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耳鳴りと涼風

ひょんなことから、ロックバンドtacicaのアルバム再現ツアーに参加した。大学時代に後輩がコピバンやってたなあとか、えっちゃんの旦那さんのバンドやなあ、とかいう情報しか脳には残っておらず(かっこいいスリーピースバンドだという認識くらいはあると主張しておく)、恐縮そのものではあったが、めちゃくちゃ良いライブだった。
祈るように見る人、切実に腕を振り上げる人、終演後目元にタオルを当てたまま動けない人。ここにもロックバンドの歴史があるんだなと心が熱くなった。

ライブハウスが好きだと言うには、足が遠のいてしまっている。ライブに行かないわけじゃなくて、好きなバンドは大概アリーナやホールの公演が多いから。スピーカーが近すぎてちょっとしんどい、という感覚も稀有だ。

そんなことを思うと、本当にロックバンドが好きだと豪語していいものかと尻込みしてしまう。

久しぶりの耳鳴りに包まれて会場を出る。台風が置いて行った涼風が夏の終わりを予感させる。そんな些細なわだかまりより、味の染みていない大根が気にかかるばかりだ。

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