「産まない選択をした理由」を聞いてみた
先日、Twitterにて
「産まない選択をした理由」についてのアンケート調査を行いました。
1〜3は子供を元々望まない人々の考え方、4は妊活を続けた結果「子供のいない人生を送ろう」と決断した人々で、1〜3と4では少々選択の意味合いが異なることを先に記しておきます。
1〜3を選んでくださった人々からは、「どれか1つではなく、複合的であり3つ全て当てはまる」という意見が多く見られましたが、あえて1つを選ぶとしたらどれかを伺いました。
その上で結果を見てみると、ご覧の通り【3.「子供のいる人生」を望まない】が圧倒的な差をつけて首位となりました。
以下、各選択肢について解説します。
「子供のいる人生」を望まない : 31%
元々、子供を欲しいと思う気持ちが薄く、自分の仕事や趣味、パートナーとの静かな生活を望むという人、また「産まない選択をしたことに特に明確な理由がない」という方もこの選択肢に投票してくださいました。
子供を産まない選択をしたというと、一般的に指摘される最大の理由が「自身の生育環境」です。
自身が幼少期に親との間に精神的な隔たりがあり、子供を産み育てることに明るい展望を描けない、という理由が、世間ではまるで「産まない選択」の理由のすべてであるように解釈されている節が多々あります。
実際にその理由で産まない選択をする人は多数いますし、間違いではないのですが、それ自体はあくまで多々ある理由のひとつに過ぎません。
その根拠として、アンケート結果を見ると、生育環境よりも何よりも「子供を欲しいと思う気持ちが元々薄い」という回答が全体の3割、子供を元々望まない人々(1〜3を選択)に限れば45%を占めています。
親との関係が良好で、子供も好き、経済的にも余裕があり持病もない人々もまた、子供を産まない選択をしているのです。
「何か理由がなくては、産まないという選択をするわけがない」という見方は、産みたいと思う人々の勝手な決めつけと言っても過言ではありません。また、それはまるで「幼少期の生育環境が理由なら、産まない選択をしても良いよ」と、全くの部外者が他人の生き方に認可を与えているような、違和感すら感じさせる考え方でもあるのです。
妊娠出産に対する身体的・精神的拒否感 : 21%
妊娠による身体の変化や、自らの体内に意思を持った生物が宿ること、また出産時の過酷な痛み…そういった、母体にかかる負担の大きさに拒否感を覚える方が、この選択肢に投票してくださいました。
自身が衰弱するほどの重い負担を9ヶ月もの間抱えた挙げ句、母体の形状と胎児のサイズから明らかに物理的に不可能なはずのお産を無理やり経ることで、出産後の女性の身体は交通事故に遭った状態と同等とまで言われるほど損壊します。
それほど、胎生である哺乳類、特にヒトの出産におけるダメージとリスクは甚大で、命の危機に瀕すると分かっていればこそ、妊娠出産を喜べない女性が多いことは当然のことといえるはずです。
ただ、これを「産まない選択をする理由」として堂々と他人に伝えるのは、日本では非常にハードルが高いのが現状です。
なぜなら日本は、自虐と自己犠牲、苦しみの文化が未だ根強い、根性論と精神論の国だからです。
出産を痛いから嫌だとは何事だ、それを乗り越えてこそ一人前の人間になれる…命に関わる苦しみを経験しなければ立派な大人として認められない風潮によって、生きる上で当然の欲求である「苦しみの回避」が許されない世の中になっています。
産まない選択をした女性どころか、無痛分娩や帝王切開で出産した女性すら「甘え」だと非難するのですから、この社会はまったく異常としか言いようがありません。
困難が人間的成長を促すことは事実でしょう。しかし出産という、人体を生命の危機にさらす苦しみでなくても、日々数々の困難が私達を待受け、少しずつ心を強く育てています。それで十分に私達は成長することが出来るのです。
そもそも、男性は産みの苦しみを経なくても、人間的に成長出来ているのですから。
人間的成長のための出産など不要です。何が自分を成長させるのか、それは個人で選ぶべきものであり、出産だけが成長の道筋ではないのです。
育児不安 : 16%
今回少々驚いたのが、この「育児に対する不安」の得票数の少なさでした。
幼少期の体験から、育児に明るい展望を抱けない人々、子育てしている周囲の人々を見て湧き上がる不安など、様々な理由からこの選択肢に投票してくださいました。
個人的に、自分の周りでは「育児をするにあたっての経済的な理由」が、産まない選択をすることに大きく関わっているという実感があったため、まさか最も少ない結果に終わるとは予想外でした。
給料が上がらない、保育園に入れない、育休が取れない、こんな環境で子供を育てられる訳がない…老後2000万円問題まで持ち上がったこの国では、子供を産み育てることは個人にとってあまりに大きな経済的損失になりえます。
それだけでなくても、いじめ問題や就職難、年金問題など、今の時代に産まれる子供たちが生きていく未来は非常に過酷で困難な道です。
ただ、もしかしたらそれは「産みたいけれど、今の日本社会では産めない、環境が良くなれば産めるのに」という、出産に対して前向きな考えと捉えることもでき、「選択子なしアンケート」に参加いただく方の中には経済的事情を重く見る方は少なかったのかもしれません。
もしくは、育児不安というのは、まず第一に「妊娠出産への嫌悪」または「子供を産みたい気持ちが薄い」という前提があり、「無理をしてまで辛い育児をするモチベーションがそもそもない」という二義的要因なのでしょうか。
社会的には、この育児不安こそが選択子なしの最大の理由であると思われているだけに、真逆の結果であったということは非常に有意義な発見でした。
妊活を頑張り尽くした : 31%
今回は、妊活を経て子供のいない人生を選んだ方々にも多数ご参加いただきました。
元々子供を望んでいたか、いなかったかという違いはありますが、個人的には「子供のいない人生を明るく楽しく、周囲に批判されたり悲観されることなく過ごしたいと望む人々」という点で共通していると感じています。
ただ、最も孤立感を覚えやすい立場なのではないかと思うこともあります。妊活を共に頑張った仲間とも、元々子供を望んでいない人々とも、若干の距離を感じている人が多いのではないでしょうか。
「結婚した夫婦には子供がいるのが当たり前」、そんな価値観から脱却し、子持ちも子なしも同性カップルも、様々な家族のカタチやあり方があって当然という社会になることで、救われる人々はたくさんいます。
子供のいない人生にシフトチェンジすることが、苦痛や不安ではなく新たな希望になるように。そんな社会を、様々な立場の人々と共に思い描ければと思います。
おわりに
今回設定した選択肢に当てはまらない方々からも、たくさんの理由をお聞かせいただきました。
不妊治療を望まなかった方、パートナーの意向に添う方、両親との不仲が原因の方、また反出生主義の方など、様々な意見を頂戴しました。
産まない理由は1つ2つではないし、そもそも理由などなくたって構わない。大切なのは、その選択が自分の人生を豊かにするものであり、自分の命を守ることであり、幸福を追求するためのものである、ということだと思います。
産まない選択は、憲法で定められた基本的人権のひとつである幸福追求権にあたる。そのことが広く人権イシューとして認知され、いわれのない批判や圧力を受けない社会を作らなければならない。
そう強く思わされた経験となりました。
ご参加いただいた皆様、拡散にご協力くださった皆様、ありがとうございました!