ギフト③
看取りとか
葬儀社との打合せを
土日に済まさせてくれる感じも
スーパーおじいちゃんの
スーパーたる所以だ。
日曜の昼間なので
必要なところとは、
すぐに連絡がついた。
水、木に決まった
お通夜と葬儀までに気掛かりがないよう
月、火のうちにやるべき作業も
こなすことができた。
この2日は、
おじいちゃんの形見の帽子を
かぶって仕事してたんだけど
事務作業をしてるのに
キッチンカーの人みたいで
鏡見るたびに笑った。
あとちょっとおじいちゃんくさくて笑
おじいちゃんだー、って笑った。
この月、火は仕事と買い物と
連絡ラッシュ対応だった。
おじいちゃんの
甥、姪たちが
通夜に参列すると
ぞくぞくと連絡をくれたのだ。
おじいちゃんの兄弟は
子どものうちに
仏様になっちゃったので、
この甥、姪は血縁上は、
すべてとみこ側なのに。
おじいちゃん!
愛されすぎ!!!
通夜振る舞いの
お寿司が足りなかったなんて
おじいちゃんはとても嫌だろうから
倍にしておくね。
※結局ぴったりだった(すごい)
四十九日の後飾りを揃えたり、
セレモニーまわり、
仕事の作業のほかに、
わたしには
自分に課したミッションがあった。
それは火曜までに、
ある程度ぴえん🥺しきること。
まず、
その道のプロである
ドクターのともだちに
色々勝手に報告したり話を聞いたり。
3年前におばあちゃんを
似たような感覚で見送っている
ともだちに泣きついたり。
仕事で看取りはできなかった
夫氏に、おじいちゃんの
最強最高の最期の様子を話しながら
号泣したりした。
そして、
葬儀社に安置されている
おじいちゃんに、
火曜のうちに会いに行った。
とみこと母ちゃんと3人だけで。
もう大ぴえんしてやろうと思って。
そしたら水曜からのセレモニーは
しっかりするから!
…おじいちゃあーん、
やだやだやだーうわーんうわーん
体があるうちはまだなんとなく
ここにおじいちゃんを感じられるのに。
焼いちゃうなんていやだいやだ、
わーんわーん、まだおわかれやだー
うわーんうわ…
「ねー寒いからかえろ」(とみこ)
え…🫣
大ぴえん終了。笑
確かにおじいちゃんを
綺麗に寝かせておくため、
寒いのだけど。
とみこよ…笑
その夜、
わたしは久しぶりに写経をした。
気になっていた
イタチの面相筆の
ちょっといいのを買ってみたら
10本近くいろんな筆を試して、
やっと出会えた書き心地だった。
写経を棺に入れると
おじいちゃんの修行の
装備になるっぽい。
ご住職にも確認をとって
般若心経を書いた。
ざっくりもろもろ
一周まわって無ですよねー!
という般若心経。(怒られる)
そしたらまぁ
この悲しみも寂しさも無だわ、
みたいに少し救われたりもしながら
書き上げた写経は筆のおかげもあって
これまでで一番綺麗にかけた。
書き終わった後、
布団の中で泣いてた
とみこに見せにいったら、
すごく笑顔になって喜んでくれた。
おじいちゃん、
写経の効果を
自分の装備よりとみこの笑顔と
わたしの精神安寧に使ったでしょ!
そういう人だよね。
それにしても、
セレモニー中以外を
流れる時間があまりに日常で、
とにかく不思議だった。
お通夜までに、
義妹と手分けをして
おじいちゃんの
好きなものを集めた。
こんなに悲しいのに
スーパーも百貨店も
普通にやっていて
なんか謎だった。
こんなに悲しいのに
義妹がおじいちゃんの好きな
シーチキン缶を鏡餅みたいに
盛り盛りに買いまくっていて
声を出して笑った。
こんなに悲しいのに
あとは何しろ、
カツ丼が必要。
正式には
精進料理でなければという
マナーも知ってはいるものの、
故人を想って用意するなら
アリという情報だけを
鵜呑みすることに決め、
おじいちゃんが大好きだった
カツ丼を用意した。
具合悪い、何にも食べられない、
カツ丼なら食べられる、という
人だった。
まったくおもろい。
入院する時、
腎臓の数値が悪くて
ドクターに
「減塩してますか?」と聞かれ
「してませんっ!味がしないのでっ!」
とくっきり返事していた
おじいちゃん。
ひ孫一同からは、
調味料セットの盛り籠を出した。
普通のフルーツではなく、
缶詰ばっかり食べてた
おじいちゃん。
孫一同からは、
最近はあまり出ないらしい
缶詰の盛り籠を出した。
この食生活で
よくぞ長生きしてくれました👏
お花が少なくて寂しかったら
どうしようと心配していたのも
杞憂from杞憂to杞憂of杞憂。
いただいたお花を入れたら
棺が閉まらないのではと思うほど
もりもりになってたもんね。
おくりびとは
お願いしたものの
なんとなく綺麗にしてくださる工程が
ちょいと入るくらいのものだと
理解していて、
納棺式だなんてしっかりとした
セレモニーになるなんて
実はわかっていなかった。
これが、
とてもとてもよかった。
勉強になることもたくさん。
なんのためにこれをするのかを
説明してくれながら、
納棺師さんがひとつひとつ
進めてくれた。
たぶん島田家の空気がもう
悲しいだけじゃなくなってたから
ちょっと多めに
話してくれたんだと思う。
修行の支度を家族の手で手伝えて
良い時間になった。
しかし亡くなっても、いきなり修行か。
大変だな。
三途の川の渡り賃として
六文銭(を印刷して模したもの)を
袋に入れて背負わせるのが
とても大切だからと、
とみこが担当した。
もうすぐ紙幣も変わるし
これいつかSuicaとかになるんかなと
考えていたばか孫は、
足袋を履かせて紐を縦結びにする役を
おおせつかった。
わたしはまじでさんすうレベルの
図形もわからないので、
「いつもと反対で良いですよ」の
いつもも反対もわからなかった。
ひとまずやってみたら
「その反対ですね」と言われて
反対にしたつもりが
「その反対ですね」となって
何が何だかわからなくなったので
固まってやり過ごしていたら
納棺師さんがあとは引っ張るだけに
してくれた。
今世では
糸結びできませんが
来来来世では
さらさら縫合できますように。
おじいちゃんも算数苦手。
鶏肉も食べられないし、
足の形もぶすだし、
口元が出てるし、
そのへん、
ぜんぶ隔世遺伝してますんで😠
しかし、
おじいちゃん盛れてたな!笑
寝てるので水分が落ちて
鼻筋が通るらしく
なんだかシュッとしてたし。
その話になったとき全家族の目が
鼻ペシャのわたしのほうを向いたよ…😠
メイクもしてもらった
おじいちゃんは
あんまり綺麗で
やっぱ盛れすぎか?って
みんなでちょっと笑っちゃった。
洒落者のおじいちゃんらしい。
さいごに写経を
お布団みたいにお腹の上に置いたら
ご住職が
「せっかくですから
葬儀で般若心経も上げましょう」と
言ってくださった。
あんなにぴえんしたのに
ありがたくてありがたくて
また顔面が滝になってしまった。
悲しさも寂しさも
そりゃああるけど
ありがたくて
温かくて泣いてばっかり。
おじいちゃん、ナースさんから
ご住職まで素敵な方ばっかり
揃えちゃって。
本当にすごいな。徳だね。
そうそうご住職が
電話をくれて
おじいちゃんのことをよーく
ヒアリングしてくれたんだよ。
おかげでとんでもなく
おじいちゃんらしく
素晴らしい戒名もいただいたね。
穏照圭壽信士
穏やかに照らす、
そして壽。長寿だからねって。
おじいちゃんそのものだよ。
あんまり素敵な戒名で
家族みんなで感動したんだ。
それに、
穏やかに照らすおじいちゃんの
お母さんの戒名には
これまた穏やかに照らす月が入っている。
穏やかに周りを照らしながら
愛に生きたおじいちゃん。
月のついたお母さんは
幼い息子を2人亡くして
心配でおじいちゃんを
それは大切に大切にしたんだって。
結果、具合悪くても
カツ丼が絶対食べたい
わがままっ子にも
なりましたけど笑
愛して、愛されて
亡くなってなお壽ぐほどに
長生きしましたよ。
親子で
穏やかに照らしてくれる。
月を見るたびに
おじいちゃんを思い出せる。
なんて素晴らしいんだろう。
お通夜は久しぶりすぎる
親戚も集まって、
おじいちゃんが大好きな
わいわいになっていたね。
お葬式の般若心経は
爆泣きしちゃった。
美しいお経をあげていただいたね。
ご住職がいい声すぎて
みんなびっくりした。
法話もわかりやすくて
めちゃくちゃおもしろかった。
棺にお花や
おじいちゃんの好きなものを
入れていったら
あまりにもりもりになって
みんながふっと笑顔になったり。
甥っ子たちが自分の意思で
学校を休んでお葬式に参列して、
小さい手で冷たいおじいちゃんの
おでこをずーっとあっためてたり。
父ちゃんの喪主あいさつは
ダメダメすぎて
それがかえって泣けちゃったよね。
司会者さんがベテランなのに
もらい泣きしそうになったって
こっそり話してくれたよ。
納棺師さんや司会者さんまでもが
素敵だったよね。
なんとも
温かいセレモニーになった。
そしてこのところ
ずっと良い天気で
寂しくなる夜には
月が綺麗に見えてた。
そうそう、
おじいちゃん聞いてよ。
とみこ、
7回忌までは
最低でも頑張るってよ💪
行けそうな気がするー!
約束した通り、
とみこのことはみんなで守るよ。
とみこと一緒に月をみて
2回手を握っておくから、
とみことわたしたち家族を
おじいちゃんを愛したみんなを
穏やかに照らしつづけてね。
おじいちゃん、
「月がきれいですね。」