吸血鬼は闇夜に誘う
著:小松 郁
愛には形などないのです。
愛に形を求めるから醜く叫び狂う。
しかしそれ故に醜く叫び狂う貴女にワタクシも狂乱の花を咲かせましょう。
そういうと彼は私の唇を密やかに自らの口に誘う。
その口の端にはキラリと一瞬キバが光に翻る。
そして徐ろに彼女の口に自分の唇を重ねる。
急に時空が反転して彼女は自分の体を高速の光の束が無限に貫かれ続けながら振り乱れて宇宙を旋回し駆け巡る自分を認めた。
こ、これは、なに・・・!
光の一粒一粒が体を貫くたびに痛みのように疼きのように押し寄せる感覚にひたすら身悶える。
それが一瞬一瞬ごとに体の芯を無数に貫いていく。
そして宇宙はまるで粘着質の生き物のように彼女の全身を絡みとってはねっとりとした質感で彼女のありとあらゆる敏感な部分をくすぶる。
彼女はあまりの感覚の激しさに意識が遠のく自分と共に宇宙と溶け込んでいくような一体感を感じる。
如何でしょう、お嬢様。
ワタクシと一体化する感覚は?
耳の奥底からうねりのような声で彼の声が密かな蜜の味を帯びて全身に響き渡る。
彼女は必死になって嗚咽とも喘ぎとも言える吐息を漏らす。
ぁう・・・、うぅうん・・・、こ、こん・・・なのって・・・・・・。
と息を漏らすと同時に激痛ともとれる快楽が彼女の芯から沸き起こり彼女は一瞬のうちに果ててしまう。
あっ・・・あっ・・・はっ・・・はっ・・・
彼女はあまりの快楽の激しさに白目を剥きやっとの思いで息を繋ぐ。
もっどぉぉぉ、もっどぉぉぉぉ!
その声に答えるようにますます光の粒は猛烈な加速と共に彼女の芯を次々に貫いてゆく。
粘着質の宇宙は執拗に彼女の全身をなぞる。
絶頂は次々に襲いかかり果ててはまたと次々に絶頂が襲い掛かって来る。
ふふふ、ワタクシはどこまでも果てていく事でしょう。
貴女とワタクシはもう一体になって引き剥がすことなどできないのです。
彼女にはもう意識と呼べるものが残っているかは定かではない。
そして宇宙の片隅に密かに深淵とも呼べる暗黒の渦が一つ穿たれたのだった。
完
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