アリス・ウィズ・ラビットワークス 第0話 おとなり異世界
古来よりその世界はごく身近に存在していた。互いに共存しあい協力しあい、同じ人として付き合いをしていた。
「ここに、ラビティアとクラリティアは国交を結ぶことになりました。」
お互いの国へと向けた全国放送は、国民同士がより親密な未来を見据えて互いに親密度を上げていくキッカケとなっていた……
100年以上もの昔。うさ耳種族の国ラビティアと人種(ひとしゅ)の国クラリティアは、お互いに苦手なものを補い合っていた。クラリティアの方は、都市として発展していて、農業系もしっかりとはしていたものの人口増加によっての労働力不足に嘆いていた。
一方のラビティアは、高度な都市として発展はしていなかったものの、自然に恵まれ作物も豊富で、その質の良さを誇っていた。双方の国で労働力の交流や物資の輸出入と同時に、クラリティア側からの技術提供もありより多く収穫できたり、品質の良い作物が作れるようにもなっていた。
互いの人の流れも多く、クラリティア側への移民や人種との婚姻などのおめでたい話も多くあり、両国の親密度は右肩上がりだった……
しかし、その二つの世界の良好な関係は長くは続かず、疫病の流行をキッカケとして、移民や婚姻によってクラリティア国籍を有したものでも、その高度な環境と汚染に耐えきれずにラビティアへと戻るものもいたが、一部はそれでも残凝っていた。
そして、長い年月を経ることで、ラビティア種は姿を変えていった。姿はより小さく、体に影響が出ないように、それでいてラビティアとしての特徴でもある長い耳は残しつつ、小さい個体が生き残っていった。
そして、人種の住むクラリティアでは、人型のラビティア種を見かけることは無くなっていき、事実上の国交断絶のような状態になっていた。それまで、身近でごく当たり前にそこにあった『ラビティア』という異世界の存在は忘れ去られていった……
……そして、現在……
ラビティアの名前は歴史上の名前となり、ウサギの姿になったラビティア種は自宅で飼えるペットという存在になっていた……
ほかの動物と同じようにペットショップで扱われていた。人種をサポートする存在のラビティア種としてではなく、愛でることで人種を癒していた。
そんなクラリティアとラビティアをつなぐ、ひとりの少女と一匹のうさぎの物語が始まります。