少女だった。
クリスマスイブの日に、懐メロの好きな妹がH2Oの「想い出がいっぱい」を聞いていて、フト、高校時代の合唱コンクールを思い出した。
当時一年生、二年生のクラスがそれを歌っていて、「君はまだシンデレラさ」の度に女生徒らがセーラー服のスカートを両手でちょいと摘み上げ、膝を曲げて小首を傾げ、ドレスのようにお辞儀をする。
その姿がなんとも可憐で、思春期と青春の大人になりきれない儚さが藍色のスカートのふわりに軽やかに讃えられているようで、
女声パートを支える男声パートの背伸び感が相まって、あれはあれで素晴らしく完成していた。
後にも先にもあれ以上の「想い出がいっぱい」は聞いたことがない。
襟巻きに肩をすくめてあの一節を思い出すだけで目頭が熱くなってくる。
「大人の階段のぼる、君はまだ、シンデレラ、さ」
「君はまだ、シンデレラ、さ」
まだSNSのなかった時代。
いくら検索してもあの「想い出」は見つからない。
あの眩しい感慨はこの世のどこにも残っていない。