「あなたはあなたのままでいい」上司に勇気づけられた言葉。
会社に入社して4年目。ようやく私に「後輩」ができるみたいだ。
新入社員が沢山入社する会社であれば、早ければ入社2年目で先輩になる。
私は随分ぬくぬくと下っ端をやっていた。
一番下の立場は、雑務はあれど楽なものだと思う。
自分の仕事だけきっちり取り組めれば評価されるし、仕事を自分でコントロールできるようになれば成果も上がり達成感も得やすい。
困ったことがあれば上司や先輩に相談し、私の仕事が円滑に進むようサポートしてもらえる。
同僚の仕事を手伝うことはあっても、仕事の進み具合を確認したり指導することはない。
とにかく私は私のペースで仕事をするだけでよかった。
配属される直前になって、私が指導係になることを知る。
聞いたときは、まあそうだよな、としか思わなかったのだけれど、
仕事が終わって帰宅してから、この先への不安がゴゴゴと押し寄せてきた。
「私なんかが、誰かを育てることなんてできるのだろうか。」
現在私の部署は、これまでにないくらいの忙しさが続いている。
私も周りも、毎日仕事を片付けるのにてんやわんやしていて、
とても新入社員を受け入れられる状況ではない。
それに、私はフレンドリーに人と接することが苦手だった。
「最近のZ世代は、上司や先輩とフラットな関係を望む。」という内容の記事をネットで読んだけれど、それってどういう関係なんだろう。
確かに友達みたいに話しかけてくる先輩は、後輩からも好かれている。
すごいなあ、私はあんな風に距離を詰められないかもしれない。
もしうまく仕事を教えられなかったらどうしよう。
良い関係を築けなかったらどうしよう。
後輩が職場に馴染めず辞めてしまったら……?
沢山の「どうしよう」で頭の中がいっぱいになってしまったその夜は、
なかなか寝付けず、いつもより一時間早く目が覚めてしまった。
次の日、部署のメンバーと打ち合わせをして、私は不安な気持ちを正直に話してみた。そしたら、上司がこんなことを言ってくれた。
「あなたはあなたのままでいいよ。」
そう、私は無意識に人と比べてしまっていた。
「フレンドリーで優しくて、仕事ができるいい先輩。」
そんな人になれたら理想だけれど、人はいくつもの失敗と経験を積んで成長していくもの。
私は私の良さがあるから、誰かの真似をする必要はない。
私のやり方で、後輩を受け入れよう。
そう思わせてくれた上司の言葉。
不安でいっぱいの未来へ、ちょっとだけ前を向かせてくれた。