ニート居候になる2
自己紹介
https://note.com/yuukibutu_2021/n/nd2c49b2dbcbd
あらすじ
https://note.com/yuukibutu_2021/n/na5c87641a380
上記の記事の続きである
痛男と二人になる僕
ワイルドと佐野さんが外へと行ってしまい、痛男二人になる僕。痛男は振られたばかりで気持ちが沈んでいる。そして僕はあくまで事情を知らないふりを続けた。
佐野さんが二人から告白されたことは、佐野さんから送られてきたLINEで知った。だから僕が事情を知っていることが痛男に伝われば、秘密裏に佐野さんが僕にメッセージを送っていたことが痛男に分かってしまう。
そんなことが起きれば事は色々と面倒なことが起きてしまうだろうし、佐野さんの評判にも関わる。ということで僕は痛男二人でいる時、あの時何が起こったのかを全く知らないということで通すことにした。
家主がいない6畳の部屋。外は雨がふっており、部屋は少しじとじとしている。振られた痛男と痛男にとっては好きな女の子に家に住む邪魔物のニート。そもそもそんなこと関係なく、痛男は痛い人間なので元々話しづらいような性格。痛男と僕の二人の空間は空気が壊れていた。佐野さんが逃げ出してしまうのもよく分かる。佐野さんはコンビニに言ってくると行って1時間程は帰ってこなかったと思う。
その間僕は痛男に向かって
「何があったんですか、、、?」
「なんか3人で外にいって帰ってきてからなんか空気変ですよね、、?」
と知ってはいることを知らないふりで質問した。また痛男の会話を録音してLINEで佐野さんに送っていたりもした。
痛男は口数が少なく、会話はあまり弾まなかった。それでもこの壊れた空気を修復しようと試みたがうまくはいかなかった。
そのうちに痛男は佐野さんのベッドに勝手に入り、寝てしまっていた。もしかしたらあの時痛男は寝たふりをしたのかもしれない。それにしても人のベッドで勝手に寝るのもどうかと思う。
そのうちに佐野さんとワイルドが帰って来た。痛男は寝たままである。時間は深夜で、佐野さんは明日仕事。佐野さんはもう夜が遅いので寝ることにした。でもベッドには痛男がいる。佐野さんは床で寝ることにした。ワイルドはじゃあそろそろと言って自宅に帰っていった。
振られた男と床で寝る家主と居候のニート。振られたくせに図々しく家に居続け、しかも振った女の子のベッドを勝手に占領する痛男はどういう思考だったのだろうか。プライドが砕けすぎて、何も考えていなかったのだろうか。最後に好きな女の子のベッドで寝て、後のおかずにでもしようという了見だったのだろうか。
佐野さんが床で寝てから1時間程経った時、痛男がむくりとベッドから起き上がった。そして床で寝る佐野さんに、ほら佐野ちゃんのベッドなんだから佐野ちゃんは床で寝ちゃ駄目だよ的なことをいいはじめ、佐野さんがベッドに行くように促した。
お前がそこで寝ていたから佐野さんは床で寝ていたのだろう、こいつは今更何を言っているんだと思うが、当然口には出さない。佐野さんがベッドに移ると、じゃあ俺も今日はここら辺りでといって、痛男は帰っていった。
後日
後日佐野さんから詳しい話を聞いた。二人のことを振ったが、そもそも二人と出会ってからまだ間もない。好き嫌い、付き合う付き合わないの判断を下すのには時間が短すぎる。痛男はあれだけど、どうやらワイルドのことは結構いい感じに思っているらしい。
佐野さんとワイルドはインターネットのあるコミュニティを通じて知り合った。はじめて会った時は一緒にサイクリングをしたそうである。その時から佐野さんはワイルドのことをちょっと良いと思っていたらしい。
まあたしかにわかる。ワイルドさんは僕にも優しく、気さくな人間。体も大きく頼りがいがありそうだ。
そうしたこともあり、振られてから痛男が佐野さんの家にくることはなかったが、ワイルドは頻繁に家を訪れた。
傍から見ていて、ちょういい感じである。下記が佐野さんのベッドと僕が寝ている場所のいち関係を表した画像。さとうというのは僕のことである。
佐野さんとワイルドが仲良くなり、距離はどんどん短くなり、ベッドの上でいちゃつく二人。キスとかセックスとかそういうことはしていなかったと思うけど、佐野さんの声がメスの声そのものだった。
僕はおかしくなりたい普通の人間なので、よく分からない。傍らにニートがいるというのに、二人は気にならないのだろうか。不思議である。
二人のイチャイチャが発展して、これもしかしてセックスでもしてるんじゃねえか?と思って夜中家を飛び出したこともあった。自分が邪魔者になっているのではないか?という気持ちでいっぱいになって逃げだしてしまったのである。
あの時一時間くらい家を空けた。きっとあの時二人はセックスをしたに違いない。多分。
ワイルドという人間
実はワイルドという人間結構闇が深い。僕はワイルドの年齢を知らないし、ワイルドもワイルド自身の年齢を知らない。というのもワイルドは両親は二人とも日本人だが、出産が行われたのが東南アジアで出生届がちゃんと提出されなかった云々であり、大人になるまで東南アジアで暮らしていた。身分証のようなものをそれまで持っておらず、初めて日本にきて、日本で暮らすようになってから、その時年齢や名前が決まった云々。
詳しいことは分からないが、東南アジアで生まれ育った影響で身分が定かではないそうなのだ。だから日本にきて発行された身分証にかかれている生年月日はおおよそのものであり、実年齢と2歳や3歳ずれているだろうとのことだった。
それからワイルドは元暴力団関係者だとワイルド自身がいっていた。東南アジアで暮らしていた頃日本のヤクザ漫画かヤクザ映画に影響されて、日本に来てから極道の道に入ったそうなのだ。
だからワイルドの背中にはゴリゴリの和彫が入ってた。ちなみに佐野さんも和彫ではないが、背中にタトゥーが入ってるそう。ちなみに僕は直接佐野さんのタトゥーを見たことがない。
ある時佐野さんが一人でいる時街中で、車に乗った輩複数人からナンパされた。車の窓を開けてやからが鬱陶しい絡みをしてきたそうだ。その話を佐野さんがワイルドにしたところ、今度そういうことがあったらナンバープレートの写真とっておいて。俺が後でやり返すからと、極道っぽいことを言っていた。多分ワイルドは怒らせると結構まずい人。
ワイルドと落語を見に行く
痛男と違ってワイルドは俺に気さくだった。それが佐野さんの心を奪う為なのか、単純にワイルドの優しさなのかは今でも分からない。
ワイルドは元々サラリーマンをしていたが、サラリーマンから個人事業主へと職業が変わってから、暇な時間が沢山出来たらしい。
今日暇だな、そういえば佐藤くんは落語聞くんだっけ?と言われ、話の流れでワイルドと一緒に寄席に行くことになった。
好きな女の子の家に住む居候のニートなんぞマジで恋の邪魔者過ぎて、嫌悪の存在なはず。例え佐野さんからのイメージを良くしたいといっても、僕と二人で出かけるなんて無理なんじゃないか。
佐野さんはおそらく35から40の間程度の年齢だったと思う。ワイルドにとって僕は年下過ぎて、子供のように思われていたんだろうか。
とにもかくにもワイルドと僕は一緒に浅草にある寄席、浅草演芸場に行くことになった。ちなみにこの日佐野さんは仕事で普通に出勤して働いている。
松本人志が落語は聞いた方が良いという話をラジオでしていたことから、僕はなんとなく興味を持って聞きはじめた。最初こそ小難しいイメージを持っていたが、そんなに難しくもなく、話や落語家によっては相当下品な落語もある。
そんな訳でラジオ感覚でたまに落語を聞くことがあり、一度位は経験として実際に聞いてみたいなと思っていたので良い機会だった。
寄席というのは数時間の間、落語家か代わり代わりに落語をやっていく。間間に漫才や大道芸のような色物を挟みつつの、それなりの長丁場。
若手の落語家から真打ち(しんうち)と呼ばれる達者な落語家まで様々な人が登場する。僕はさほど落語家には詳しくないが、それでも知っている落語家がちらほら出てきて、そんな時はテンションが上がった。
まあ確かに長時間座って何かを聞くとか見続けるというのは、疲れてはくるが、それなりに楽しかったし面白かった。そしてワイルドはずっと寝ていた。でもワイルドは僕の分までお金を払ってくれた。
その3に続く。
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