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【米政治】トランプ大統領はFRB議長を解任できるのか
米国におけるFRB議長の任命と解任に関する法的枠組みは以下のようになっています。
【任命権】
連邦準備制度法(FRB法)において、大統領はFRB議長を指名する権限を持つが、その指名には上院の承認(助言と同意)が必要となる。議長の任期は4年で再任可能だが、FRB理事としての14年任期の範囲内でのみ議長職を務めることができる。
【解任条件】
大統領は自由にFRB議長を解任することはできない。連邦準備制度法では、「正当な理由(for cause)」がある場合にのみ解任が可能と定められている。「正当な理由」には重大な不正行為、職務怠慢、能力の欠如などが該当する。単なる政策の不一致や個人的・政治的な理由での解任は認められていない。この規定は、金融政策の独立性を確保し、政治的圧力からFRBを保護する重要な役割を果たしている。
【解任手続きと抵抗手段】
大統領がFRB議長を解任しようとする場合、書面による解任通知と「正当な理由」の明示が必要で、議会への報告も求められる。これに対してFRB議長は、以下の抵抗手段を取ることができる:
法的異議申し立て:連邦裁判所への提訴により「正当な理由」の妥当性を争うことができる
議会の支持取り付け:上院銀行委員会での証言や議会メンバーへの働きかけ
パブリックアピール:メディアを通じた説明や公開声明の発表
この法的枠組みの重要な法的根拠として、Humphrey's Executor v. United States (1935)判決がある。この判決は、独立規制機関の長の解任には「正当な理由」が必要であり、政策の不一致だけでは解任できないことを確認した。
実際には、解任のハードルは非常に高く、政治的影響も大きいため、これまでにFRB議長が解任された例はありません。この制度は、FRBの独立性を保護し、政治的圧力からの隔離を確保し、金融政策の中立性を維持することを目的としています。
また、FRB議長は理事会メンバーとしての資格で任命され、理事の任期は14年で2年ごとに1人ずつ改選される仕組みとなっています。この長期の任期設定も、FRBの独立性を保護する重要な要素となってます。
結論としては、法的にトランプ大統領はパウエルFRB議長を解任することはできません。仮に、この件で相場が荒れたとしても短期的なものに留まるでしょう。