一般人アートバーゼルへ行く■3日目②アートバーゼル一般公開、ライン川と大聖堂と市庁舎(市内観光)
さて、バイエラー財団美術館でおいしい空気を吸った後、トラムで市街地に引き返してもう一度アートバーゼル会場に向かう。
案内人が「昨日出したメールがなんかうまく届かないから、もう一回あって挨拶だけしてくる。10分程度なので待っててもらってもいいですよ」というので、せっかくなら初日の様子もみたいから会場を一周しようということになった。
なんのために来たのかって、この会場に入り込むために来たのだから、何度でもチャンスがあれば行きます。
二日目、正確には一般公開初日は、ちょっと昨日より混んでいた。
もう少し言うと、なんとなく昨日よりカジュアルな雰囲気があった。
そういうと、案内人は「ああ、そうかもですね」と今までそんなこと考えたこともなかったみたいなリアクションをしていた。
お仕事としては、買う気のない一般客には興味がないのは当然だ。文字通り客じゃないわけだから。
しかし、観る専の、所有なき鑑賞者がどれだけ多いかでも絵画の価値って値段が吊り上がっていくものだし、そういうの大事なような気もする。
ただ、ここまで極端な金額のアートフェアではただ見るだけの人たちはちょっと居場所がないというか、おさまりが悪い気もした。
まあまあ、見せてあげるよ君たちにも、みたいな。(じゃあなんで集まって展示してるのかな、という疑問もちょっとだけ感じた。なんかうまみがあるんだろうけれど)
ただ見るだけの人。
オーディエンス?スペクテイター?
なんていうんだろう。アプリシエイトだっけ。
というか、普通に「ただ見るだけの人(所有しない)」という枠に名前を付けなくてはいけない日がくるとは思わなかった。
私は個人的には「アートのガヤ」と言ってる。
買いもしないで、作品を見てはああだこうだいうガヤ。
「観る」側にも階層があり、「作る」側にも熾烈な何かがある。
その最も限られた(トップレベルという言い方が適切かどうかは、正直わからなかった)序列の表面の前を、ただ歩いている。
ヘンな気分だ。
序列があるのがいいのか、ない方がいいのか、全員が平等であるべきなのか、平等とはどういうことか、みたいなことを一度に考えなくてはいけない。アートそのもの以外に。
ここは「世界のほとんどをつまはじきにした後に残ったものたち」でもある。トップクラスというのはそういう側面があるよね。
まあ、アートバーゼルで見たものの感想は別に書こうと思います。
案内人は「いいカンデンスキーだった、ギャラリーも好感触だった」とご満悦な感じで、案件の額が大きいからわざわざスイスまで飛行機に乗ってきても大体ペイできてしまうらしい。
「だから、全然無関係の人が、自腹切って見に来るのは相当です」
………そうね、無関係の人が自腹切って見に来ちゃったね!
スイスで切腹するとは思わなかった。
世界の人は日本人は何回も切腹できると思っているらしいよ。今回は金銭的な切腹だから、まだギリなんとか。内臓は破損してないです。
バイエラーで見たバスキアは人生後半戦でトップ3入りするくらい最高においしい空気だったけど、それだけではまだペイできない。
それよりとりあえず、バーゼル観光2日目その2。
なんとかかけた金の分くらいは取り返したい。
さすがにお腹が空いたので、なにか食べましょうということでトラムに乗り、有名な建物である市庁舎まで行く。
そこの広場でマーケットが出ているらしい。でもついた頃にはどこも店じまいという感じだった。
市庁舎は、教会とは違う雰囲気だった。なんでも「ヨーロッパ風の建物」に見えなくはないんだけど(解像度低いから)、城と教会の違いはその場に立つと全然違う。
赤砂岩の色合いや、その時代の精一杯のけばけばしい色の付け方をしていて、だいぶ楽しかった。
ちょっとアジア系の寺などの朱塗り感と似ている感じがあった。弁柄色。
どうしても知っている感じでしか説明できないね!
ひと通りみて、近くに何かないかとパン屋を探し、相変わらず「シンプルなサンドイッチがいい」と言って今回はパストラミサンドにしました。
パンがもちもち系で、でもあんまり日本では出会わない味。
フランスパンより身が詰まっていて、表面はぱさぱさと粉がかけられ、あっさりしているのにもちもちしている。日本人好みの味のパンだなと思ったけど、日本ではきっと目立たないんだろう。あまり見かけないなと思った。
「こっちは小麦もおいしいですしね」と案内人。
パン、ハム、チーズ、乳製品!
ジャガイモ尽くしより、こっちの方が好みに合います。
もうずっと毎日サンドイッチ食べてましたね。
全部味が違うので、どれも良かったです。
途中でビタミンが足りなくて口内炎が出そうになったので、慌ててビタミン剤を飲んだ。旅行にマルチビタミン系サプリは必携です。
サンドイッチを食べ、次の場所へ。
日本で準備中にバーゼルで何をしたいかと言われた時、最初にライン川を渡りたいと答えた。
ライン川、世界史の教科書に出てくる川。
はじめてバーゼルに電車がついてトラムに乗り換えた時に、一度渡っている。
その後も移動する時には大体川を渡る。
ライン川がバーゼル市の真ん中にあるからだ。
せっかくなので川沿いまで行く。
私がはしゃいでライン川の写真を友達に送ったら「これはラピュタは本当にあったんだのノリ」と返事が返ってきた。
ライン川は本当にあったんだ!教科書は嘘じゃなかった!
川を渡る渡し船もあるし、遊覧船みたいなのもあるんだけど、なんか普通に人が流れていた!!
フランス在住経験の長い案内人が「えっ、まだ6月じゃ水冷たいよ!絶対冷たいよ!」と言っていたけど、しばらくして「まあやつら体温高いからな…」と勝手に納得していた。
なんか、海水浴みたいな雰囲気で、みんなそこからそこまでという感じで流れていく。泳ぐというか、流れていく。
キャッキャしていて、楽しそうだった。
スイス……海ないもんね。
元海なし県出身者として、なんか、そうだよねーって、そうなるよねーって気持ちになる。
それで、山でスキーとかでしょ。うちのほうもそうだったから、規模と歴史は違うんだけど、わからなくはない。日本アルプスの肌感覚。(日本アルプス側でもなかったけど)
ライン川沿いの坂道(南岸側)は旧市街地に当たるらしく、古い家と街並みと道という感じだった。
そこをのぼっていくと、バーゼル大聖堂がある。
大聖堂の前の広場にもアートバーゼルの一環で謎の藁人形みたいなのがいっぱい置いてあった。
その横を、自動車がスーッと通っていく。
それを見て「わーー、本当にここ自動車が通るんだ!広場じゃなくて道なの!?」「なんかアニメのルパン三世か、なにかジブリだったかで見た気がする!!」「やだ、私ヨーロッパにいる!!」とやたら感激する私。
大きな教会とその前の広場、人がルールなく自由に歩いていて、そこを自動車が通っていく。
きっと昔は馬車だったのかな。
案内人が「自動車は……普通に通りますね」といって、私が何に感動しているか全くわかっていないようでしたが!
だって私は、ヨーロッパは一生架空の存在として人生を終える可能性があったのだ。
映画や、ディズニーなどテーマパークで再現されたものか(ちょうど同じタイミングでオランダについた友達からは「こっちは全面ハウステンボス」というメッセージがきていた)、子供の頃に読んだケストナーやクリスティの情報でしか存在しないのだ。
ロアルド・ダールも大好きですごく読んだけど、街の印象はあまり多くなかった。ケストナーの「エーミールと探偵たち」とかは街の雰囲気がたくさんあった気がする。
ただ知っていることと、その場に行ったことがあること。
その違いは、大きな意味を持つ人もいれば別にそうでもない人もいる。
私は、思い返せばスイス滞在はあっという間でよくわからない感じだったけど、知っているものがあったことがちょっとだけ嬉しかったし、この情報を日本語という全く共通項が見いだせない言語に落とし込んで、この文化を知らない人間たちに何とか伝えようとした先人たちの努力にマジ感謝でリリックのひとつも出てきそうだった。
突然のヒップホップ。
あなた方のおかげで、私の中にヨーロッパが存在します。
ヨーロッパの街並みの再現とか、日本人すごい頑張ったと思うし、再現度も立派なものじゃないですか?本場とは違うっていうかもだけど、杜撰な日本の街の再現をした外国のテーマパークよりだいぶちゃんとしてる気がするんだけど、それは贔屓目だろうか。(ただ、微妙に様式が違うとかはあると思う……日本風と中国風がごっちゃになってるとかそういう感じで……そう考えると贔屓目かもしれん)
さて、教会は赤レンガ…ではなく、赤い砂岩で出来ているそうです。さっきの市庁舎と同じ。
もっとお写真&動画取ったのだけど、とりあえずレポートは記憶の新しいうちに出力しているので、そういうのは後回しです。
ズシッとした空気で、古い時代のフレスコ画なども残っている。もともとロマネスク様式で建てていたけど、途中で地震などもあって作り直し、さらに増築という形でゴシック様式に成長し、長い時間をかけて今のかたちになったらしい。
そりゃそうだよね、重機もないのにこんな大聖堂を建てたのだから、少しずつ作るしかないよね。
当たり前なんだけど、そういうことを考えたりしなかった。
生まれた時からあるものは、どういう時間と政治があって作られたのかなんて、知ろうとしなければ一生知らないし、それで困ることもない。知ったからって何か良いことが増えるわけでもない。
ただ、この知ったからいい事があるかどうか問題、現場に行ったほうがいいのか問題は、この後チューリッヒに戻って、私の中で一応の決着がつくことになる。
それはまたあとで。
3日目、ここで終わりかと思いきや、さらにバーゼル市立美術館という大物が待っています。
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つよく生きていきたい。