失敗してしかられた記憶が能力をさらに奪う

共感カフェでかなりの頻度で持ちだされる悩みがあります。

職場で失敗したときに上司から責められることが多く、上司からは「できないやつ」というレッテルを貼られているような気がして、自分に対する態度だけが厳しいように感じてつらい、というものです。

こういう状況におちいっているとき、こちら側に起こっていることがいくつかあって、それをまず客観的に理解しておくことは、自分が落ち着くことの役に立ちます。

まず、なにか失敗して上司や同僚から叱責される経験があると、そのときの感情が自分の身体にしみついてなかなかそこから離れられなくなる、ということがあります。
しかられたときに「こわい」と感じた、「情けない」と自分を責めた、「悲しくなった」「寂しくなった」など、いくつかの感情の記憶が、あなたのなかに相手にたいする一定のイメージを作りあげてしまいます。
つまり、その感情から来る相手へのイメージです。

「こわい人」「冷たい人」「自分を大事にしてくれない人」「つながりを感じられない人」「敵対的な人」といったイメージが、あなたのなかで作りあげられます。
これを「エネミーイメージ」といいます。
いったんだれかにたいしてエネミーイメージを持ってしまうと、その人と自分のあいだで「いまこの瞬間」起こっていることに目を向けにくくなります。
固定化されたフィルターを通して起こっていることを受け取ってしまいます。

これが何度か繰り返されると、エネミーイメージは強固なものになり、その人を見るたびに特定の感情が呼びおこされます。
相手があなたを責めようとか、非難しようとしていないのに、相手が近づいてくるだけであなたの身体は防御のためにこわばってしまいます。

そのような状態では相手のいうことも冷静に聞くことができないし、本来の能力を発揮することもできません。
相手もあなたがそのような感情を持っていることを、意識的にせよ無意識的にせよ、おそらく受け取っていることでしょう。
相手のなかにも警戒心が起こってしまいます。
このような関係性のなかでものごとがうまくいくことはなかなかありません。

自分の失敗を責められたり、しかられたりすると、こちらはつい、
「もっとやさしくいってくれればいいのに」
「ほかにいいようはないの?」
「失敗したくて失敗したんじゃないのに。なぜ失敗したのか、ほんとはどうしたかったのか、まず聞いてくれればいいのに」
と、無言の非難のことばが相手にむかいます。
直接ことばを相手に伝えなくても、その態度は相手にも伝わります。

この不幸な関係性から抜けだすには、まずあなたが強固につかんで離さないエネミーイメージを、まずは手放すことです。
つまり、相手にもかならず切実なニーズがあるのだ、ということを思いだすのです。

相手のニーズを推測すること、すなわち相手に共感することが、エネミーイメージを手放すためのもっとも近道です。
そして強力な方法でもあります。

でも、その前にひとつ、やっておくことがあることを忘れてはいけません。
それは自分自身に共感しておくことです。

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