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AI: ソムニウム ファイルが面白かった件 (ネタバレ無し)

少し前にスイッチでセールしてたので買ったのだけど、予想以上に面白かったのでレビューを簡単に書いておきたいと思った。

ちなみに現在もセールで50%オフになっているので(スイッチのストアで確認済み)気になる方はそちらで買われるのがお得かもしれない。


はじめに

まずゲームのジャンルはADV、いわゆるテキストアドベンチャーとかヴィジュアルノベルとか呼ばれるもので基本的にはお話を聞きながら物語を進めていく。ストーリーのジャンルはミステリーないしSF色が強くレーティングはZ(18歳以上)なのでところどころ間接的な残酷描写はあるが18禁は少し厳しすぎる気がした。15歳以上推奨くらいの印象。だからといって内容が「浅い」わけではない。

ゲームはポイントクリックで進めていく捜査パートとパズル的な要素を含んだソムニウムパートとがあって、順番にこなしていくことになる。分岐はソムニウムパートで発生しマルチエンディングだが、エンディングを複数見ることでロックが外れるルートがあり、道なりは色々あれど最後に辿りつくエンドは多分同じ。

良かった点① 捜査パートが良かった

これは本当によかったのだけれども捜査パートがとても良かった。ポイントクリックというのは、このゲームでは大体一枚絵の背景に登場人物が1~3人くらいいて、登場人物に聞き込みor質問をしたり、背景にある椅子なんかをクリックすると「これは椅子だ」のような反応がある。

それのいったい何が良いのかという話なんだけど「クリックできるポイントがとても多く」さらに「リアクションのバリエーションが豊富」と言うことが挙げられる。例えば椅子をクリックすると実際には「これは椅子だ」では終わらず連れ立って行動している人物と椅子漫談を始めたりする。この種類がとても豊富で連れている登場人物によったり、その場所に訪れる時間によってリアクションがいちいち変わっていくのがとてもエキサイティングで僕は結局捜査パートはすべてのクリックできるポイントをクリックして話を進めていた。もちろん実際そこまでする必要はないが。

それの何が面白いかと言うと、まずそのリアクションの多さからクリックのしがいがあること。また何かしらの背景をクリックしてそれについての登場人物同士の掛け合いや主人公の(たまに)まじめな考察などがストーリーテリングの手法としてとても優れていると感じた。
というのもADVというのはどうしても登場人物の語りや、説明描写などで必要な情報すべてを語ることになりがちなのだけど、このようにプレイヤーに選択の余地が与えられて、プレイヤーの意志で何かしらのヒントを探して、(たとえギャグのような話だったとしても)その探索にちゃんとリアクションが用意され、そこから登場人物と主人公の関係性や、絆の深まり、或いは重要なカギを入手することは、ただただお話を聞かされるよりもとてもやりがいがある。能動的にゲームしてる気になれる。
大袈裟にいうならばウィッチャー3とかの大作タイトルで深淵なるサブクエストをこなしているうちに世界に対する没入を深めていくように。「やるかやらないかはプレイヤー次第」の状況で背景の椅子をクリックすることに何だかとても重大な意義を感じることが出来る。

良かった点② ソムニウムパートもそこそこ良かった

ソムニウムパートは捜査対象の人物の夢の中にもぐりこんで深層意識のなかに埋没したヒントを探るパズルパートである。(今敏のパプリカみたいだ)ただパズルパートそのものがめちゃくちゃ面白いかと言われるとそう言うわけではないのだが、このソムニウムパートの解き方いかんでその後の物語が分岐する。当然ADVなので物語は分岐するのだがパズルの解き方で分岐が決まるのでパズルがただの消化試合になることなく、それなりに楽しむことが出来る。また当然夢の中の、人間の隠したい記憶なども関わってくるのでその夢の中での事象はとても切羽詰まっていたり、シリアスだったりえぐかったり、なかなかに退屈できないつくりになっていたと思う。

良かった点③ 登場人物が全員良い

ジャケットに女性が二人映っていると思うのだけど、それ以外にも重要な登場人物が何人かおり、それぞれ固有のエンドがある。その一つ一つが全部「捨てエンド」な感じは無くて、ちゃんと一人一人に感情移入できた。衝撃的な展開を書いてびっくりさせる! って感じじゃなくて、登場人物ひとりひとりをちゃんと掘り下げて描く、という姿勢がとても誠実に思えたしそれが功を奏していたと思う。

良かった点4 シナリオが良い

シナリオ及びディレクターはあの「EVER17」を書いた打越鋼太郎さん。ギャグ多めなテキストなんだけど締めるところは締めていて、エモいところをありきたりなクサい話にしないで書ける人。そして最も重要な点として、怒涛の伏線回収が気持ち良い。これに関しては詳しくは書かないけど是非やってみてほしい。

賛否ありそうな点

たとえば敵を倒すときに「エロ本を投げて敵を一か所に集めて倒す」みたいなのがある。僕はそういう「どうとでも書けるところは適当でいい」派の人間なので全然気にならないけど、そういうところにもリアルを要求する人は引っかかるところはあるかもしれない。

あと、やっぱギャグは多めだし、「お約束」的なテキストも結構ある。そこを「登場人物との関係性を垣間見る一場面」と捉えて読むと楽しいけど、「ただ読まされている」と感じたらあまり楽しめないかもしれない。
僕のように捜査パートで全ての会話が気になって全部のオブジェクトをクリックしたような人間は間違いなく楽しめてる。そういう意味では、ソムニウムパートを含めすこし能動的にゲームに参加する必要がある。


とまぁ色々書きましたがセールの値段で買ったのもあってかかなり楽しめた作品でした。ADVは好きだけど、骨太な感じのするやつなんかないかなって探してた人はかなり楽しめるんじゃないか? と思います。

もしよかったらもう一つ読んで行ってください。