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IF もし篠原直人がトオイさんシリーズを終わらせるなら

SPL事務所にて。

スペシャリティ 篠原直人&梶原誠

誠「直人くん、本当に遠井さんシリーズを終わらしたいって思ってるの?」
直人「そりゃ、未練もあるけど。けど、まあ……」
直人は「オレには才能があらへん」という言葉を飲み込む。
誠は疑いの目を向けるのをひとまずやめておいた。

誠「直人くん、遠井さんシリーズを終わらせる前にこんな良い案があるんだけど」
直人「なんやまーくん。オレはもう、終わらせるって決めたんよ」

誠「まあ聞いてよ。終わる前に一花咲かせようよ。例えばさ……映像と舞台装置をふんだんに使った、ド派手な2.5次元ミュージカルをするのはどうかな? ほら、最近推しの子の2.5次元編が流行ってるじゃん。そういうの良いかなぁと思って」
いつもの直人なら目を輝かせて喜ぶだろう。
だが今回の直人は鬱である。

直人「え〜〜?」
(そんなん、やらんよ。オレもうかれんに振られてから【IFだけの設定】自分のコンテンツに自信無くなったし)
直人「もうオレは誰も笑わせることが出来ないかもしれないのに」
誠「何があったの? なおくん」
直人「あ、いや……大したことじゃないっすよ。それで、他の案が聞きたいなぁ〜?」

誠「なるほどね、ふーん」
直人「いやそんな見んとって下さい……オレなんかのこと……」
誠「分かった。花火大会の尾宅くんとももちゃんを再現するとかどうかな」
直人「普通あの状況なら会場の外に出るでしょ、うちの尾宅は」
誠「あえてだよ、あえて。状況が面白いの」
直人「ま、保留でお願いしまっす……」
誠「ふーん、それと」

誠「遠井さんシリーズがなくなったら、直人くんは何したい?」
直人「何も決まってないっすよオレ、もう……ははっ」
誠「ふーん。遠井さんマンチョコとかどうかな」
直人「んな、ビックリマンチョコみたいな……みんな喜ぶかなぁ」
誠「遠井さん達の付録がついたチョコとかみんな喜ぶと思うけどなぁ。で、まずオレは直人くんの意見を聞きたいんだけど」

他にも誠はさまざまな案を頭に思い浮かべていた。
・ももちゃん水族館に登場。あの名シーンの再現。
・ゆりちゃん化粧水とコラボ。美容に詳しい彼女なら。
・あかねちゃんAAAカップの下着とコラボ。恥ずかしがらずに宣伝する。
・サタンくんくいだおれ太郎とコラボコスプレ
・「こんなパパにはなるな!」遠井パパの世の父親向け自己啓発ポスター
・乙女ゲーム発売
ジェルくん「常識皆無のキテレツ男子」
サタンくん「好奇心旺盛の中二病男子」
尾宅くん「インテリで安心感のあるぽっちゃり系男子」
裏ルートゆりちゃん「美容に詳しいしっとり女子」

だけど誠は黙っていた。
直人の意見を聞きたいからである。

誠「オレは直人くんの中に答えがあるのを知ってるから、だからオレは直人くんの答えを聞いてから色々なことを決めたいんだよね」
直人「まーくん……」

直人は少し俯いた。
かれんのことは誠には言えなかった。
元々トオイさんシリーズを始めたのは、まず最初にかれんの喜んでくれる顔が見たかったからだ。かれんと一緒の思い出を共有できるように学園ものにして、かれんのことがバレないようにヒロインの女の子あかねは貧乳にした。
そのかれんが今、オレの隣にいない。

直人(オレはこれから何のためにトオイさんシリーズを作ったらええんやろう。せやけどそのことはまーくんには言えん)
誠(何か並々ならぬ事情がありそうだ。そうだ、カマかけてみよ)

誠「学園もの、女子高生が主役。ね……」
誠はチラッと直人を見る。
直人は涼しい顔をしていた。
直人「まーくん、悪い癖やで」
誠「さては何か絡んでるな?」
直人「全くちゃうわ」
直人(かれんもオレも大学生やし)
誠「そっか。空気読めないことしてごめん。でも、これだけは言わせて?」
直人「何?」

誠「直人くん、才能もあるし努力もしてるのになって思ったんだけど」
直人「……!!」
不覚にも直人は照れてしまった。

誠「何で落ち込んじゃったんだろう……」
直人「知るか、ボケ」
誠「スランプの一種かなぁ」
直人「オ、オレにも分からんわ……まーくんは、オレに何して欲しいの??」
誠「直人くんの作りたいものを作って欲しい」
「全くだぜ」と辰徳が入ってきた。

直人「辰徳入ってこんといて! 今落ち込んでんねんから」
「わり」と辰徳は部屋から出ていった。
誠「それで直人くん。提案なんだけど」
直人「何?」

誠「新しい作りたいもののこと、トオイさんシリーズよりも作りたいって思ってるんだったら、トオイさんやめてもいいと思うんだけど。ほらさ、こういうのに大事なのは直人くんの気持ちだったりするから。どんなふうになっても、オレは直人くんの作りたいものを作れるならって思ってサポートし続けるよ。だってオレは直人くんのことが好きだからね」

直人「新しく作りたいもんはそのぉ……なくはないんだけど。遠井よりウケるかわかんないし。トオイよりまだ愛着がないし。ジャンルは何かというと、YouTubeアニメっていうか、何というか。青春が書きたいわけでもないし、コメディが書きたいわけでもないし、乙女ゲームが作りたいわけでもないし。でもなんか、ハローを超えるもんっていうか」
誠「ハローって何?」
直人「かれんが今ハマってるもの」
誠「直人くんその恋は諦めなさい」
直人「ふぁい」

直人「けどハローは超えて良いかな??」
誠「ハローっていうのが何かまーくんイマイチよく分かってないんだけどね? まあいいよ、続けて」
直人「本当に書きたいものは、ダメなままでも良いとかバカでも良いとか、そういうもんや」
誠「うん。いんじゃない?」
直人「けどその思想は世の中に受け入れられない思想やねんな。出来た方が良いとか賢い方が良いとかそういう世の中やから。常識で考えたらそっちの方が良いんやろうけど。だからオレの作品っで結局出来損ないって思われるままなんだと思う、母親に」
誠「なるほどね(分かってない)」

直人「尾宅も安心感のあるぽっちゃり系男子やのうてただのオタクだからさ。ゆりもただの性欲魔女やし。遠井もモテないツッコミ女やし。オレはそういうダメなとこが好きなのにさ、分かってくれないからさ。世の中は。ワクワクはすることって分かってはいるんやけど、正直2.5次元なんてオシャレなことやる動画やないねん。子どもが食うようなもんとコラボする動画でもないし。美容も関係ないし観光も関係ないし学校も関係ないし水族館も関係ないし。何が関係あんのかっていうと、ダメな奴がダメなままでも生きられる世界やねん。なのに好きな女は出来栄えの良い作品にとられる。オレなんか見向きもされなくなる。まーくんまで結局オレのことあんまわかってくれてない。そもそも世界は出来るやつのために回ってる訳やし。オレなんてちっぽけな存在やねんな」

誠(直人くん、すっかり鬱みたいだなぁ。いつもより頭は良いみたいだけど)
直人「あーあ、オレなんか。オレが仲間意識を見い出せるのは出来ないやつに対して。世界も何も出来ない方が優しいはずやってオレは思ってる。バカで優しくなくて頭悪い奴が救われる世の中が良い。そんな世界をオレが作りたいよ……」
誠(直人くん大丈夫かなぁ……)

直人「ドラえもんののび太も結局は出来るやつに書かれる。世の中の変人キャラも結局は出来るやつ。出来ないやつはどこで活躍すれば良いんやろう」
誠(結構支離滅裂なことを言っちゃってるよ、直人くん……まあ話聞こうっと)

直人「出来ないやつは可愛くて出来るやつはあんまし可愛くない。そんな価値観がオレの中にあるんやけど、まーくんはどう思う」
誠「う〜〜ん、人による、としか言えないかなぁ……出来ない子も出来る子もみんな可愛いよ」
直人「せやろか。そうやろか。ならこれはどう思う。社会を回すのが出来るやつなら出来ないやつは何を回せばええと思う」
誠「まーくんは己が日常を回せば良いと思います。人生で満足出来たら結局それが1番よ」

直人「じゃあさ、生きてるだけで迷惑かけるやつってどうやって人生満足したらええの」

誠「そうだねぇ……でも本当にそんな人いるのかな? みんな各々どっかでは他人に迷惑をかけちゃう日がくるけど、生きてるだけってことはないと思う」

直人「じゃあ生きてさ、いるだけで嫌われるのにさ、どうやって幸せにすれば良いの。誰かを」
誠「もしかして両親のことだろうか。何かしら活動をし続ければきっと、誰かのことは幸せに出来ると思うけどなぁ。」
直人「じゃあなんやろなんか。オレとかさ、他のバカな奴らってさ、何も活動してないってことじゃん」
誠「まーくんってさバカな方だけどさ、まーくんが活動してないように見えてたりする?」
直人「全く見えないよ」
誠「なら良かった」
直人「まーくんアホな方やないから。あとまーくんが残した功績は数多いから」
誠「そうなんだ」

直人「活動しても、常識と偏見に押しつぶされるし、みんなどっかからは出来るやつになんなきゃいけなくなるし、子ども時代遊び足りてないからってわけでもないし、受験勉強はきつかったけど理由になってないし。結局なんか、ハローには敵わないって言われるし。どんどん取り繕わきゃいけなくなってくるし。うーんそのさ、なんでさ、オレらはオレらのままでいられないんだろう」

ここからはジェルさんの話です。

ジェルさん「ころんは賢いキャラになるし、さとみは夢を追うし、莉犬はすとぷりの活動をやめなきゃ好きなこと出来なかったみたいだし。なーくんは優しすぎるから正直辛いし。るぅとはワガママだし。オレは何作れば良いかもわかんなくなってくるし。ハローは始まるし」

ジェルさん「うーん。う〜〜〜ん。何でオレらはオレらのまんまじゃ愛されないんだろう。ぷりんはあんなワガママ放題でも愛されるのに」

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