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猫で一句

のら猫が多い地域に住んでいる。数年前に引っ越してきてきた日から、とにかくのら猫に悩まされている。家の周りをウロチョロされるだけならべつにいいが、フン害がえげつないのだ。ハーブを植えてみたり、木酢を撒いてみたりしたが、どれも大して効果はなかった。2,500円で購入した猫除けライトの前で、人間のように仰向けになって好き放題寝ている姿を見たときに、「あぁもうこれは何をしても無理だ……負けた……」とあきらめた。


最近はよく、北側にある室外機の上にのっている。日陰になっていて、ステンレスが冷たくて気持ちがいいからだろう。私も暑すぎるとフローリングに直で寝転んで涼をとることがあるので、気持ちはとてもわかる。先日も猫は夫が洗車をするのを、室外機の上で黙って見ていた。猫にとって我が家はデパートのトイレ、即ち「パウダールームでちょっとくつろげるタイプの綺麗で広いトイレ」でしかなく、我々はしがない清掃業者だ。


ところで今、百人一首関連の仕事を手伝っている。小学校の頃「ドラえもんの百人一首」マンガを夢中で読み、けっこう覚えた。少女マンガが大好きだったので、百人一首も恋愛系の歌に興味津々だった。


恋愛以外の歌はほぼ意味を理解していなかったが、大人になって改めて読み返すと、「何の変哲もない日常の一コマとか、ふと見た景色から、掛詞とかを使って思いを詠むなんて、すごいテクニックだなぁ」と思った。ラップバトルを見て「韻を踏んだり、オマージュを入れながら目の前の人の悪口を言えるなんて、すごいテクニックだなぁ」と思ったときと同じ感想だ。百人一首を見返しながら、「そういえばUZIが逮捕される前くらいまで『フリースタイルダンジョン』見てたな……」と、ついでに思い出した。


というわけで、現在、頭のなかが百人一首脳になっているので、ふとしたとき、詠みたくもないのに自然と一句詠んでしまっている。誰に発表するわけでもないのに。

最近詠んだ句はこれだ。
「のら猫や のらりくらりと (室外機に)のらないで」

せっかくなので後年、「作者はこのとき、猫のフン害に悩まされており、同時に自身の仕事のやり方について『自分のような、のら(フリーランス)の人間ですら、作業に関しては気分が「のら」ないと、なかなか重い腰が上がらない時があるのだなぁ……』という心境を、あえて滑稽に詠んだ」みたいに、いい感じで誰かに考察されたい。