【経験談】迷走、復活、+75%
VXRTの失敗で資産の40%以上を失った後、僕は迷走を始めます。
すぐに資産を建て直そうと危険なトレードを繰り返しました。個別株への集中投資です。
株価にモメンタムがある銘柄をいくつかピックアップして残りの資金を突っ込みました。
2020年末、政府による大規模な財政出動によって得たお金を個人投資家が泡沫的な株に突っ込んで無理矢理株価を押し上げる動きが盛んでした。ゲームストップバブルです。
早く失ったお金を取り戻したかった僕は、狂気乱舞していた株に資金を突っ込みました。今、振り返っても狂っていたと思います。焼け死んでもおかしくない暴挙でした。冷静さを失っていたのです。焦りでいっぱいだったのです。
EH、FUTU、TIGR、MARA、RIOTなどは一週間で+30%〜+50%とか、EHなんかは2倍になりました。失った資産の8割ほどを取り返しました。
ここでやめておけばいいものを、当時は1日で倍になる株もありましたので、乗り遅れてはいけないという焦りしかありませんでした。
上昇した株を利食いして別の株に突っ込みました。EXPR、KOPN、CLSKです。そして、事件が起こります。
米国の個人投資家に大人気だった株取引アプリのロビンフッドが複数の銘柄の買いを停止したのです。対象は個人投資家のおもちゃになっていた泡沫株でした。
バブルの名前にもなったゲームストップ(GME)を筆頭に10社程度が買い制限の対象になったかと思いますが、その中に僕が買っていたEXPRも含まれていたのです。僕が買った2日後のことでした。
買いが制限されては後は売られるだけです。しかし、あまりに大量の売り注文ゆえに売買が成立しません。僕は成り行き売り注文をしましたが、株が取引停止となっているので注文未成立の状態が続きました。株価はずっと動かないままです。
全損になるかもしれない、、、その不安を打ち消すために助かる理屈を考えては結局は運次第だという思考の繰り返し。自分はなんてバカなんだと。間違いから学ぶどころか、より酷い間違いを起こしているじゃないか。なんて愚かなんだと。
部屋をぐるぐると歩き回りました。そして時折画面を見て売却できているか見て、成立していないのでまた歩く回る、を繰り返しました。永遠のように感じられました。地獄でした。
いつの間にか売却は成立していました。買値から-30%の株価で売却されていました。全損になるかもという恐怖、いや恐怖を通り越して現実が現実とは思えないような異常な精神状態でしたので、売却が成立した画面を見ても何がなんだか分かりませんでした。
結局、儲けをほとんど吐き出して泡沫株トレードは微益で終わりました。また時間を無駄にしてしまった。後悔でいっぱいでした。ストレスで再び血尿が出ました。
2021年になって株式市場では昨年から続いた大規模金融緩和の終了が意識され始めていました。しっかりした決算を出している株しかここからは上昇しない。相場の難易度が上がったことは理解していました。
しかし依然として個別株集中投資の方針は変える気はありませんでした。損失を埋めるにはインデックスでは何年もかかってしまうとの認識があったからです。
しかし、泡沫的な株はもう懲り懲りでしたので、決算の良かった株を中心にトレードしようと思いました。また、この時期にMACDやRSI、ボリンジャーバンドといったテクニカル指標をよく見ていました。よく相場予想が当たっているように「思えた」投資YouTuberがよく使っていたからです。こんな便利な指標があるんだと僕は感動していました。好決算銘柄をテクニカルを用いてトレードすれば勝てるのではないか?と考えていました。今、振り返るとバカですね。
しかし意外にも勝率は良かったです。SQ、ROKU、TTD、FVRRなどはかなりのプラスとなりました。損失の半分以上を埋めました。
ここからは手堅くいく、前回の二の舞いはしないと思い別の株に資金を移します。それはAMZNでした。米国の超大型ハイテク株GAFAMの一角です。
しかし二週間後の決算で悪い決算を出して株価は急落しました。他のGAFAM銘柄は良い決算だったのにです。目まぐるしく下方向に動く時間外株価を見て、自分はまた同じようなことを、、、と思いました。自分は投資に向いていないと思いました。反省しているようで、奥底では自分はできるという根拠レスな自信は消えない。欲が強すぎていつの間にか危険な方へポジションが偏っていく。これは気質が投資家に向いていないと悟りました。またまたストレスで血尿が出ました。
結局、2021年は+19%とインデックスに敗北しました。インデックスでは上げが遅いと思い個別株集中投資をしたのに、負けてしまったのです。これは僕にとって重い事実でした。インデックスに勝つことは、難しい。すぐに資産を増やすことは僕にはできない。トレードで何十億と稼いだ有名な投資家のような器は自分にはないのです。
インデックスのメインに、少しだけ自分の相場観に基づいた銘柄を組み込んで、ちょっとだけインデックスを上回ることを目指す、ゆっくり着実に資産を増やす、利幅ではなくオッズの高さを軸にする、損失を限定することを第一に考える。今の投資スタイルの原型ができたのはこの時期でした。
2022年、ハイパーインフレ勃発を受けての急速な利上げを予感して株式市場は年始から下げ始めていました。
インデックスのPERは20倍超、市場を支えている銘柄もGAFAM+TSLA+NVDAの高PER株だけであり、急速な利上げには耐えられないと思いました。
ほとんど現金にして、少ない配分で金利上昇の影響を受けにくい低PERの株で業績が伸びている、株価モメンタムが強い株を攻めました。
VRTX、REGN、BMY、MRK、ABBVといった薬品株、TRMDやTNPといった船株は全て勢いよく上昇しました。
そして2022年9月末、インフレ鈍化を受けて利上げペースの減速が間近になっていることから、今は株価の底の可能性が高いとしてインデックスに全資金を投入しました。そこから株価は反転上昇を始めました。
2023年はインデックスをメインにしつつ好決算の銘柄を一部組み込むことを実践しました。個別株集中投資をしていた頃とは一転、安定的にジリジリと資産は増えていきました。2020年秋にやらかしてから、3年半弱で+75%となりました。特に弱気相場となった2022年は大幅にインデックスをアウトパフォームしました。運が良かったです。
手っ取り早く儲けられることを夢見て投資の世界に足を踏み入れましたが、結局は地道な工夫を積み重ねるしか方法はないのだなと思い知らされました。
では、投資は嫌いになったかと言えば全然そうではありません。非常に面白い深みのある営みだと思います。毎日考えていても全然飽きません。どうやら、まだまだ懲りていないようです。