CSRとマーケティング

 現在、多くの企業が「企業の社会的責任」(CSR)を果たす活動に取り組んでいる。
 CSRの内容は、地域社会、健康、安全、教育、雇用、環境などさまざまであるが、「企業が社会課題の解決を支援する」という点では共通している。また、CSRはマーケティングとも結びついており、企業がCSRに取り組むと、消費者ニーズを良いイメージを持ってもらえてアピールすることができる、お得な宣伝方法だ。しかし、CSRの役割は単なる宣伝活動ではなく、非営利団体と連携したり、消費者を巻き込んだりして、今までにない社会的関係を結びながら、実施されるマーケティング活動であるといえる。
 とはいっても、伝統的なCSRの考え方では、「CSRとは利益を追求すること」であり、具体的には、①企業の出資者である株主への利益を還元する責任があり、②顧客に満足を与える商品を提供する責任があると考えられている。この考え方に従うと、ひとつの企業が本業以外の無駄な活動は一切してはいけないことになってしまう。ボランティア活動や募金活動を行なう余裕があるなら、出資者である株主に利益を還元するか、より顧客に満足を与える商品を提供するべきだからだ。
 しかし、それにもかかわらず、多くの企業がCSRに取り組んでいる。ここでは、CSRの意義について記載したい。
 第1のタイプは、企業として取り組むべきだという「自己満足型」の考え方のCSRだ。
 第2のタイプは、企業宣伝や企業のイメージアップのために行う「マーケティング志向型」である。
 第3のタイプは、企業がCSRを先駆的な事業と理解し、その事業から得られる経験を企業内にフィードバックする効果を考える「ベンチャー型」である。
 まとめると、CSRは今後のマーケティング戦略において重要な役割を担う分野であるといえる。マーケティングと聞くと、つい製品開発や広告に目が行きがちで、CSRと聞くと、企業のイメージアップに繋がるお得な宣伝方法だと感じてしまいがちだが、マーケティングとCSRというのは本来密接な関係でつながっている。CSRがもたらすマーケティングの可能性とは、企業がCSRに取り組む中で自社常識と社会常識のギャップを認識することから始まり、これまでの活動を反省的に見直し、非営利団体と連携したり、消費者を巻き込んだりして、今までにない社会関係を結びながら、ビジネスを通じた社会課題の解決に挑戦する。このように、CSRとマーケティングの結びつきを捉え、結びつけていくことが、「社会責任のマネジメント」である。社会責任のマネジメントは、顧客の課題解決を超えて、社会の課題解決への挑戦を可能にする。それゆえに、CSRはマーケティングの広がりとして期待されているのだ。

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