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【初心者】前澤氏が立ち上げるカブアンドについて私見

衣料品通販大手「ZOZO」創業者で実業家・前澤友作氏が生活インフラサービスを提供する「カブアンド」を立ち上げたことが一部ネットで話題となっています。

カブアンドは、電気・ガス・モバイル通信・ネット回線・ウォーターサーバー・ふるさと納税を手掛けます。他社と異なる点は、利用特典としてカブアンドの未公開株式を提供するという独自の還元サービスです。

よくあるポイント還元と違って、株式であれば価値が変動します。カブアンドの利用者が増え、売上・利益が増えて企業価値が上がれば株価も上がるという構造です。

同サービスの特徴として「自分が利用して会社を応援することで、会社が成長して株の価値が上がるかもしれない。すると、自分が持っている株の価値も上がる。利用が応援になって、結果お得になるかもしれない、そんな仕組み」と前澤氏は説明しています。

こちらのインタビューでは「あえて差別化のないサービス領域を選んだ」と説明がありました。

つまり、利用者の期待、利用者が感じる価値の中身とは、「このサービスは他社と何ら変わらないものだけれども、このサービスを使い続けることで沢山の株式を貰うことができる。株価が上がれば儲けが出るかもしれない。」というものでしょう。

僕の関心は、利用料金はどうなのか、それらが他社よりも割高であった場合、その差額以上に分配される株式が利益を生む確率は高いのか、です。

既存のサービスと変わらない場合、消費者は価格を最も重視すると思います。特に近年は物価高によって収入における支出に割合が増えてきています。節約できるところはなるべく節約したいという思いは強まっていると考えます。価格が少しでも割高ならば、株式で儲かるという期待がなければ選ばないでしょう。

日本の株式保有率は25%弱です。まだまだ投資という行為への警戒感は高いです。そのような状況において、多くの人が未公開株への儲けの期待を持つとは考えにくいです。ましてや価格が仮に他社よりも割高となるならば尚更でしょう。利用者は前澤氏の考えに共感する一部のファンに留まるのではないでしょうか。であるならば、未公開株の儲けも程度がしれていると考えます。つまり、株による利益には期待できない。結局はサービス価格次第。価格が他社よりも安ければ利用を検討するということです。

そもそも、投資の利益の源泉は皆んなが知らないことをいち早く自分は知っていること、だと僕は考えており、このようなサービス提供者側から話が来るものに美味しい案件はないのではと考えます。

【追記:2024年11月20日】
カブアンドのサービスが開始されました。各種サービスの料金も発表されました。案の定、僕が現在利用しているものよりも割高でした。なのでカブアンドは使いません。

カブアンドを使うかどうかの判断は、既存のサービスよりも割高なサービス料金、その割高分の損を補って余りあるほどの利益を未公開株によって得られるかの判断です。僕はそんな利益を得られる可能性は限りなく低いと考えています。

まず配分される株式は未公開株です。これは会社が上場しなければ売却して現金化することはできません。つまり、会社が上場できなければ紙クズ同然です。全損になります。そして会社が上場できるかどうかは分かりません。この未公開株特有のリスクがあることがひとつ。

仮に上場できたとしても株価が上がっていくのかは分かりません。カブアンドの価値は「未公開株で儲けられるかもという期待感」であり、他は同業他社と差がありません。

日本の場合、iDeCoやNISAといった投資が普及してきましたが、いまだに投資への根強い警戒感・忌避感・無関心があります。NISAなどより遥かにハイリスクな未公開株に多くの人々が群がることは想像しにくいです。利用者は前澤氏のファン以上には広がらないと思います。利用者が増えず、業績が上がらなければ株価もなかなか上がりません。株価が上がらないのに割高なサービスを使い続けるのか?といった疑問をもつ人たちが出てくることは想像に難くありません。全然儲からない!といった声が広がれば、会社への期待感は一気に萎むでしょう。儲かるかもしれないという期待感が全ての会社ですから、そういった事態は即、死活問題となります。

そういったリスクに加えて株の希釈化という問題があります。増資によって発行株数を増やして顧客に株を配り続けるので、顧客が増えるほどに一株あたりの価値は薄まっていきます。これは株価の下押し圧力になります。月額500円を支払えば配分される株数が2倍になるという特典もあり、これは希釈化を加速させると思います。

また上場した株式にはロックアップといって、上場後一定期間(6ヶ月が多い)既存の株主が株を売却できない規定があり、カブアンドの株主にも何らかの規制がかけられると思います。つまり、上場してもすぐに株を売り抜けることができない可能性があるのです。

カブアンドに興味を持っている人たち、彼らの関心は「未公開株が上場した時、何倍にも株価が上がるかも」というものです。しかし、上場後には未公開株は公開株となりますので、上記の魅力はなくなります。その魅力がなくなればカブアンドはただの割高なインフラサービスを提供する企業になります。そういった企業の株価が上場後も右肩上がりで上がっていくかは疑問です。ロックアップで株を売れないので、上場後に株価が下がっていくのを指を咥えて見ているだけとなる可能性があるのです。

つまり上場できないで全損になるリスク、上場できたとしても顧客が頭打ちになって株価が上がらないリスク、株の希釈化によって株価が上がらないリスク、上場後に「未公開株が上場直後に暴騰するかも」という魅力がなくなり株価が低迷するリスク、ロックアップで上場後にすぐに売り抜けられないリスク、それらリスクが現実のものになる可能性を考えたときに、儲けが出る可能性が高いとは思えません。

既存の安いサービスを使って、浮いたお金をiDeCo・NISAの積立投資に回した方が無難だと僕は思います。

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