![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/80684505/rectangle_large_type_2_dd1ca6769961430da2004db2301ecffc.jpeg?width=1200)
追憶~冷たい太陽、伸びる月~
空の果て
第35話 虹を渡って
その後承和は空の穴へ戻ることがなかった。
承和から深碧(Shin-peki)、縹(Hanada)、菖蒲(Ayame)と子へ代を引き継ぎ、最後のトビヒ族の行方を追っていたからだ。
深碧以降の代は親以外のハナサキ族を知らない。また、自分を空飛ぶ人間だとさえ思い込む者もいた。種血の存続のため親となるハナサキ族が派遣されたが、人型の姿で子が生まれると空の穴へ戻ったからだ。
承和は利矢の後継者を知らない。深碧らも空の穴への還り口を知らぬまま人間の地で眠りについた。任務を完遂した菖蒲は人間の男性との間に子を授かったが、臨月を迎える前に別れた。菖蒲の子は本来の姿で生まれ、虹(Niji)と名づけられた。迎えに来たハナサキ族に虹を託し、菖蒲は地上に残った。
後に、本来の姿で生まれたハナサキ族にも名づける習慣が広まる。
それまでの、トビヒ族の影を歩んだ歴史は長かった。