「質的優位に頼らないサッリ・フットボールを見たい」 チェルシーvsエバートン レビュー
プレミアリーグ18-19シーズン第12節、チェルシーvsエバートンは0-0のスコアレスドローに終わりました。
両チームのメンバーはこちらです。
今回は、僕が試合を見て感じた3つの「疑問」について書きたいと思います。
1.しつこく「真ん中から」攻める理由はなぜか?
2.チェルシーは似たようなクラブに苦戦しているのではないか?
3.なぜ私はチェルシーというクラブを選んでレビュー書いてるのか?
1.しつこく「真ん中から」攻める理由はなぜか?
この試合、エバートンの守備の狙いは以下の2つでした。
1.ジョルジーニョにボールを渡さない
2.CB-CH間を圧縮して、スペースを与えない
以下の写真を見てもらえるとよく分かると思いますが、
アスピリクエタがボールを持ってるシーンで
エバートンの守備はほとんどピッチの左半分まで圧縮して縦パスを入れるスペースを消していました。
そして、エバートンの前線2枚に注目してほしいのですが、チェルシーのCBを無視してジョルジーニョの近くに寄っているのが分かります。
この写真のシーンのように、縦パスを入れさせないこと、ジョルジーニョにボールを触らせないことを90分間徹底して狙っていたのは試合を見ても明白でした。
チェルシーはそれに対して、いつも通りダヴィド・ルイスとリュディガーからモラタ、アザール目掛けて縦パスを入れようとしました。
しかし、エバートンの前線2枚はチェルシーCBがボールを持ったとき、
1人はもう片方へのCBへのパスコース
1人はジョルジーニョのパスコース
を遮断してプレッシャーをかけます。
そして、縦パスを入れる先にはエバートンの圧縮された4-4ラインの守備網(上記写真を参考)、そしてCB-CH間のスペースを消すようにゲイエ、アンドレ・ゴメスはポジションを取っていたため、ルイスとリュディガーは前半、縦パスをカットされるシーンや出した先で潰される場面が目立ちました。
後半はコバチのビルドアップ時の位置をアロンソの後ろの位置、ウィリアンをウィング気味に開かせた位置に配置したこと。そして、ジョルジーニョを諦めてセスクを投入したことが成功し、多くのチャンスを作ることができました。
特にセスク投入は、マーク対象の喪失による相手DFの困惑と中距離パスでボールをサイドに散らせるセスクの特徴を生かした素晴らしい交代だったと思います。今後執拗な中央圧縮をする相手に対してのオプションになると思います。
僕が気になったのは、うまくいかなかった前半です。
「サイドが空いていたにも関わらず、なぜ閉められている中央から執拗に攻めたのか?」
が、とても気になっています。
僕の意見は、
「予測不能な数的不利を意図的に作るため」
です。
相手の守備時の人の立ち位置を見ていれば、どこのエリアをやられたくないかが分かります。
逆に言えば、相手が圧縮しているスペース、人が多いスペースを攻略すれば、相手の守備を崩壊させることが出来るのです。
サッリはそんな「予測不能」を意図的に生み出すために、前半はやり方を変えなかったんじゃないか?って僕は思いました。この話はまた最後にも触れたいと思います。
2.チェルシーは似たようなクラブに苦戦しているのではないか?
チェルシーが今年引き分けを喫した4チーム(ウェストハム、リバプール、マンチェスター・U、エバートン)の試合を全て観戦しましたが、ある共通点を見つけました。
それは、「中央に人に強い選手がいたかどうか」です。ウェストハムにはバルブエナ、ディオプ。リバプールにはファンダイク。マンUにはスモーリング、マティッチ。そして、エバートンにはゲイエとミナ。このように、対人や体の強さに定評のある選手が中央に君臨しているチームと対戦しているときにチェルシーは勝ち点3を逃しています。
そして、これが「予測不能な数的不利を作るため」の弊害になっているのです。アザール、ジルー、ウィリアン。1対1に自信のある前線の選手を使い、相手を中央に集めさせてもなお中央突破が出来る状態、すなわち予測不能な数的不利を作り出して得点を奪ってきました。
しかし、質的優位が作れない相手と戦うと、ボールを失う回数も増えて、チャンスが減って守備の回数が増えます。マンUやエバートンには、イージーな奪われ方から危ないカウンターのシーンを何度も作られていました。
まだ結果が出ているのでさほど悲観することでもないと思いますが、被カウンター時の守備の位置もルイスを筆頭に怪しく、相手のシュートミスにより失点を防いでる場面も多いので、真ん中が強い相手に対してどう攻めていくのかを、今後色々試していく段階であると思います。
エバートン戦で見せた
・コバチの位置修正
・セスクの起用
・幅取り役のウィリアン
という施策はある程度当たっていたと思います。僕が新たに試すとすれば、ウィリアンのSB化も試合内容によってはありなのかなと思ってます。こんな風にして、いろんなオプションを試していく時期なのではないかと感じています。
3.なぜ私はチェルシーというクラブを選んでレビューを書いているのか?
2節ぶりぐらいにレビューを書かせていただきました。以前から定期的に読んでくださった方には申し訳ないことをしていると思っています。
私はこの2週間、多忙なこともありましたが、今後もチェルシーのレビューを書き続けるべきなのか。あるいは、noteを書く目的ってなんだろう。とか、色んなことについて考えを巡らせていました。
結論は、「今後も時間を見つけてチェルシーのレビューを書き続ける」道を選択しました。理由については、長くなってしまうのでまた別の機会に発信できればと思っております。
そこで、本題。
なぜチェルシーというクラブなのか。
それは、「風間さんと戦略の思考が似ている」
からです。
僕は風間さんのサッカーに心酔しており、
高校時代も風間さんのコピーのような指導を自分が受けていた経験もあるので、洗脳的かもしれませんが風間サッカーが自分のサッカー哲学を作っていると思っています。
風間さんがよく言ってるのが、
「止める、蹴る、運ぶ、外す」です。
なぜこれを言い続けるのか。それは、
「敵の目論見を破壊して、完全に自分たちが試合をコントロールできる状態に持っていきたい」からだと思います。
上記を達成するためには、まずは自分の質を向上させる必要がある。何があれば相手をコントロールすることができるのか。を突き詰めた結果、「止める、蹴る、運ぶ、外す」に行き着いたのだと思います。
サッリがやりたいことも、風間さんとhowは違うだけで本質は変わらないと思っています。だから、自分たちの質を向上させて質で相手を上回れば、相手が何を目論んで守備をしようとも関係ない。と考えているんだと思います。
話をエバートン戦に戻すと
前半執拗に真ん中から攻めたことは、質的優位で上回れるだろうという試行を繰り返したかったためであると思えば、説明がつきます。
また、後半立ち位置と選手起用を修正したことも、サイドのスペースを使って相手の位置と視野を動かして、1対多を1対1にすることで真ん中の人数を減らしたかったんだと思います。
サッリの根本的な考え方を、選手たちも理解したプレーを見せているので、あとはそれを実行するhowをもっと多く試行することが今後勝ち続けていくために求められます。エバートン戦でもいくつか試されていたことはあるので、今後も新しい選手・戦術が生まれていくことについて期待し続けたいと思います。