キミと自分②




ある日、自分がキミに質問をした時。


「キミにとって、一番譲れないモノって何?」


その質問を聞いた瞬間の、何とも言えないキミの表情。
そんなキミの顔を見たくて、ついつい唐突に、いろんなコトを聞いてしまう。

自分でも「意地が悪いかな」…とか思いつつ、そんなキミの表情がかなり好き。


(何で、今、そんな質問が出るワケ?)


...しっかりと顔に書いてあるよ。



だけど、不可解そうな顔をしながらも次の瞬間には、
自分の問いに対する答えを、真剣に考えようとしている顔に変わる。


実を言うと、その顔は、もっと好きだったりする。


今、キミがグルグルと考えを廻らせているだろう、その様子を、
上目越しに眺めながらのひと時。

『自分が投げかけた問いを考えてる』イコール、
『自分のコトを考えてる』的な三段論法に酔いしれる。

我ながら、ホント悪趣味かな、とも思う。


でも、キミが真剣に考え抜いて返してくれたコトバは、
自分にとっては正に『言の葉』。とても、大切なモノ。

キミの口から、どんな言葉が、どんな答えが紡ぎ出されるのか。
それを聞きたくて問うてしまう…というのが、実はホントのトコロ。

...なのかも知れない。



キミのコトを、もっと もっと たくさん 知りたいから。
自分のコトを、もっと もっと たくさん 知ってもらいたいから。


ねぇ...キミはまだ知らないでしょ?
だって、自分もまだ知らない。


そんな、数秒。
期待と不安が入り混じった。


そうして、キミはハッキリとした口調で言った。

「キミとの、こーゆう時間」


自分の反応を楽しんでいるワケでもなさそうだ。
だって、よく知ってる。これだけは。

キミは、自分の反応を試したいがために、狙った答えを返すような人じゃないから。
言い回しは多かれ少なかれ、もったいぶってるコトもあるかも知れないけれど。


キミが答えたコトは、キミが真剣に考えたコトの結晶。
とても強いけど、それでいて繊細な。


だけど...思い巡らせていた答えを、微塵も含んでいないんですけど…っていうか、


「…そーゆうコト、聞いてないし」


キミは「そう?」とでも言うかのような、何事もなかったかのような顔をしている。


まだまだ、たくさんの『知る余地』がありそうだ。お互いに。



まだ、キミと自分の時間は始まったばかり。

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