ありがとう
日曜日のお昼、カフェで銀のスプーンを目にして、
ふと、学校で習った歴史の授業のことを急に思い出した。
2000年前の「お金」は実際に紙や銀などの素材で作られていた。
お金の価値も相対的な要素で決められており、同じ紙1枚でも日々価値は変動していた。
そして、そのお金は世界人口の1%の富裕層だけで約40%を保有し、下位50%で全体資産の2%を保有していたらしい。
その経済格差時代の真っ只中での下位50%の人々の暮らしは、労働の対価としてお金を得るという方法が主流だった。それも満足に得られずに生活もままらない人が多くいたようだ。当時も「貧困問題」として偉い人たちが問題改善に取り組んでいたらしいが、一向に改善することはなく、経済格差時代はその後800年も続いたようだ。
店員「お待たせしました」
目の前のテーブルに置かれた「オムライス」があまりに美味しそうで、思わず顔がほころんでしまう。このオムライスも2000年以上前からある歴史的な食べ物だが、これだけは普遍的な、その価値でずっと生き残っている。2000年前の人に感謝である。
私「ありがとうございます」 (チャリーン)
私が2000年前に生まれていれば、確実に下位50%に分類されていただろうな。そんなことを考えながら頬張っていると、さっきまでの美味しそうなオムライスが一瞬で姿を消してしまった。
私「美味しかったです、ごちそう様でした」
店員「ありがとうございました」 (チャリーン)
お店を出だところで、おばあさんが杖を落としたのが目に入った。
反射的に拾って渡してあげる。
おばあさん「親切にありがとう」 (チャリーン)
私「とんでもないですよ」
今の時代のお金は「ありがとう」だ。
生まれてすぐに全員が血液を採取されて、国の厳重な施設でその血液は保管される。ありがとうと感謝の言葉を口にしたときにだけ分泌される成分が検出されて、その検出量が自分のお金となる。
つまり「ありがとう」と言えば、どんどんお金が増えるのだ。でも、ただ「ありがとう」と文字の羅列を口にしたとしても、成分が分泌がされないので、本当に感謝の気持ちがないとお金は増えないようになっている。
世界中の人が平等に与えられた素晴らしい収入方法だ。
この価値観を導入にするには、また壮絶な歴史があったようだ。かつての富裕層が大反対して反乱を起こしたとかなんとか。このあたりの時代の記録はあまり残っていないため、ほとんどは都市伝説的のような話になってしまう。
ただ、活躍した革命家の5名は全人類が名前を知っているほどの偉人だ。
街の子供「ありがとう」 (チャリーン)
街の男性「ありがとう」 (チャリーン)
街の女性「ありがとう」 (チャリーン)
この世界は「ありがとう」にありふれている。
あの時代とは違い、全世界誰もが平等にお金が得られる。
そして、皆同じように豊かで穏やかな暮らしをしている。
この時代に生まれたことに、本当に幸せを感じる。
あの時代にもきっと「ありがとう」がたくさんあったはずだ。
その価値が紙幣や硬貨よりも、よっぽど大事なことに、きっと目をつぶっていただけで・・・
私「この素晴らしい世界に感謝だ。ありがとう」 (チャリーン)