食べられるものを食べられるときに食べて体調維持(末期ガンをサーフする(27))
10月15日、火曜日。午前10時。
27回めの放射線治療のために東京都立多摩総合医療センターに行く。
今週が照射治療の最終週となる。
体育の日がはさまって三連休だったので、すこし間があいた。
その間に、各地に大きな被害をもたらした巨大台風十九号が来襲したりしたが、私の住んでいる国立市はほとんど被害がなく、私自身もゆっくり身体を休めることができた。
ガン治療のうち、抗ガン剤は点滴による投薬治療で、ガン組織をピンポイントで攻撃することはむずかしく、ガンではない正常組織も相当なダメージを受ける。
私はこちらを選択しなかった(すべての人におすすめするものではない)。
一方、放射線治療はガン部位を集中的に高エネルギーの放射線(X線)で攻撃する。
とはいえ、ガン部位のまわりにも正常組織があって、まったくそれを避けて照射することは不可能だ。
私の場合、食道ガンなので、ガン部位のまわりにある肺や心臓、脊椎、胃、横隔膜などにも影響がある。
遠隔転移があるので、そちらまで照射範囲が広がっており、そのために小腸、肝臓、腎臓、膵臓といったさまざまな内臓や膜組織にも影響がある。
放射線を照射することによって、ようするに悪性細胞を「焼く」わけだが、正常細胞も巻きぞえを食う。
当然、予測できない体調の不調に見舞われる。
私も起きていられないくらいの倦怠感や食欲不振、嘔吐感、胸焼け感に見舞われた(現在もつづいている)。
もっとも、幸いなことに、横になる時間は増えたとはいえ、ずっと調子が悪いわけではなく、日常生活や活動には大きな支障はない。
こうやってものを書いたり、人に会ったり、講座を開催したり、ピアノを弾いたりすることは、以前とそう変わりなくやれる。
以前と変わったことといえば、朝から日中にかけては比較的元気なのだが、夕方から夜になると顕著に体力が落ちてきて、以前のようには活動できなくなる。
ネットで映画を観たり、音楽を聴いたりする分には支障はないが、生産的な活動はまったくできないし、人に会ったり、出かけたり、運動したりといったことはまったくできない。
*
この「末期ガンをサーフする」を最初のほうにさかのぼって読みかえしていたら、いまと大きく違うことがあって、びっくりした。
それは、日に三回以上かならず飲んでいた痛み止めの薬を、いまはまったく必要としなくなったということだ。
市販薬でもあるロキソニンがよく効いて助かっていたのだが、毎日二〜三回はかならず飲んでいた。
胸や胃のあたりに疼痛があり、食事はもちろん、なにかするにもその痛みのせいで集中がむずかしくなるからだ。
気がついたらいまは痛み止めを飲んでいない。
照射治療によって痛みを生むガン部位が縮小したのだろうか。
そうであったらありがたい。
食事のときの食べ物のつかえ感もほとんどなくなってきた。
そのかわり、粘膜が痛んでいるのだろうか(ただれたようになると医者にはいわれていた)飲みこむときにヒリヒリする強い痛みが出ることがある。
しかしこれは常時ある痛みではないので、痛み止めは必要ない。
食事関係でいえば、アルコール類はまったく飲めなくなった。
飲みたくても飲めない、という感じだ。
そもそも飲みたくなくなっている、というのもある。
それは、あれほど毎日何杯も飲んでいたコーヒーについてもいえる。
いまはもっぱら、普通のお茶や紅茶を飲んでいる。
食欲がないので、たとえ人からこれが身体にいい、病気にきく、といろいろすすめられても、そもそも飲める・食べられるかどうかが問題だ。
油断するとどんどん体重が減ってしまうので、とにかく食べられるもの、食べたいものを、食べられるときにどんどん食べておくという戦略になる。
アイスクリームとかゼリーとか、ケーキとか和菓子とか、あるいはこんなに食欲不振なのに不思議なのだが油物・揚げ物が全然平気なので、そういうものを食べる。
またこれも不思議なことに、運動(といっても歩く程度だが)のあとや寝る前にプロテインを飲んでおくと、疲れがたまらないような気がする。
かなりてきめんに効くように思う。
たしかに医者からは、高たんぱく高カロリー食をつとめてとるようにといわれている。
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