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【米国株】シラーPER

S&P500のシラーPERとは

シラーPER(Shiller Price-to-Earnings Ratio)またはCAPEレシオ(Cyclically Adjusted Price-to-Earnings Ratio)は、ノーベル経済学賞受賞者であるロバート・シラー教授が提唱した、株式市場の長期的な評価指標です。この指標は、S&P500に採用されている企業の株価が、過去10年間の平均的な実質利益(インフレ調整後の一株当たり利益)と比べてどれだけ割高または割安であるかを示します。


一般的なPER(5年平均PER、10年平均PERなど)ではなく、シラーPERに注目する意義は、「景気循環の影響」と「長期的な視点」にあります。

1. 景気循環の影響を排除

通常のPERは、当期または来期の予想利益を用いるため、景気循環の影響を大きく受けます。好景気であれば利益が水膨れしPERは低くなり、不景気ではその逆になるため、短期的な視点での判断になりがちです。具体的に、2020年のコロナ禍では企業のEPSは減少しましたが、株価は金融緩和で上昇しました。この時期、PERは上昇しました。これは長期的な米国株のPERを測るにはノイズといえます。

一方、シラーPERは過去10年間のインフレ調整済み利益を用いるため、景気循環の波を平均化し、より本質的な企業価値を反映できると考えられています。

2. 長期的な視点での評価

株式投資は短期的な値動きにとらわれず、長期的な視点で企業の成長を信じて投資することが重要です。シラーPERは、長期的な収益性を加味することで、より安定した企業価値の評価を可能にし、長期投資に適した判断材料となります。

シラーPERに注目する意義は、短期的なノイズを取り除き、より本質的な企業価値に基づいた長期投資を行うためと言えるでしょう。


計算方法

シラーPERは以下の式で計算されます:

シラーPER = 現在のS&P500指数 ÷ 過去10年間のインフレ調整済み平均一株当たり利益
  • 過去10年間の平均利益を使用する理由:

    • 景気循環や一時的な利益変動の影響を平滑化し、長期的な企業の収益力をより正確に反映するため。

  • インフレ調整を行う理由:

    • 物価変動の影響を排除し、異なる時期のデータを比較可能にするため。


シラーPERの解釈

  • 高いシラーPER(例えば25以上)

    • 株価が過大評価されている可能性があり、将来的に株価が下落するリスクを示唆します。

  • 低いシラーPER(例えば20以下)

    • 株価が過小評価されている可能性があり、将来的に株価が上昇する潜在性を示唆します。

一般的な目安:

  • 20以下:割安

  • 20~25:適正水準

  • 25以上:割高

  • 30以上:バブル的な水準

https://www.multpl.com/shiller-pe

2024年12月現在のS&P500のシラーPERは38.86であり、バブル的水準です。また、2000年のITバブル終盤を除いて過去最も高い位置にあります。今、米国はAIブームに湧いており、その点ではITバブル期と似ています。しかし、GAFAMやNVDAの決算からは、ブームの勢いが無くなりつつあることが読み取れます。高いバリュエーションを肯定する材料が、その力を失いつつあるのです。米国株はまだ上値余地がある可能性もありますが、大局的にはAIバブルの終盤に差し掛かっていると判断すべきでしょう。投資家は浮かれるのではなく警戒心を持つべきだと考えます。


注意点

  • シラーPERは長期的な投資判断のための指標であり、短期的な市場の動きを予測するものではありません。

  • 経済状況、金利動向、企業の成長性など、他の経済指標や市場要因と併せて総合的に分析することが重要です。

  • 過去のデータに基づく指標であるため、経済構造の変化や市場環境の違いにより、過去の基準が現在に当てはまらない場合もあります。


まとめ

S&P500のシラーPERは、市場全体の株価が企業の実質的な収益能力に対してどの程度の水準にあるかを判断するための有用な指標です。投資家やアナリストは、この指標を活用して市場の長期的な割高・割安を評価し、潜在的なリスクや投資機会を検討します。ただし、シラーPERはあくまで一つの指標であり、最終的な投資判断には他の情報も考慮することが不可欠です。

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