初めての理学療法研究 小さな病院から学会発表に至るまでのサクセスストーリー
目次
1)はじめに
2)研究を始めよう:勉強会開催~研究計画の立案
3)データを取り始めよう
4)いざ学会発表へ
5)今後の展望
1)はじめに
自己紹介
はじめまして。臨床経験9年目の理学療法士ゆうきです。私が勤務しているのは理学療法士10人以下の小さな急性期病院です。日々、臨床業務に追われている中、何か新しい取り組みをしたいと思うようになり、3年程前から臨床研究を始めました。
私の勤める病院では過去に研究の経験があるスタッフなどおらず、完全に一から研究の方法を勉強しながら試行錯誤を行い、学会発表ができるレベルまでになりました。そこでの経験をここではお伝えできればと思っています。
研究をはじめたきっかけ
とある患者さんを治療中、ふと「なんでこんなに毎日毎日コケて骨折する人がいるんだ」と疑問に思いました。リハビリをして回復する人がいる中、骨折をして入院する人がいる。ずっとずっとこの繰り返し。
自分1人が提供できる理学療法というのは限界があります。そこで、臨床研究を行い、世の中の理学療法士に発信していくことで、さらに素晴らしい理学療法を受け、回復していく患者さんが増えるのではないかと思いました。
2)研究を始めよう:勉強会開催〜研究計画の立案
まずは勉強会を開催して興味をひく
当院には肩専門の整形外科医がいたことで、腱板断裂の術後症例を担当することが多いのですが、どうも術後の再断裂が多いのではないか?という疑問を持ちました。そこで勉強会を開催して、みんなに伝えることにしました。
そこで、意識したのは自分の担当患者さんだけではなく全スタッフの患者さんのカルテを調査し、具体的な数字と論文などの数字を比較した数値を提示してみました。
多くの理学療法士は目の前の患者さんの評価を捉えることは得意であるが、全体の傾向などを客観的に評価するスキルは乏しい。
とりあえず、自分の担当患者さんで傾向を捉える
実際に自分の担当している患者さんで経過良好例と再断裂例で、どのような特徴があるのか調査しました。カルテから調べて平均値などを並べただけの簡単なデータなのでそんなに時間はかからずにまとめることが出来ました。
研究計画をたてる
ここではじめて正式な研究計画をたてます。研究計画書を作る簡単な流れは、テーマ→背景→目的→調査対象および方法→研究の意義→参考文献の順です。(ここはまた詳しく記事を書きたいと思います)
完成した研究計画書を所属長に提出してみて、オッケーがもらえたら倫理審査委員会へ審査の依頼をします。様式はそれぞれ病院によって違うと思うので、所属長に確認してみてください。
私の場合はこの倫理審査をしてもらうのに研究計画書が必要でした。病院によっては倫理審査委員会がないところもあるみたいですが、その時は理学療法士協会や大学機関で審査の代理を行ってくれるみたいです。
3)データを取り始めよう
では、さっそくデータを集めていこう。っといきたいところですが、大前提として研究というのは1人では出来ないということです。データ取りは研究の中で1番大変で、これを1人でするのは不可能です。
なので、みんなの協力を得るために再度勉強会を開催します。ここで、私の場合は整形外科の先生も勉強会に参加してもらえるように声掛けを行いました。ドクターが参加することでスタッフみんなの意識も引き締まりました。
ここで研究計画と進め方、細かな注意点の説明を行います。集めたいデータをひとまとめにした評価表などを作成するとデータの収集が容易となります。
あと、大事なことは目標の設定です。具体的な日時の決まった学会などを目標にあげることでチームの士気を高めることが出来ます。
目標をしっかりとみんなに伝えよう
4)いざ学会発表へ
学会発表には主にポスター発表と口述発表があります。私は両方経験しましたが、それぞれメリットが違います。
ポスター発表のメリットは、聴衆者との距離が近く、ディスカッションを行いやすい。また、仲間を増やしやすいということです。同じ分野の研究をしている人から容易に声をかけられます。名刺など交換を行い、交流を持つことが出来ることが最大のメリットです。
また、口述発表のメリットは、自分の成果をよりたくさんの人に伝えることが出来るということです。質疑応答でも、大学関係者などからの質問もあり、より専門性の高い討論が出来ることがメリットです。
私の場合は、どうせならレベルの高いところで発表したいと考えて、いきなり日本運動器理学療法学会で発表を行いましたが、まずは手慣らしに都道府県が主催のPT学会から発表する方が多いみたいです。
5)今後の展望
研究というものが全くわからない状態からはじめて、ようやく学会発表まですることが出来ました。
しかし、学会発表というのはまだまだ登竜門にしかすぎず、これを論文化してこそ世に発信ができたということになります。
もっといえば、日本語論文よりも英語論文にこだわっていかなくてはいけないと思っています。なぜならば、英語とは世界共通言語であり、日本人の人口は1億3千万人、世界の人口は77億人です。
英語論文1本=日本語論文約60本
この数字をみると世界共通言語の英語とはすごいと感じると思います。
今後の目標は
・英語論文を書く
・2023年、世界理学療法学会(WCPT)で
発表する
この目標を達成し、小さな病院から世界に発信していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございます。これから研究を始める方や現在研究をされて悩んでいる方など私の経験が少しでも皆様のお役に立てれば嬉しいです。
皆様からのコメントやご質問など気軽によろしくお願いします。