それは…どぉゆうコトなの?2~前編~
━偏差値。
学生時代、悪魔のようにぼくを苛んだヤツら。
それが、実はマイナスと言う結果にも成り得たのだ、と言う衝撃の事実を知ってしまってから数ヶ月後。
ぼくは、思わぬところで、思わぬものと遭遇することになる。
それは、暖かいと言うよりは限りなく暑い初秋の日。
所用で出かけた御紅茶ノ水駅(仮称)近くでの出来事だった。
*
用事を済ませ、駅の近くまで戻ったぼくの目は、駅前にある地図を食い入るように見つめる集団に釘づけになった。
「…………(あの子たちは)…………!!」
あの子たちだ!!!(意味不明)
そう、忘れるはずもない。
数ヶ月前、ぼくが遭遇した『偏差値どぉゆうこと事件』のあの子たちだ。
まさか、こんなところに来てまで遭遇するとは……!
それにしても、あの子たちは地図を食い入るように眺めているが……どこかに行くつもりで迷ったのだろうか?
(いや、ぼくには関係ない!関係ないんだぞ!)
……そうは思うものの、何か気になる。気になって仕方ない!
それは、あの子たちのボケさ加減のせいに違いない。
つい好奇心に負け、ぼくは地図を見るフリをして彼女たちの横に立った。
A「……ないよねぇ」
B「ないねぇ」
C「とりあえず、向こうに歩いて行ってみよっかぁ」
D「そーしよっかぁ」
そう言いながら、彼女たちはゾロゾロと歩き始めた。
(一体、どこに行こうとしてるんだ?)
好奇心の塊と化したぼくは、ストーカーよろしく少し離れて彼女たちを尾行することにした。
ペラペラしゃべりながら、ヘラヘラ笑いながら歩いて行く彼女たちの顔が、何故か次第に能面のようになって行く。
━と。
自転車に乗った駐在さん(何か矛盾してる)を掴まえ、何やら訊いている様子。あまり近づけないので、何を訊いているのかはわからない。
駐在さんが彼女たちに何かを説明した様子で、4人はお辞儀をして再び歩き出した。心なしか顔が明るくなっている。駐在さんに訊いたことで安心したのだろうか。
そうして意気揚々と歩いていた彼女たちの顔が、再び能面仕様になって行く。
(どうしたんだ?)
足取りも重そうな彼女たちは、視線の先に交番を見つけるとパッと表情を変え、全員でバタバタと駆け出した。
交番前の地図を見るフリをして傍に行くと、ぼくの耳はダンボになる。
A「すみません。あの……御紅茶ノ水女子大学付属高校(仮称)ってどこら辺なんでしょうか?」
(えっ!?)
駐在「御紅茶ノ水……?」
(……ちょっと待てよ。確か、御紅茶ノ水女子大学付属高校って……)
駐在「……ああ!ここじゃないよ」
ABCD「「「「えっ!?」」」」
4人は顔を見合わせる。その顔が雄弁に物語る内心は━。
『それって、どぉゆうコトなの?』
駐在「御紅茶ノ水女子大学付属高校はね……え~と……地下鉄バツの内線(仮称)の生姜谷(仮称)の駅の近くだよ」
(この子たち、駅自体を間違えていたのかよ)
お礼を言った彼女たちは、今度は地下鉄の駅に向かって歩き出した。駅の入り口を見つけると、降り口に貼ってある路線図を確認している。
B「あ、生姜谷ってここだ」
C「ホントだ。一駅違いとかじゃないね」
(どぉゆうコト?)
D「……御紅茶ノ水女子大学付属高校だからって、御紅茶ノ水駅にあるワケじゃなかったんだね……」
(えっ!?この子たち、最寄り駅を誰一人として調べもせずに向かってたのかよ!?場所くらい確認して来るだろ!!)
ぼくはもうツッコミまくりだった。(心の中で)
A「仕方ないよ。場所わかったんだし、行こっ!」
(いや、仕方なくねーだろ!普通、初めて行くなら少しは調べるだろっ!!)
秒速で気を取り直し、階段を降りて行く彼女たち。
どうにも気になり、つい後ろから階段を降りて行くぼく。
(しかし、あの子たち御紅茶ノ水女子大学付属高校(長い)に何の用があるんだ?あの子たちには全く関係ない気がするが……)
……などと、よく考えなくても失礼なことを考えつつ、ストーカー紛いのぼくの尾行劇はまだ続くのであった。
~後編へ~