わたしたちは桜の開花を待った。

その美しさと、儚さ。満開になったと思えば、いつの間にか散りゆく。その切なさにまた、人々は惹かれているのかもしれない。そんなことを思いながら、徒歩2分ほどのゴミ出しの道を歩いていた。

先週ゴミ出しにここを通った日は、雨が降ったあとで、桜の花

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