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〘お題de神話〙今、そこに在るものに
「さて、今回のお題は“Grace”だ。ざっくり言えば“神の恵み”だな」
「Grace──ギリシア神話の女神カリスからローマ神話の女神グラティア、その英語読みだな。優美、上品などの意味もある」
「今、辞書見てただろ?」
「バレたか」
「では恩恵……神の恵みとは?」
「はい! 与えられし才能!」
「はい! 同じく美貌!」
「私利私欲に走ってない意見はないか?」
「さらりとスルーされたw」
「地場とか何かないか?」
「おれ? ん~そうだなぁ……わかりやすいとこで言うと、田舎のばーちゃんたちの生活そのもの、かな?」
「ほう? して、その心は?」
「突き詰めれば、地球上で暮らしてる全てに当てはまるとは思うんだけどさ。結局の所、大抵どこに出現するかで人生変わってくるだろ?」
「……出現と来たか」
「努力とか環境で変わることもあるし、人によって元々の受け取り方とか違うし、人生プラマイゼロなんて言葉もあるけど、最初って出現場所じゃん。そん時に、ばーちゃんたち見てるとすごくシンプルでわかりやすいなーって思うんだ」
「地場のお祖母さん家って農業やってるんだっけ?」
「うん、うちはね。近所には山の漁師も海の漁師もいる」
「地場くん、都会生まれとは思えない時あるよね」
「そっかな? ああ、まあ、良く行ってるからな。やっぱさ……ばーちゃんが作った米とか、(数十メートル)隣のおばちゃんが採って来た山菜とか、向こうの家のおっちゃんが獲って来た魚とか、やっぱ旨いんだよな」
「晩飯前にやめれ……」
「でも、いつもいい時なワケじゃなくってさ。恵みがない時も当然あって、それはどんなに努力してもどうしようもなくって、それだけじゃなく、失敗してダメにしちまうこともある。だけど、与えてくれることも少なくないから、また頑張る」
「……身につまされて来た……」
「そんで面白いなーと思ったのが、ばーちゃんたちさ……神様に祈るんだよな。これから漁に出るから守ってくださいとか、今年も豊作にしてくれてありがとうございますとか、至る所に神様がいる前提で、今、在るものに感謝するんだ。まさしく神の恩恵ってやつ。神話の“し”の字も知らないような人たちがだぜ? それって、物語とかなくっても何かすげぇ神話じゃね?」
「……一も二もなく同意せざるを得ない件」
「いや……何か……ちょっと胸にキタわ……」
「え、そんないいこと言った? おれ」
「オチ作ってヘタこくより、今日はここで綺麗に終わろうぜ」
「「「賛成」」」
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