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インクを楽しむ太字万年筆

少し前の記事でゆらぎ系インクの紹介をしました。
(思ったよりもたくさんの方に読んでいただき嬉しいです、ありがとうございます!)

そちらの記事にも少し書いたのですが、ゆらぎ系インクはとても魅力的な一方、万年筆に入れるとインクが出にくかったり発色がわかりづらかったりすることもあり、ガラスペンやつけペンで楽しんでいる方が多い印象です。
とはいえ持ち歩きのしやすさなどを考えると、万年筆でもっと色んなインクを楽しみたい!という方もいると思います。(私がそうです)

ということで、万年筆もインクも大好きな方向けに、よりインクを楽しめる万年筆をいくつか紹介させてください。
すべて鉄ペンなので、気軽に試してもらえたら嬉しいです。


プレピー 05(中字)

中字(M)以上の太さのペン先はインクを楽しむにはもってこいですが、国産エントリー万年筆は中字でもあまり太くなかったり、そもそも中字以上がラインナップされていなかったりもします。
そんな中でも、しっかり太い上に最強プチプラ価格で手に入る中字万年筆がプレピー。
プレピー、特に中字にあたる05は他の国産万年筆と比べて字幅が太めで、だくだくにインクが出ます。
薄い色のインクも見えやすく、濃淡がしっかり楽しめる字幅です。

プレピー05で書いてみた写真
(インク:文具のしんぷく 快速なのはな)
ちょっとインクが淡すぎましたが、濃淡と太さが出ます

手帳などの小さい字を書く用途には不向きですが、
インクをたっぷり使って書きたい!
インクの濃淡やゆらぎ・フラッシュを眺めたい!
薄い色のインクをもっと活用したい!
などなどの期待に応えてくれる万年筆。

プレピー05のペン先

ちなみにプレピーは公式にはコンバーター非対応。
プラチナのコンバーターは差せるのですが、普通にコンバーターでインクを吸い取ると、ニブの根元部分の空間にインクが溜まって溢れそうになります。
(溜まったインクをティッシュ等で吸い取れば問題なく使えますが、それなりにインクが無駄になりますし手間です)
プレピーで色んなインクを楽しむなら、コンバーターか空きカートリッジにスポイトやシリンジでインクを入れて使うのが簡単だと思います。

このあと紹介する2本と比べると少し控えめな太さではありますが、

  • とにかく安価

  • 取り扱い店舗が多く、手に入りやすい

  • 気密性が高く、淡色インクでも煮詰まりづらい

というのがプレピーの良さ。
ちょっとインク増えてきたな、太めのペン先も触ってみたいな、という方に気軽に試してみてほしい万年筆です。




セーラー ふでdeまんねん

ふでdeまんねんのペン先

名前のインパクトが強すぎるこちらは、インク沼の住人が少なからずお世話になるセーラーから生み出された特殊ペン先。
写真を見てわかる通り、ペン先が外側に大きく曲がったような形状で、この曲がった部分を紙に付けて書くことで、普通の万年筆ではできない「面で書く」ことができるのです。

ふでdeまんねんで書いた線
(インク:sailor manyo nekoyanagi)

練習すれば筆文字のような強弱のある線が書けるようですが、普通の万年筆では書けない太線が引けるというだけでもインクを楽しむには十分。
ペン先を立てたり裏返したりして先端だけを紙に当てれば細い線も書ける(ただしかなりカリカリ感があるので普段使いには向かない)というのもポイントで、1本でマルチに使える特殊ペン先です。

公式サイトに載っているふでdeまんねんはデザインが好きじゃないな……という方もご安心ください。
プロフィットJrにふでdeまんねんのペン先を搭載したモデルが多数発売されています。
首都圏にお住まいの方なら、手に入れやすいのはancora銀座本店の「ancora my万年筆」。
カラフルなパーツを組み合わせてカスタマイズ万年筆が作れるのですが、少し前からふでdeまんねんのペン先も選べるようになっています!
それから、私が持っているのは福島の文房具店「Pentonote」さんのオリジナルモデル。
こちらはペン軸が透明でインクがよく映える、インク好きにはたまらないデザインです。

上:Pentonote ふでdeまんねん
下:ancora my万年筆
(これは通常ペン先ですが、ふでまんペン先が選べます)

セーラーのオンラインショップでも、様々なふでdeまんねんペン先のモデルが販売されています。
ちなみにセーラーのつけペン「hocoro」にも筆文字ペン先があり、形状はふでdeまんねんと同じなので、つけペンに興味のある方はそちらもおすすめ。
ぜひお気に入りのデザインの筆文字ペン先を探してみてください。




TWSBI STUB

「スタブ」というペン先自体はTWSBIの専売特許ではないのですが、今回は私の手元にあるTWSBI ECO-Tのスタブを紹介します。

TWSBI ECO-T STUB1.1mmのペン先

スタブペン先は先端が平らになった板のような形状が特徴で、「縦線は太く、横線は細い」という独特の線が引けます。
平らな部分をうまく紙に当てて書く必要があるので少しだけ慣れが必要ですが、慣れてしまえばたっぷりのインクフローで気持ちよく書けるペン先です。
縦線でインクの色を楽しみつつ、横線が細いおかげで画数の多い漢字などもつぶれにくく、意外と普段使いしやすい、というのもおすすめポイント。

TWSBI STUBで書いてみた写真
(インク:セーラー ゆらめくink 極光)

淡色・濃色問わずどんな色でもフォントのような味のある文字が書けるので、スタブの魅力にはまって何本も揃える方も見かけます。
また、TWSBIは洗浄しやすいので、スタブニブ+ラメインクの組み合わせで使っている方もいるようです。(万年筆にラメインクは自己責任ですが!)
TWSBIはエントリーモデルのGOからECO、SWIPE、VACなどの様々なモデルがありますが、ほとんどのモデルにスタブやM・Bなどの太め字幅があります。
さらに、TWSBI ECOやDIAMOND・VACシリーズなどは本体吸入式&透明軸でインクがよく映え、眺めているだけでも楽しいので、インク好きな方にはぜひ使ってみてほしい万年筆です。



番外編:カリグラフィー、ミュージック

上記のスタブですが、「カリグラフィー用のペン先とは違うの?」と思った方もいるかもしれません。
カリグラフィー、という名前のペン先はパイロットやセーラー・LAMYなど、多数のメーカーから発売されています。
こちらも板のような平らなペン先で、縦横で太さの違う線が書ける、というスタブとよく似たペン先。
さらにもうひとつ似たもので、「ミュージック」という特殊ペン先も存在します。
名前の通り楽譜を書く用途で生まれたそうで、こちらも同じく太い縦線と細い横線が書けるペン先。

私はカリグラフィーニブやミュージックニブの万年筆を持っていないため、調べた限りの情報ですが、
スタブとの違いとしては

  • カリグラフィーニブは書きたい線の幅によって使い分けられるよう、字幅の種類が豊富

  • カリグラフィー>ミュージック>スタブ の順で縦横の線の強弱が大きい

  • スタブは角に丸みがあり、他の2つよりも強弱が控えめな代わりに、紙に当てる角度が少しずれてもインクが出やすく、練習不要で使える

といったところ。
普段使いの範囲内で楽しむならスタブ、もっと線の強弱をつけたい方やカリグラフィーを本格的に練習したい方は他の2つが使いやすいのかなと思います。
例えばカリグラフィーニブの万年筆なら、手に入りやすいのはパイロットのプレラあたりでしょうか。
今後カリグラフィーやミュージックのペンを手に取ることがあれば、追記したいと思います。



おわりに

細字万年筆(キャップレスデシモF)と
今回紹介した太め万年筆たちを書き比べてみました

太めペン先や特殊ペン先の万年筆は、書き心地や使い勝手に少し癖があるものも多いです。
そのため最初に買う万年筆としてはおすすめしづらいのですが、2本目・3本目として購入すると、万年筆やインクの楽しみ方の幅がぐっと広がります。
(そして用途が増えるとほしいインクが増え、増えたインクを使いたくて万年筆も増え、その万年筆に入れたいインクが増え……というループが沼の深さであり楽しさ)
ぜひ色々なペン先で、インクと万年筆をもっともっと楽しんでみてください!
読んでいただきありがとうございました。

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