ニート居候になる1
自己紹介
あらすじ
今回の出来事は2020年の10月頃、僕が23歳の時に起きた話である。
始まり
僕はDiscordと呼ばれる音声アプリ上の雑談コミュニティに入っている。そこでは様々な人がおり、親しくなると実際に会うこともある。
そこで知り合った女性の一人に、佐野さんという女性がいる。
※仮名
佐野さんが誕生日を迎えるに当たって、僕は誕生日プレゼントを送ることにした。そのコミュニティの管理人の弟は知的障害者なのだが、その知的障害を持った管理人の弟を佐野さんはえらく気に入っている。振る舞いや言動が愛くるしく感じ癒やしなそうなのだ。
そこで僕と管理員は相談して、管理員に弟の写真集を業者に頼み特注した。それが下記の画像である。
また佐野さんと僕は実際に二度程あったことがあり、ちょうど佐野さんは一人暮らしをはじめたばかりで佐野さんから家に遊びに来てよと言われたこともあって、写真集を手渡しでプレゼントすることにした。
ここで佐野さんのことについて書く。佐野さんは僕の一つ上の女性である。身長は172センチで体重が47キロ程。腕をつっぷすだけでアザができる虚弱な体質で、海外の血が1/4程入っている。目鼻立ちがすっとしており、ひいきめなしでも美人な人である。
佐野さんはこの時期、長年同棲していた彼氏と別れたことが関係して、とてもさみしい気持ちになっていた。一人暮らしをはじめたのも彼氏と別れたことが原因。
問題なのがとにかく佐野さんは寂しさを感じやすい性格なのだ。テレビを見る訳でもないのに、ずっとテレビをつけっぱなしで生活している人がいると思う。佐野さんもその類の人間なのだ。
だからきっと僕を家に遊びに誘ったのは寂しさもあってのことだろうし、色々な人を招き入れてるのだと思う。
佐野さんにプレゼントを渡す為に、佐野さんの家を訪れる。プレゼントを渡してしばらく話した後、僕は別の用事があるので、佐野さんの家を後にすることにした。
佐野さんの家のドアを開け、外へと出る。佐野さんは言う。
「いってらっしゃい」
と
佐野さんはニートを飼いたがる
「いってらっしゃい」
この言葉の意味を説明する為には経緯を話す必要がある。
実は佐野さん、極度の寂しがりで、とにかくそばに人がいないと駄目な性格。一人暮らしをはじめてすぐに、一緒に住んでくれる人をネットで探して、実際に住ませていた。
一緒に住んでくれて、いつもそばにいる存在となると、ニートが望ましい。だから佐野さんは実際にニートを何度も飼っていた。一人暮らしを初めて2ヶ月か3ヶ月かわからないが、結構な短期間の内に3、4人にはニートを飼っていたそうである。
しかしニートというのは大体人間的に何か問題を抱えていることが多い。そして飼った複数のニートの内、何人かは男だったそうである。
佐野さんとしては異性としては全く見ていないのに、向こうがそういう振る舞いをしてくることがあったそうだ。夜の誘いを断られたニートは気まずい気持ちになり、佐野さんの家を出ていく。
ニートを飼っては色々な問題が起き、ニートは出ていく。そして佐野さんは新たなニートを探しオファーを出す。そう、佐野さんがニートを探していく内に僕にまでオファーが来たのだ。
僕は最初の内はそんな事情は知らなかったし、冗談だと思っていた。でも実際に佐野さんの家を訪れて、玄関を出る時いってらっしゃいと言われ、佐野さんの言葉が冗談ではないことを知った。
なんとなく面白そうなので乗ることに
僕の記事を沢山読んでくれている人なら知っているかもしれないが、僕はニートの中では変な行動力がある。変な行動力だけはあるので、この誘いに乗ることにした。
佐野さんの家に誕生日プレゼントを渡しにいってから、10日後くらいだったと思う。佐野さんと僕の一緒の生活が始まった。
ここで改めて書いておかなければいけないのは、僕は童貞で女性との交際経験がないということ。そして佐野さんの家は1Kであること。佐野さんは美人だということ。
そんな童貞が一つ上の女性の家に住んだら、惚れてしまうのでは?という懸念があるが、僕には佐野さんはそういう目では見れなかったし、佐野さんもそれは分かっており、だからこそ僕にオファーがきたのだ。
佐野さんは短気で怖いのだ。しかも佐野さんと僕は敬語で話す仲。敬語といってもガチガチの敬語ではなく、フレンドリーな敬語。この敬語によって絶妙な距離が保たれている。その絶妙な距離があるから、異性としての距離感までは距離が近づかない。
生活でのルール
佐野さんの家に住むにあたって、一つだけ特別なルールがあった。佐野さんのクローゼットを覗かないということだ。佐野さんが仕事に行っている間、僕は佐野さんのクローゼットを覗こうと思うば覗くことができる。それだけは絶対にするな、ということだった。
またこれはルール以前の話だが、佐野さんが着替えをする時は僕は毛布を頭に巻くことになっていた。佐野さんの体にはさして興味がないので、不正をして薄めで着替えを覗くこともなかった。
普通人間と人間は物理的な距離が近ければ、心理的な距離もおのずと近づいていくとは思うが、佐野さんと僕はなぜか縮まらない関係なのだ。不思議なものである。
声量
佐野さんの家では静かに過ごさなければいけなかった。集合住宅なので大きな声を出すと隣人に声が伝わる。元来僕は馬鹿程声が大きいので意識して小さい声を出さなければいけなかった。
それから佐野さんが誰かと通話している時に、僕は言われた訳ではなかったが、喋らないようにしていた。声色で分かるのだ、佐野さんが男と通話しているということが。多分僕が何かその時話しても佐野さんは怒りはしないし、許してはくれるとは思うが、声色を変えて可愛こぶってる佐野さんが通話している時は息を殺すように過ごしていた。
また僕は多分そんなにいびきをかく方ではなく、多分かなり静かにすやすや寝るタイプ。佐野さんもほとんどいびきをかくことはなく、静かに寝ていた。
ちなみに僕の寝床は佐野さんのベッドの横の小さな隙間スペース。来客用の布団があったようななかったような、そんな気もするが、僕は布団がなくとも寝れるので、部屋のはじっこの余ったスペースに潜り込んで寝ていた。
佐野さんとの生活
佐野さんは当時渋谷まで電車で通勤する社会人だった。当然今でも働いてはいるが、職業は変わっている。渋谷までの通勤は乗り継ぎを挟んで、1時間以上かかり、自宅から駅までは徒歩で10分ちょっと程。佐野さんの家は東京にあったが、渋谷までの距離は遠いのである。
居候しているからといって、家の掃除をしておいてとかそういったことを言われることはなかった。佐野さんは自分自身で掃除が間に合っていたし、物が少ないから掃除はさほど時間がかからない。洗濯なんて僕が佐野さんの衣類に直接触れる訳にもいかないし、そもそも佐野さんの家には洗濯機がなかった。
洗濯機を置くスペースが室内にはあったが、佐野さんは洗濯機を購入してはいなかった。中古なら1万円以下で買えるし、浴室乾燥もあるから、買った方が便利なのでは?と思ってはいたが、佐野さんの生活なので特には何も言わなかった。だから佐野さんは週に1回程、コインランドリーに行っていた。自宅からは徒歩でこれも10分ちょっと。
洗って乾燥させるとなるとそれなりに時間がかかる。洗濯をする為に家を出て帰ってくるまで1時間以上はかかっていたと思う。まるで昔話のおばあさんは川に洗濯へといったそんな趣を感じた。
また佐野さんの家に住み始めてから1日目で合鍵をもらった。当然合鍵を貰わなければ生活をするのに何かと不便になるので、当然といえば当然なのだが、これまで実際佐野さんと会った回数は3回程。一緒にいた時間で言えば10時間ちょっと程。よくもまあ僕のような人間をそう簡単に信用できるな、佐野さんは人間を疑うことはないのだろうかと思う。
また佐野さんは食事代として僕に1日1000円を与えようとしていた。だけど僕はそれを断っていた。食事に1000円も使わないのである。食べ物は佐野さんの家にある適当なものを食べたりして間に合わせていた。佐藤さんは今までのニートと違って全然お金がかからないねと佐野さんに褒められた。
一緒に生活をし始めて佐野さんの意外な一面や知らない一面を知ることはさしてなかった。普通野蛮なところや汚いところが出てきて普通だと思うが、きっと佐野さんは監視カメラをつけて生活しろと言われても、多分人に見せて困るような生活はしていなかったのだろう。
そして僕も見られて困るようなことはしなかった。佐野さんのいない間に佐野さんの下着をどうこうするとかそんなことは一切しなかったし、しようという気持ちも湧いてこなかった。実は僕は佐野さんの本名を知らない。佐野というのはこの記事においての仮名。実際は佐野さんのネットのハンドルネームでずっと呼んでいるし、今でもそうだ。佐野さんの本名を知ろうと思えば、光熱費の明細を見れば知ることはできたが、見ることはしなかった。深い詮索や干渉はしない方が良いに決まっている。
僕はネットにおいて、深い詮索はするし強い干渉もする病的にまでしつこい人間だったから、これは自分でも意外だと感じる。
佐野さんはフレンドリー過ぎる
佐野さんは極端な寂しさを覚えやすい人間なので、僕のような人間を家に住まわせる。僕のような人間を住まわせるくらいだから、僕以外の人間を招くことにも全く抵抗がない。
佐野さんと一緒の生活を始めて2日か3日たった時、佐野さんのネットの友達が二人佐野さんの家にくることになった。二人とも男である。片方は体が大きく年齢不詳のワイルドで気さくのいい男性。以後ワイルドと書く。
もう片方は体が小さく、ちょっとぷくっとしており、黒いスカートを履くゴリゴリのV系?のちょっと痛い男性。以後痛男と書く。
ワイルド系は僕と初めてあった時、笑顔で握手を求めてきた。人間関係が得意なのだろうと肌で感じた。痛男は痛いので、会ってまもなくして痛い男であることに気づいた。
佐野さんは二人ともただの友達だよと言っていたが、そのようには感じなかった。佐野さんはお世辞なしで美人である。男は美人に弱い。そして痛男は終始かっこをつけている。
6畳の明かりが消され、ろうそくの明かりだけが灯される部屋の中で4人でわいわいと雑談をする。その中で痛男はちょっとかっこをつけるようなことを度々言うし、完全にオスというオーラを放っていた。こいつ佐野さんのこと狙ってるんだな、そういった姿勢が僕にまで伝わってきた。
極めつけは佐野さんがコンビニに行った時だった。佐野さんがコンビニに行くといって、玄関を出てから、20秒程たつと痛男は俺もついていくわと言う。ほほーん、二人になれるチャンスを狙ってるんだなと思い、僕は痛男に確信に迫る質問をした。
「佐野さんのこと好きなんですか?」
痛男は振り返り、3秒程息をとめてかっこをつけて言う
「だって可愛いじゃん?」
好きか好きじゃないかは言わず、遠回しに質問に答えてくるところ、ちょっと自分に酔っていそうなところが痛いポイント高め。
急に変な雰囲気になる
佐野さんと痛男がコンビニから帰って来た辺りから場の空気が湿りだす。そもそもの話最初からの空気が壊れていたのだ。
痛男からしたら、好きな女の子の家に遊びにきたというのに、その女と一緒に暮らしているというニートが部屋の中にいるのだ。痛男は佐野さんといずれ恋人同士になりたいと望んでいるはずだろう。だとすれば痛男からして僕はとんでもない邪魔者なのである。
「佐野ちゃん、ワイルド一緒に外にタバコ吸いにいかない?」
痛男が突然訳の分からないことを言いはじめた。僕以外の3人は喫煙者でさっきまで普通に部屋でタバコを吸っていた。そして外は雨が降っている。外に雨を凌げるような場所も近くにはない。きっと僕が邪魔で出来ないことがあるのだろうと察した。かといって僕が部屋から出るでもなく、僕は場の微妙な空気に困惑しながらも、その空気を楽しんでいた。
僕以外の3人は外へと行く。この時佐野さんからLINEがきていた。佐野さんは痛男とワイルドには見えないように、僕にLINEでメッセージを送ってきていたのである。やばいですよ、この空気とか、そんな感じのメッセージだったと記憶している。
部屋に取り残される僕
3人が外へと出ていき、部屋に取り残される僕。痛男が佐野さんと二人きりになろうとするのは分かるけれど、なぜ3人なんだろう?どうしてワイルドも一緒についていったのだろう。そしてなぜ今なのだろう。重要な話もあるのだろうか。いや、重要な話がない訳ない。
僕がそんなふうにあれこれ考えて10分程だったろうか。3人が戻ってきた。さっきも微妙な空気であったが、戻ってきた3人の出す空気はもっと微妙な空気だった。さきほどまでは微妙な空気ながらも会話があったのに、戻ってきてからは会話がない。何があったの、、?頭が疑問で埋め尽くされた。するとその時佐野さんからLINEのメッセージが届いた。痛男とワイルドには見えない角度からスマホでメッセージを送ってきた。
「二人から告白されました。どちらかを選んでほしいと言われました。両方ともそのつもりがないので、両方とも選びませんでした」
そんな旨のメッセージを確認した。最悪の告白だ。二人からどっちか選べとカッコを付けた告白をして両方とも振られたのだ。馬鹿過ぎる。というか振られた後に、じゃあ家に戻りましょうか的な会話があったことを想像すると心が痛くなる。なんだその会話。へんてこ過ぎるだろ。振られた後に一緒にてこてこと戻ってくるな。
そんな経緯があって部屋の空気は静まりかえってしまった。空気に耐えられなくなった佐野さんはまたコンビニへと逃げ出してしまう。それを追うワイルド、部屋に取り残された痛男と僕。
話はニート居候2になるへ続く。
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