書籍に関わる全ての人々へ
今年に入ってから立て続けに二件の書店脅迫事件が起きた。
どちらも書籍の発売を巡っての脅迫だった。
「ネトゲ戦記」暇空茜(ひまそらあかね)著
「トランスジェンダーになりたい少女たち」アビゲイル・シュライアー著
どちらの場合も、放火して書店へ訪れたお客を無差別に殺すというおぞましい内容で、しかも脅迫があったことを公にするなという指示まであったという。
もともと敵の多いことでも知られる暇空氏の「ネトゲ戦記」はさもありなんという感じだったが、シュライアー氏の「トランスジェンダーになりたい少女たち」にまで同様の脅迫があったことには違和感があった。
確かに、原著も出版後に物議をかもしたし、内容への抗議で色々な悶着もあったいわくつきだ。
しかし、欧米ほどのLGBTムーブメントがあるとはいえない日本で、このように執拗で強烈な攻撃がなされるものだろうか?
執拗というのは、日本での出版の経緯のことだ。
まず、カドカワから出版される予定だったこの本は「タイトルや宣伝文が当事者を傷つけた」とするキャンセルカルチャーによって出版中止に追い込まれた。
しかし、それで浮いた出版権を獲得した産経新聞出版が再度出版を告知すると、前述の通り無差別放火殺人予告という脅迫が行われるに至った。
それはまるで、今度こそ絶対に出版を止めさせるという意志があるかのように感じられた。
本書は今でも書店によって非常にデリケートな取り扱いとなっているという。
事件が起きた当初は「ネトゲ戦記」から始まったこの一連の事件を繋げて考えていなかったが、両方の書籍を読んでみて、ある共通点に気づいた。
「ネトゲ戦記」の暇空茜氏は東京都の福祉事業の公金不正問題で住民訴訟で追及している人物だ。(小池百合子氏が彼の裁判の相手であった)
そして「トランスジェンダーになりたい少女たち」はLGBTの問題を扱った本という印象とは裏腹に、実は「新しい福祉利権」についてのドキュメンタリーだった。
簡単に内容を紹介するとこうだ。
近年どうしてか、トランスジェンダーをカミングアウトする少女が急増している。男子の増加率はさほどでもないのに、だ。
著者のシュライアー氏の出発点はそんな素朴な疑問であり、それはどうしてかを探っていく。
結果、見えて来たのは以下のような仕組みだったという。
・反LGBT差別やLGBT理解促進の法律
・保育時からのLGBT教育
・LGBT系インフルエンサーのSNSコンテンツ
・教育現場が生徒のプライバシーを尊重し、この問題について親を介入させなくしている
・患者の主張するままに性自認を肯定するセラピーが主流化
・思春期ブロッカーやホルモン投与など薬物の使用の安直化
・陰茎や乳房除去手術を安易に施術する医師たち
親と子供を引き離し、思春期の子供を孤立させる段階と、
孤立した子供が親の助言もないままに薬物や身体改造に陥っていく段階。
結果として、製薬会社や性自認を診断するセラピスト、そして性的な外科手術を施す医師たちなど関連産業にお金が落ちるようになっているが、政治的な利権となっている上に、疑義を呈した者は「トランスフォビア」と呼ばれ――つまりレイシスト扱いされて失職を余儀なくされるという。
原著のタイトルは「Irreversible Damage」(イリーバシブル・ダメージ)。
取り返しのつかないダメージという意味だ。
この利権構造のサイクルでは、少女が主に搾取される。
女の子の二次性徴期の不安定な心の内を思えば、それも無理からぬものと思えるが、このサイクルにはまると、最終的には性的器官の切除や機能喪失など、身体に取り返しのつかないダメージを受けることになる。
それは社会に対しても取り返しのつかないダメージなのではないか、と、そんな感想を持った。
トランス差別を助長するというよりは、現代に新しく生まれた利権構造を解説している本のように感じられた。
幸いなことに、日本はまだこのような事態には陥っていないが、いずれそうなっていくのではないかと思うと、とても不安だ。
何故かというと、冒頭で述べた通り、今年に入って立て続けに起きた焚書事件は、ターゲットが「この利権にとって非情に都合が悪い存在」という共通点があるからだ。
本を燃やす者は、やがて人をも燃やす。
多様性の尊重を装った、おぞましいシステムが今、日本に引きこまれようとしているのではないか。そんな予感がしてならない。
異常なありさまの都知事選の情景を眺めていて、ふと、そんなことを想った。
脅迫を受けた「ネトゲ戦記」の著者、暇空茜氏は現在、都知事選に出馬し、戦っている。
対立者たちからさまざまな誹謗中傷を受け、陰謀論者のイメージにされてしまっている彼だが、もし、これまでそんな印象のせいでなんとなく彼を避けていたという方ならば、選挙公約の動画だけでも見てはいかがだろうか(彼は殺害予告まで受けているので政見放送に出席できない)
今回の都知事選は安易な判断をすると取り返しのつかないダメージを日本にもたらすだろう。特に、子を持つ親はくれぐれも慎重にするべきだ。
追記:
なお、僕は男女平等論者だし、トランスフォビアでもない。
バイト先でトランスジェンダーの子と一緒に働いた経験もある。
「カミングアウトして良かった」と言った「彼」の晴れやかな笑顔は今でも憶えている。
また、これは陰謀論のつもりもない。
オレオレ詐欺の手口をあらかじめ知っておけば、引っかかる確率は下がるよねという程度の話だ。
「政治家やマスコミ、インフルエンサーの綺麗ごと・もっともらしい話にご注意を!」なんてポスターはどこにも貼ってないのだから。
そういう意味ではこの記事の内容だって軽々しく信用してはいけない。
よくよく考えた上で、自分の選択の責任をとる覚悟で臨む。結局はそういうことだ。