やりたいことでお金をもらうと心が折れやすい
やりたいことで起業してお金を得て生活するのは、心が弱い人には向いていない。特に自分が事業主になるともうぼこぼこになる。
雇われてやっているうちはまだいい。心を逃がす道がある。でも、大抵の人が起業するとなると、事業主に自らがなる事が多い。
そして、悲しい事になる。
どうして好きなこと・やりたいことでお金を得ると心が折れるかというと、いろんな理由があるし、聞いたこともあると思う。
その前に、大体なんでやりたい事で起業しようと思ったのか、ということだ。
そりゃ好きなことややりたいことをやっているだけでお金が入ってきたら最高だ。
でも、お金が入ってくるということは、好き嫌いとはまったく別の回路で動いている。ということを、もう一度冷静に見直さなくてはいけないと思う。
好きな事をして、お金をもらうということの一番わかりやすい例は、路上シンガーを想像してもらうといい気がする。
好きだから歌う。
下手くそな歌を。
それでお金がもらえるか?
じゃあ上手くなれば、お金がもらえる?
上手くても騒音は騒音だ。道端でオペラのアリアを延々と歌われたら通報したくもなる。
逆に、好きな事をしてお金が入ってこなかったらどうなるだろう。
それで生きていく事ができなくなったら、好きなことなのに自分を活かしてくれなかったその好きな事を嫌いになるのはわかる。
それでも好きだから、スキということとお金ということを切り分けて考える事になるかもしれない。
だけど好きな事をやるほど生活に余裕がなかったら、やはり好きな事ができなくなって、やっぱり好きな事で稼いで生活するのが一番じゃないかと思う流れもあるあるだと思う。
お金と、好きな事は、両方快感につながるファクターかもしれないけど、それぞれは別のものだということが肚落ちしていないと、人はすごく混乱するのだと思う。
もっというと、お金と、人気や人望や有名になる事、好きな事をしていること、傑作を作ること、幸せを感じる事は、どれも別の事だと思う。
これらが微妙にかぶっている時代がしばらく続いていたから、一緒くたになってしまって、本当に自分が何を求めているのかわからなくなっている人はとても多い。
好きなことと、お金は、その中でもわかりやすいし、切実なものだからとても多くの人が迷っていると思う。
その次に「有名になりたい」「人気が欲しい」というのも同じくらいあると思う。
有名人になればお金が入ってきて幸せになれる、とか、いい仕事をしたらお金が入ってきて生活が安定する、とか。どれも全部つながってないんだけど、つながっているイメージがある。
これらは、相互作用はあるけれど、それぞれが別のものなのだ。
だけど、人間の頭の中では、快感とか、よいことというクラスタとしてまとめて処理されている向きがある。
でも現実は全然違う。有名でもお金がないとか、お金があっても好きな事ができないとか、普通に山ほどある。
歌がうまくても金持ちにはなれない。
「好きな事をしてお金を稼ぐ」ということを盲信している時は、その違いがわからないし、わかったらがっかりしてしまうので、現実を教えてくれる情報をミュートする。
でも実際に好きなことでお金をもらうようになってしまったら、それをミュートすることはできなくなって、すごく心が折れる場面がくると思う。
それが、普通の、人間らしい心だと思う。
そこで、心が折れようが好きな事を突き進めるというほどの狂気か、心を守りつつ好きな事をするクオリティを実現できるよう「相手」とネゴシエーションできる技術か、その両方かを手に入れていく事が多い感じがある。
人の事の心の内側まではっきりとわかるわけではないけれど、そういう人ばかりが生き残っている肌感覚はすごくある。
心は、折れてもいいのだと思う。
好きな事をやってお金を得て、それらにまつわる事で少しずつ心が折れていったとしても、悪い事ではないと思う。
じゃあなんでそんな事をわざわざ書くのかというと、「好きな事をやってお金を得たら幸せになれるはずだったのになんか苦しいぞ!」という現実にぶつかった人たちの為に、「それは当たり前だよ!」といってあげたいなという気持ちからだ。
心が折れることは、たいしたことではない。
お金を得ることと、好きな事は、まったく違うことだ。同じ「なんかいいこと」「快感があること」と考えているから余計苦しむのだ。そして好きな事でお金が稼げずに生活苦に追いやられていく様もなかなか恐ろしいものがある。
どちらの事に対しても冷静な視点を持っている人でさえ、両方が合わさった時に冷静さを失うレベルの恐怖やストレスが発生する。そして必要以上に大きなダメージを受ける。
いいかい、そうじゃないんだよ。
お金はお金、好きな事は好きなこと、めんどくさい事はそれらをかけ合わせたらたくさん出てくるに決まっている。粛々と対処するしかない。その途中で心が折れたとしても、それとこれとは別問題だし、心が折れても仕事はできる。
立ち直れないほどの強烈なストレスはだめですけどね。
事故とか犯罪、戦争に巻き込まれたような悲惨なプレッシャーにさらされてしまうのは、どう考えても無理だと思うけど、でも自分を大事にし過ぎるのも苦しみを産む。
好きなことで金を得ようということを、もう少しちゃんと因数分解してほしい。金と好きなことは、まとめてひとつの式にするには、いくつかの段階と構造をちゃんと持っていないとダメだってことです。
金が欲しいなら、別に好きな事でなくても金になる事をしたらいい。
好きな事をしたいなら、そのために金回りをきちんと整えるというのも大事。
人気を得るために金を使うという手もあるだろう。
どれも重なっているけれど、それぞれは別の事だ。
まとめて考えると、幻想が踏みにじられ心が折れる。
だから、よく考え、少々傷つきながらも、本当に目指しているものを見つけ出すんだ。
話はそれからだ。
でも、そこまで来れる人は実際本当に少ないらしい。起業しますといっても全然やらない人たちがざらにいる話を思い出すまでもない。
だから、やろうと思ってやって、実際に傷つく経験がある程度にはお金を得た人は、それなりに動かす力がある人なのだ。
だから、その先にも、きっと行けるだろう。
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