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重めの万年筆を紹介したい

少し重いペンが好きです。
そして少なくない数の仲間がいると思っています。
筆圧が強くて疲れてしまう、
筆圧が弱くてペン先がコントロールしづらい、
そんな方に、力を入れなくてもペンの重みとインクの流れでスルスル書ける、重めの万年筆を試してみてほしいのです。(ちなみに私は筆圧よわよわです)

重め、といっても基準は人それぞれだと思います。
今回はひとまず「手持ちのお気に入り万年筆の中で、20g〜30g台のもの」を紹介します。
記載する重さは私の手元にあるペン(キャップ付きの状態)を実際に量った数字で、メーカーが出している数字とは異なるかも。
ちなみに参考として軽めの万年筆も量ってみると、
ライティブ:14g
プレピー:15g
サファリ:17g
でした。


おすすめの重め万年筆(4本)


PENBBS 456

PENBBS 456
PENBBS 456のペン先

いきなり何?どこのメーカー?と思われたかもしれませんが、中国の万年筆ブランドです。
万年筆愛好家が集まる掲示板をきっかけに生まれたとのことで、愛好家ゆえのこだわりが詰まったたくさんのモデルがあります。
そしてこちらの456は、鉄ペンでは出会いづらいプランジャー式!(本体に直接インクを吸入できる機構のひとつで、吸入時の見た目の楽しさやインク容量の多さが魅力。洗浄しづらいのが難点)
重さを量ってみると30gでした。
だいぶインクが減った状態なので、満タンだともう少し重くなりそう。

PENBBS456 F×色彩雫月夜 で書いた文字。
kakunoのMくらいに近い太さ。

私が持っているものはペン先Fで、国産のMと同じくらいの字幅。
ニブが硬めで「紙に当たってる感」が強めなのは好みが分かれそうですが、軸の重みとニブの硬さが絶妙にかみ合って、筆圧いらずでスルスル書けます。
ペン先の滑りもばっちりです。
インク容量が多いこともあり、たくさん書きたい用途にはぴったりの万年筆だと思います。
一度だけインクが出にくくなって困ったのですが、何度もじゃぶじゃぶ洗ったり、自己責任で少しスリットを広げたりしてるうちに調子が戻りました……。
個体差やインクとの相性もありそうですが、口コミを調べたところ「PENBBSは全体的に少しインクフローが渋め」という話は見かけました。
インクとの相性については、色彩雫月夜は今のところ大丈夫みたい。
手持ちのPENBBS別モデル(480)も色彩雫はスルスル書けるので、やっぱり困ったときは国産インク!

ちなみにPENBBSの万年筆は日本国内からだとAmazonやアリエクなどでも買えますが、価格がまちまちなのでお気をつけください。
私は楽天市場のペンライフさんで、2023年に3000円〜4000円くらいで買いました。
リンクはひとまずEtsyのメーカー公式ストアを貼っておきます。


LAMY aion

LAMY aion
LAMY aionのペン先

ラミーといえばサファリですが、重さで選ぶならこちら!
手持ちのaionは35g。
かなりずっしり感があり、軽めのペンから持ち替えると差がありすぎて笑っちゃうくらいの重さです。
オリーブシルバーの色味は見た目にも金属感と重量感がありますね。

LAMY aion EF×LAMY純正ブラックで書いた文字。
こちらはkakunoのFと同じくらいの太さ。

こちらもかなり硬めのしっかりした書き心地。
EFでもインクフローは抜群です。
個人的には、ぱっと手に取って書くというよりは長時間の勉強など、ゆっくりたくさん書きたいときによく使っている万年筆です。
嵌合式(回さずにぱちっと開け閉めするタイプ)のキャップですが、今のところインクの乾きやすさは感じません。
キャップも重めなのでキャップポストすると少し重心が後ろにずれそうですが、そこはお好みで。
少し本筋とは逸れますが、購入して初めて手元に届いたときはデザインに惚れ惚れしました。
ペン先から軸の末端までが一体化したような曲線美と、それが見た目のためだけではなく握りやすさにも繋がっているというのが素晴らしい。
美術品のように眺めて楽しむよりは手に取って使いこむことを楽しみたくなるようなデザインで、道具として究極に美しい、という印象です。
所有欲という意味でも、個人的には買って後悔のない万年筆。

鉄ペンとしては勇気のいるお値段(2024年時点で定価10000円超え、公式以外の通販でも7000〜8000円ほど)なのと、人によっては重すぎて疲れるくらいのずっしり感なのですが、サファリやアルスターだと軽すぎると思う方には一度試してみてほしい万年筆です。
可能ならぜひ試筆を。


TWSBI ECO

TWSBI ECO
TWSBI ECOのペン先

重すぎるのもちょっと……という方にはこちら。
台湾メーカーTWSBIのエントリーモデルです。(ここ数年の価格改定でそれなりのお値段になってしまいましたが)
こちらは22gと、上2つと比べると「やや重め」くらいですが、その分誰でも使いやすいバランスではないかなと思います。
吸入式(PENBBS456とは異なる方式で、尻軸を回してインクを吸入するタイプ)ということもあり、たっぷり入るインクの重みでより安定して書ける感じがします。

TWSBI ECO F×明石文昭堂 BAYサンライズ で書いた文字。
aionのEFより少しだけ太めくらい。

鉄ペンですが個人的に硬すぎず柔らかすぎず、立て気味で持ってもインクが出やすいです。
銅軸が太めで安定感があるのもポイントで、太軸好きな方にはぜひ使ってみていただきたい万年筆。
私はTWSBI ECOのFと、派生モデルのTWSBI ECO-Tのスタブ(縦線は太く、横線は細く書ける特殊ペン先)を持っていて、スタブはインクフロー抜群、Fは時々かすれる気分屋なので使い込みながら様子見中です。
Fの太さは国産のF〜Mの中間くらいで、太すぎないのもいいところ。
インク容量たっぷりなのでベーシックカラーを入れて普段使いするのもいいし、明るい色のインクが光を反射しながら揺れる様子を眺めるのも楽しい。
明るい色を入れるならペン先はM以上やスタブがよさそうですね。

もうひとつ、TWSBI ECOや上位モデルのTWSBI DIAMONDなどの特徴として「分解洗浄できる」というのが大きなポイントです。
上で挙げたPENBBS456のようなプランジャー式を含め、本体吸入式の万年筆は洗浄しづらく完全に綺麗にするのが難しい、という弱点があるのですが、TWSBI ECOは公式の仕様として尻軸部分を外せるので、ペン先+胴の部分のみでざぶんと水に漬けたり乾かしたりができちゃいます。
インクを毎回変えたい方も使いやすいはず。
(特にスタブニブはインクフローが良いというのもあり、ラメインク用に使っている方も見かけます。万年筆にラメインクは自己責任ですが!)
その他、重さ以外のTWSBIの魅力についてはまた別の機会に。


パイロット キャップレスデシモ

キャップレスデシモ
キャップレスデシモのペン先

ここに来てデシモ!?と思われた方がいたらすみません。
こちらは21gと、重さ自体はここまで紹介してきた中でいちばん控えめ。
そしてそもそもキャップレスシリーズの軽量モデルがデシモなので「重い万年筆」枠に入れるのは微妙なのですが、重心バランスが個人的に最愛なので紹介させてください。
あと、上の万年筆たちはキャップを外すと少しだけ軽くなるはずですが、こちらは名前通りのキャップレスなので、実際の筆記時の重さはそこまで大きく差がないのではないかなと。

キャップレスデシモ F×色彩雫 月夜で書いた文字。
やっぱり前述の海外ペンたちに比べて国産は細字。

私は基本的にキャップポストしません。
後ろに重心が引っ張られるのが苦手なので、だいたいキャップを左手で持って右手で書いています。
Kaweco Collectionやパイロットエリートなどのショート軸万年筆でさえその書き方をするくらい、少しでも低重心で書きたいのです。
それを踏まえてキャップレスは、
・そもそもノック機構の分だけペン先周辺が重め
・ノックするとペン先側にペン芯が押し出される=より低重心に!
という私好みのペン。
そして今回紹介した中で唯一の金ペンで、ノックで出てくる小さなペン先からは想像もつかないほどふわりと柔らかい書き心地です。
指とペン先と紙の境界を意識せず書ける、という表現で伝わるでしょうか。

前述の通りデシモはキャップレスの軽量モデルなので、ペンは重いほど良い!という方には普通のキャップレスのほうがおすすめ。
私は購入時に普通のキャップレスと書き比べて悩みに悩み、持ち運びや軸色等々を考えてデシモを選んだのですが、今のところデシモに満足しすぎているのでキャップレスを買い足す予定はないです。(今のところは!!)
キャップレスデシモ愛はまた別の機会に語りたい。
語らせてください!


おわりに

長々と書いてきましたが、まとめると

  • お手頃価格&変わり種が好き→PENBBS 456

  • とにかく重いほうが好き→LAMY aion

  • 重すぎるのも不安&太め軸が好き→TWSBI ECO

  • 重さ以上に重心にこだわる→キャップレスデシモ

がおすすめかなと思います。
あとはもっと安いものだと、コクーンやプロシオンもよさそうですね。
(持っていない万年筆は語れないので、いつか買ったときに追記か別の記事で書こうと思います。きっといつかは買う。)
趣味全開の記事になりましたが、重め万年筆の魅力が伝われば嬉しいです。
読んでいただきありがとうございました!

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