治療を「がんばる」の意味、変わる医療現場(末期ガンをサーフする(4))
よく、ガン治療がはじまる人に、
「治療、がんばってね」
と声をかける人がいる。
そのたびに、ちょっと(かなり?)あまのじゃくな私は、
「なにをがんばれっちゅうんじゃ」
と思っていた。
がんばれといわれても、ただ薬を打たれて寝ているだけじゃないか。
あるいは短時間の放射線照射を受けに行くだけじゃないか。
実際に自分が放射線治療を受けはじめてみると、がんばるという意味がだんだんわかってきた。
抗がん剤治療もそうだろうが、放射線治療も副作用がある。
幹部が一時的に荒れて痛みが強くなったり、身体がだるくなって倦怠感が強まったりする。
とくに後者は面倒で、生活ができないというほどではないけれど、だるくてなんにたいしてもやる気が出なくなる。
集中力がおとろえる。
私もその症状が出ていて、体力を維持するために運動したいと思っても、なかなか身体が動かない。
一大決心して身体を起こしても、すぐにだるくなってへたってしまう。
身体にいい食事を用意したくても、台所に立つ元気がない。
ゴミ出しは面倒だし、掃除はとどこおる。
なにごとも「がんばらなければ」できないのだ。
この文章だって相当がんばって書いている。
治療をつづけることそのものがとてもおっくうに感じる。
9月5日、木曜日。午後2時。
今日は4回めの放射線治療のために多摩総合医療センターへ行ってきた。
これまでと同様、放射線の照射を受けたあと、担当医の診察があるというので、しばらく待って診察室に通された。
調子をたずねられ、いろいろな質問に答えてもらった。
私が訊いたのは、治療が進むにつれてどんな副作用が出てくるのか、ということだった。
いまあらわれている倦怠感は、やはり放射線治療によるものだろうということだった。
あと、痛みがわずかずつ強まっているような気がしているが、これは今後さらに強まるのか、とか。
まだ治療の初期なので、急激に痛みが強まったり、幹部の腫れがひどくなったりすることは少ないとのこと。
むしろ治療が進むにつれ、ガン部位は小さくなっていくはずだが、それにともなって粘膜が荒れることはあるので、そのための痛みがでることはあるそうだ。
痛みに対処するのは、そのつど症状を見ながらやっていきましょう、といわれた。
現在、痛み止めを日に3回のペースで飲むように処方されているのだが、そのペースが追いつかなくなることがありそうだ。
それは観察しながら対処していくことになった。
とりあえずはいまのままで。
ただ、食事に支障が出たり、食欲が落ちたりするのは、たいてい痛みどめの効き目が薄れたときに起こるので、食事前の適当にタイミングで痛み止めを飲んでおくことをすすめられた。
食事前でも気にせず飲んでください、といわれた。
それとは別に、漢方薬を一度ためしてみましょうと、倦怠感や食欲不振に効く(人もいる)薬を処方してもらった。
担当医は30歳くらい(に見える)の若い人だが、こちらの話をよく聞いてくれるし、押しつけがましいところは一切なく、またどんな問いにもわからないことはわからないと誠実に答えてくれるので、信頼できる。
今回の治療でこのような誠実で権威的ではない医師に多く接することができているのは、とてもありがたいことだ。
医療の現場も昔のイメージとはずいぶん違ってきているし、場合によってはほんの数年前とは全然変わってしまうようなこともあって、医療技術だけでなく患者対応などのコミュニケーションにおいてもまさに日進月歩なのだろうと思う。
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