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パイロット コクーン

2024年10月、今年二度目のパイロット万年筆価格改定がありましたね。
値上げ前に何を買うのか買わないのか、散々迷った末、金ペンは我慢する代わりに、ずっと気になっていたコクーンを滑り込みで購入しました。
そして、期待通りの素晴らしい万年筆でした!
レビューしていきます。


製品情報

コクーンは20代〜30代をターゲットに作られたシリーズで、その名の通り、繭のような曲線的なデザインが特徴。
同じシリーズでボールペンやシャープペンシルも発売されているので、コクーンのデザインがお好みな方はそちらもおすすめです。

2024年10月時点の定価は税込4400円で、国内ブランドの鉄ペンの中では中価格帯。
同じパイロット製の鉄ペンの中でも、より低価格帯ならカクノやライティブ、高価格帯ではカヴァリエやカスタムNSなどが並ぶ中、価格と機能のバランスがとられた中間モデルという印象です。

ちょうど10月から、能登半島地震で被害にあわれた方への支援ができるモデルも発売されています。
取り扱い店舗は限られるようですが、コクーンシリーズの購入を検討されている方はぜひチェックしてみてください。

ちなみにパイロットの海外向けモデルに「メトロポリタン」という万年筆があり、細部のデザインやカラバリ以外はコクーンと同じに見えます。
入手経路は限られますし価格もまちまちですが、コクーンのデザインが好きな方はそちらも要チェックです。


レビュー

購入した日のコクーン

こちらが今回私の元にやってきたコクーン。
色はメタリックグレー、字幅はFです。
買いに行ったお店の在庫はこれ1本のみで、店員さんが申し訳なさそうに出してきてくれたのですが、個人的には色も字幅も元々気になっていたものだったので、とてもラッキーでした。

デザイン

カクノやライティブとは路線の異なるデザインのコクーン

まず目を引くのが軸全体のデザイン。
私の感じた印象ですが、曲線の温かみと金属軸の冷たさが不思議と共存し、ポップすぎず近寄りがたくもない絶妙な表情だと思います。
また、見た目の美しさだけではなく使いやすさにもこだわっているとのことで、曲線の軸やキャップはどこを握っても手に馴染んで持ちやすいです。
さらに、金属軸特有の指先が冷える感触があまりないのも意外でした。塗装のおかげでしょうか。
(冬場にも使ってみて追記しようと思いますが、同じ机の上にLAMY aionと並べて置いておいても明らかに軸が冷えていませんでした。首軸のみ樹脂製なので、書くときの冷えもそこまで心配なさそう)

私はこういう「道具としての美しさを感じる万年筆」がとても好きです。
美術品のような装飾や色鮮やかな万年筆ももちろん大好きですが、見た目と使いやすさが両立したデザインって本当にすごい!と感じます。

ペン先はドット柄

個人的にちょっとだけ惜しいのがペン先の刻印で、これは集合体が苦手な人は使いづらいのではないかなあと。
実はずっと気になっていたのにコクーンを買っていなかった理由のひとつに(もっと好みのニブデザインでコラボモデルとかが出ないかなあ)と思っていた、というのがあります。出なかった。
(前述のメトロポリタンは刻印が異なりますが、軸の中間部分のデザインも異なるため悩ましいです)
使うときはペン先をじっくり眺めることも少ないですし、慣れてしまえば気になりませんが、それはそれとして刻印違いのモデルはぜひ出てほしいな。

書き心地

コクーンで書いた文字
(インク:石丸文行堂 ルビーカシス)

ペン先自体はいつもの(私の大好きな)パイロットの鉄ニブ。
引っ掛かりがない滑らかな書き味や、インクが出すぎることも掠れることもないフローは流石ですが、これ自体はカクノやライティブでも味わえます。
けれど書いた瞬間に
(買ってよかった……!!)
と思ったのは、やはり心地よい重さのおかげだと思います。

コクーンの軸素材は黄銅(真鍮)で、キャップ付きの状態で重さを量ってみると25g。
同じパイロット製のライティブをはじめ、エントリー価格帯(だいたい5000円未満くらい)の万年筆は「軽くて持ちやすい」を売りにしていることが多く、重さもだいたい20g以下くらいの印象です。
それに対して、コクーンの商品ページには「程よい重量感」という記載があり、この点で明確に他製品との差別化がされています。
逆に言うと、筆記具は軽いほうが好み、という方にはコクーンシリーズは不向きですね。

私の愛する重め万年筆たち
(コクーンが仲間入り)

首軸のみ樹脂製なので、低重心と言い切れないのはちょっと惜しいのですが、それでも重心はちょうど中心あたり。
持ったときの安定感が、カクノやライティブとは大きく異なります。
重みのあるペンは筆圧をかけなくてもペン先のコントロールがしやすいので、筆圧が弱めの方や、逆に普段の筆圧が強めでもう少し楽に書きたい、という方には本当におすすめです。
ちょうどいい重みとペン先の安定感、自重でペン先が滑らかに運ばれていく感覚。
5000円以下でここまで気持ちいい書き心地を味わえることが、コクーンの最大の魅力だと思います。

コクーンのペン先ラインナップはFとMのみ。
EFがないのは細字好きな方にはちょっと残念かもしれませんが、スタンダードな字幅展開です。
パイロットの鉄ペンは基本的にニブが同じということで、カクノのEFペン先やプレラのカリグラフィーペン先など、好みのペン先を移植して使っている方もいるようです。
ペン先の改造は自己責任ですが、気になる方は調べてみてください。

惜しいところ

コクーンの惜しいところを挙げるなら、

  • インク容量が控えめ

  • 気密性は普通

という点でしょうか。

CON-40×嵌合式キャップだとインクの減りが早そう

インク容量はコクーンに限った話というよりは、何度か他の記事でも書いている「PILOTのCON-40は全然インクが入らない」という話なので、気になる方はカートリッジで使うのがおすすめ。
気密性については、今のところの私の感触ではカクノとサファリよりは乾きづらいのですが、特に変わった機構のない嵌合式キャップなので、長く放置するのは厳しいと思います。
この2点が特に気になる方は、後発のライティブのほうがおすすめかもしれません。
軽さとインク容量、気密性ならライティブ。
重さと高級感ならコクーン。
どこをどのくらい重視するかによって、選択肢が変わりそうです。
このあたりはそのうち、パイロットのエントリー万年筆の比較を別の記事で書きたいなと思います。


おわりに

コクーン、もっと早く買えばよかった!!
私はとにかく重みとデザインが気に入りました。
持ち歩き万年筆は、コクーンとライティブが今のところツートップです。

コクーンは後発のカクノやライティブと比べると目立たないモデルですし、今回の値上げでまた少し手が届きにくくなったのは残念ですが、ぜひたくさんの人に使ってみてほしいです。
また、この価格帯で重めの国産万年筆はコクーンとプロシオンくらいだと思うので、重めのペンが好きな方には特におすすめ。
ちなみに重めペンの話は以前別の記事でも書いているので、よかったらそちらもどうぞ。

読んでいただきありがとうございました!

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