追憶~冷たい太陽、伸びる月~
探し求める者
第40話 2111年~留めるもの③
Pansyの足が地面から離れた。大きな翼と同じ白金の羽毛がやけに近くなった。
足元を見ると、氷がOliveの遺体を囲い、人間が叩いたり蹴ったりしてもびくともしなかった。
地響きのような羽ばたく音がPansyの鼓膜を揺るがすと、遺体が燃え出した。
「この鳥が?」
鳥は黒煙を避けながら上昇した。Pansyも、遺体や人間が徐々に小さく見えた。
氷壁が溶けると、人間の嘆きが微かに聞こえた。灰の臭いからも分かるように、Oliveの骨すら残らず燃え切っていた。
「ねぇ、どこまで行くの?」
辺り一面が海になると、Pansyは鳥に初めて話しかけた。Pansyが思いついた、唯一Oliveを弔う方法だった。トビヒ族の名誉をPansyが傷つけるわけにはいかなかった。それが旅の供として、償い切った者として敬うことだと、Pansyは信じていた。
鳥にもPansyの誠意が伝わっていたが、鳴き声一つ上げなかった。
ただ西の果てを目指して進むのみ。
鳥の正体はハナサキ族が一体、承和Soga。
故クリア・サンストーンの命により、Pansyの行方を追う者。
承和がPansyに接触したのは、この一度きりだった。