OS(オペレーティングシステム)としての共感的コミュニケーション

標題のことばは私のまわりでよく聞く文言で、私もそれにはとてもしっくりくる。

私たちは社会的動物なので、人と関わって生きていく必要がある。
また、人間という動物の特性で、自分のなかに「他者性」を持っている。
自分を取り巻く「他者」と自分のなかにある「他者性」、そのいずれともうまく付き合っていけないと、けっこうつらいことになる。

それら他者たちと付き合う方法やかんがえかたはさまざまあるが、これは自分の時間——人生をどのように生きていくかという、基本的なオペレーティングシステムといっていい。
コンピューター用語だが「OS」と略されることが多い。

私がいまこれを入力しているのはコンピューターはラップトップのMacBookだが、これには「MacOS High Sierra」というオペレーティングシステムが動いている。
Windowsマシンを使っている人なら「Windows10」などが動いていることだろう。
また、スマートフォンのiPhoneやiPadなら「iOS」が、アンドロイド端末なら「アンドロイドOS」が動いている。
これらを基本ソフトということもある。
各アプリケーションはこの基本OSの上で動いている。

インターネットを閲覧するためのブラウザソフト、文章を入力するためのテキストエディタやWORD、表計算ソフト、メールソフト、写真を整理したり動画を編集したりするソフト、そういった便利なアプリケーションはすべて基本OSの機能を利用して動いている。

私たちがだれかと会話したり、仕事したり、表現したりするとき、そしてそれらの行為をアプリケーションを実行しているとかんがえたとき、基本OSはなにが動いているだろうか。

私はこの10年くらい、さまざまなことをするときに基本OSとして自分のなかに共感的コミュニケーション(NVC)を走らせておくことが多い。
もちろん、基本OSにはさまざまな種類があって、そのつど、自主的に選択することができる。

共感的コミュニケーションはNVC(=Nonviolent Communication/非暴力コミュニケーション)ともいうけれど、逆に暴力コミュニケーションをOSとして走らせておくこともできる。
あるいは哲学的なかんがえかた——実存主義だったり、構造主義だったり——を自分のOSとして走らせている人もいるだろう。
心理学的なかんがえかた——アドラー心理学だったりカール・ロジャースだったり——を基本OSにしている人もいるだろう。

さまざまなスピリチュアルなものや、宗教的なものをよりどころ——つまりそれが基本OS——にしている人もいる。

選択肢はさまざまだ。
さまざまだが、私自身は表現活動をおこなったり、自分を知ったり、だれかとつながるときに、基本OSとして共感的コミュニケーションを採用すると、いろいろなことがうまくいくことが多いと感じていて、採用頻度が多くなっている。

基本OS上で動くアプリケーションにあてはまるのは、私たちの日々の行為だ。
だれかと会話したり、仕事したり、表現したり、通勤したり旅をしたり、買い物に行ったり、といった個々の行為。
これらの行為をおこなう(アプリケーションを動かすにあたって)、そのときどんなOSが基本ソフトとして走っているかによって、アプリケーションの挙動や結果が変わる。

たとえばだれかと会話するとき、基本OSに暴力的コミュニケーションを採用しているのと、共感的コミュニケーションを採用しているのとでは、まるでちがったことが起こる。
子どもと接するとき、教育的保護者OSを採用しているのと共感的コミュニケーションを採用しているのとでは、まったくちがったことが起こる。

なにかをおこなうにあたって、どんな基本OSを採用するかということがどれほど重要であるか、よくわかる。

問題がひとつある。
コンピューターとちがって、私たちはヒトという生命体だということだ。
つまり、ハードウェアが生身であり、それはつねに変化しつづけているということだ。

コンピューターのハードウェアは機械であり、そうそう変化しない。
しかし、人間のハードウェアである身体は一瞬一瞬変化しつづけ、流動的だ。
身体はその状況や時間、環境によってさまざまに変化する。
基本OSもその変化に応じられる柔軟なものでなければならないし、また基本OSが変化に柔軟に対応できるようなインターフェースをみがいておく必要もある。

コンピューターにもこの部分がある。
I/O(Input/Output)と呼ばれる部分だ。
いくらOSが優秀でも、アプリケーションの機能がすばらしくても、またハードウェア性能がハイスペックでも、I/Oが適切に働いていなければコンピューターは性能を発揮できない。
人間も共感的コミュニケーションをすばらしく学んでいて知識や経験が豊富であったしても、自分自身の刻一刻の変化を適切に観察し応じることができなければ、うまく働かないだろう。

共感的コミュニケーションを学ぶにあたっては、その方法やめざすところを知ると同時に、自分自身のこともしっかりと観察する練習が必要だ。
その方法には、マインドフルネス瞑想や呼吸法、ヨガなどボディワーク、武術を利用する方法など、さまざまあるが、もっとも簡便でだれもが気軽にそして効果的に用いる方法として私が提供しているのは、音読療法というものだ。

6月30日:ボイスセラピー講座@国立
呼吸や声を使って自分自身や身近の人を癒し活力を養うボイスセラピーの概要を学び、身につけるための講座です。この講座の受講修了が音読トレーナーの資格取得講座の受講要件となります。6月30日(土)14時からJR国立駅徒歩5分の会場にて開催。

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