調子が悪くなると思考が優位になる(末期ガンをサーフする(21))

10月4日、金曜日。午前10時。
21回めの放射線治療のために東京都立多摩総合医療センターに行く。

たまらん坂で調子をはかる。
完調を10とすると4くらいか、あまり調子はよくない。
照射治療のあと、担当医の診察を受ける。
順調に進んでいるとのこと。
治療がどの程度うまくいったかの評価は、終了後1か月くらいしないとわからないらしい。

ともあれ、現時点ではガン部位は確実に縮小している感じがあるし、痛みもすくない。
食事のつかえもほとんどなく、食道の炎症も気になるほどではない。
体調があがったりさがったりはあるけれど、日常生活はガンが見つかる前と大きく変わることなくおこなえている。
とくに私にとって大切なのは、ものを書いたりピアノを弾いたり、人と会ったり、講座やワークショップでともに学んだり伝えたりすること。

楽しみとして編物や料理をしたり、サーフィンをしたり、といったこともできている。
武術の稽古がこれまでと同様、思うようにはできにくくなっていることが、唯一の気がかりだ。

私はここ7年くらい、韓氏意拳という武術に取りくんできたのだが、夜の講習会は体調が落ちていて参加がむずかしいことが増えてきた。

武術の稽古にかぎらず、この先どうなるのだろうと思うことがいくつかある。
料理も食欲があるときにはできているが、食欲がまったくないときにはそれどころではない。
食べものの嗜好も変化してきたし、食べられないものも出てきた。
20代のはじめにバーテンダーのアルバイトをしていたくらい親しんでいたお酒も、まったく飲めなくなってしまった。
飲みたくないわけではなく、飲めない。

そんなふうに、ついこの先のことをかんがえてしまう。
放射線治療が今月中には終わる。
ガンがどのくらい縮小するのかわからないが、完治するのはそもそも難しいと医師からはいわれている。
完治しないガンはその後どうなるのか?
ふたたび肥大化していくのか。
放射線治療は1度受けるとしばらくは受けることができない。

放射線の副作用のひとつとして、別のガンがあらたに生まれる可能性もある。
転移している部位のガンはどうなるだろう。

これらのことはすべて私の「思考」だ。
私たちは言語を持ち、記憶や想像力があり、また文字を持つことで記録もできる。
これらが自分の世界観を規定している。

私たちの言語には現在、過去、未来という概念があり、それにとらわれている。
そこから苦しみや執着が生まれる。
みずから生みだしている苦しみや執着を手放すことはできないだろうか。

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