核融合炉の仕組みを解説する
核融合炉と聞いてすでにあるじゃん。とか言われている方やどんなものか怖いなどと色々感想持たれる方が多いと思いますが一応手に入る情報で核融合炉について触れていきたいと思います。
■原子力発電所とはどう違うのか
原子力発電所の稼働にはウラン235を濃縮した燃料棒というものをまず高精度の遠心分離機で作ります。
このウラン235というものはすぐに自然核分裂連鎖反応を起こしてしまう元素で濃縮しただけで大変危険な物質ですぐに原爆に転用可能で、だからこそ北朝鮮やイランがこの核濃縮を行っているのではないか?査察に入らせろ!などと非常に厳しい目で見られ、またそのウラン235を濃縮するための遠心分離機は国際取引が厳密に禁止されており、安易に輸出したりしてしまうと捜査対象になったり逮捕の対象にもなったりします。
この燃料棒を使ったものが核分裂炉とよび今稼働している原発は全て核分裂炉です。
この核分裂炉は連鎖反応が起こると基本的に燃料棒が核分裂し尽くすまで止まる事はなく連鎖反応が起こり制御を失うとメルトダウンや核爆発という事態が待っています。
この核分裂炉にはですので主に制御棒というカドミウムなどを固めた物で中性子を吸収する事によりこの連鎖反応を止めて抑制する事により制御を行います。
これに対して核融合炉は水素核同士を融合させてヘリウムなどが生成される過程で出るエネルギーを電気エネルギーを得ようとするものです。
これにはローソン条件という非常に高密度の環境が必要で自然界では太陽などが莫大の水素ガスが集まってその自重によるあまりにも高い圧力のために内部で自然核融合が始まるローソン条件の圧力の値がありそれを超える必要があります。
厳密にいうと日本語では核融合も核分裂も原子力を利用した発電所ですから原子力発電所ということになりますがこちらは核融合炉が本格的に稼働する2050年ごろまでにかけて原子力発電所とは違う名称で呼ばれる様になると思います。
■様々に実験される核融合反応
核融合炉においての燃料となる元素は水素が有力ですが、核融合反応を利用して様々な実験がされているうちたびたびニュースを賑わすのが新元素の発見です。
これは近年ではニホニウムという日本由来の元素が正式に元素名として認められたと聞いた方は多いかと思いますがこれら新元素の発見で常に用いられている手法が高速加速器による従来の元素同士をぶつけ合う事で新元素を核融合反応で生み出す事です。
ニホニウムは亜鉛元素にビスマスという元素をぶつけて核融合反応を起こし生み出した元素です。
この様に今の時代の新元素の発見には核融合反応はなくてはならない手法となっています。
■水爆とはどう違うのか?
水爆も核融合反応を起こして甚大な被害を起こす兵器ですがこちらは基本的には核分裂と核融合の複合型で作られています。
この水爆には中心部に核分裂を行うウランの塊が配置されておりそれを取り囲む様に核融合反応を行う重水素リチウムというものが配置され核分裂の原爆が爆発すると同時にその圧力によって周囲の重水素リチウムをローソン条件を突破させて各融合反応を引き起こす事で同時に核融合爆発を起こさせる事で原爆の3000倍程度まで引き上げられると言われています。
これは大変危険な兵器ですがもしかしたらこの水爆で使われている様な重水素リチウムという物が中性子の減速材としての役割を果たすことが研究されていることなど核融合炉でも重要な役割をもしかしたら果たすかもしれません。
超高密度の重水素リチウムを配置して強烈な圧力を加えるという様なことが考えられますが重水素を使う事は濃厚だと個人的に思いますがこれは基本的には核融合炉の発想では今のところ重水素のプラズマが利用されることが検証されていますがこちらはまだ確定ではないかもしれません。
ですので盛んに言われている様に核融合炉はクリーンというのは圧力を弱めればローソン条件を下回り核融合をすぐ止められるという事で原材料等はもしかしたら水爆の原料と同じになる可能性はあります。
■実際の核融合炉とはどういった機構で動かすのか?
今構想されている様な内容はまず重水素をプラズマ状態まで加熱してそのプラズマを外側から超強力な超電導マグネットの磁界で閉じ込め圧迫することでローソン条件を突破させるという考え方です。
これは内部では重水素をプラズマ状態にするために1000度程度まで加熱して超強力なマグネットで磁界を作り極微細な点にそのプラズマを圧迫するという形態になります。
ここで問題になるのが電気抵抗によるジュール損失により強力な電力が流れ込むとその電気抵抗により莫大な熱が発生してマグネットなどが溶けてしまうtいうことが挙げられます。
このためにジュール損失がゼロになる超電導マグネットの構想が浮かび上がるのですがこちらは核融合炉の内部ではプラズマ化された1000度の重水素が核融合を起こす一方でマイナス70度以下で超電導状態にマグネットを保つだけの冷却システムを稼働させながら巨大な電力を流し込むことで炉のエネルギー損失量vs核融合のエネルギー発生量から利得として得られる電気エネルギーとの間での綱渡りになります。
こちらが現段階で浮かび上がっている構想ですがこの機構を実現させるために様々な工夫で炉のエネルギー消費量を押さえ込む研究、核融合による熱エネルギーをどうやって電力に変換するかの設計や効率の問題などが盛んに行われています。
■核分裂反応で発電を行いつつ燃料の増殖を行うという目的で設計された高速増殖炉の挫折
1960年代ごろから構想され100年以上かけても成功させようと研究開発され続けているのが、いまだに実用化できずにいる高速増殖炉です。
これは天然ウランの枯渇という問題を抱える中で核燃料の増殖を目的に設計された炉で発電を行いつつ通常の圧倒的産出量の多い核分裂反応を起こさないウラン238から少量のウラン235やプルトニウム239などを燃料源にして最終的に核燃料のプルトニウム239を得るという目的で設計された炉となります。
こちらは国際協力の中で日本も主導的な役割で開発が進められてきましたがどうしても実用化には炉や各配管類の耐久性の問題、炉の冷却課題、プルトニウム239の蓄積と全炉心溶融事故(Bethe-Tait型事故)による悲惨な大規模核爆発事故の可能性を排除できず、次々と各国が撤退して2016年に日本のもんじゅも半世紀の時を経て廃炉となりましたが、日本政府はまだ高速増殖炉の研究を進めることで国際社会を主導しています。
こちらは仏教の文殊菩薩から名前を得たもんじゅも含めて度重なる失敗に、福島での東日本大震災での通常の軽水炉の津波事故によるメルトダウン事故などもあり、自然災害を絡めた炉の安全性の問題が新たに浮上した中で、通常の軽水炉でさえ稼働が困難な状況で、文殊の知恵どころかただ散々たる大失敗の結果としか言えない状況にあります。
こちらは映画のバックトゥザフューチャーで博士がプルトニウム?そんな物は未来には沢山あるだろうが今は1955年だぞ!と言ったかの様なセリフが思い出されます。
■最後に
とりあえずここら辺が現時点で進行している核融合炉のまとめです。
様々な観点から解説してきましたがもしかしたらウラン235の核分裂の様に簡単に核融合を起こしてしまう元素の大発見などもあるかもしれませんがこれはまだ未知数の研究として基礎物理学などでの世界での話にはなるかと思います。
以上ですがここまではあくまで核融合炉の設計図に過ぎませんのでこれはいくらでも仕様変更がされる可能性があります。
なぜエネルギーにそれほど固執するかというとエネルギーがない社会は一気に何もない抜け殻の社会となってしまう中、安全性やクリーンエネルギー、自然エネルギーではどうしても現在の温暖化対策目標などに向けた2酸化炭素排出問題と、ただもう先は無い資源の枯渇という問題を抱える中、重水素は比較的安価に簡単に作ることができる燃料だからと言えます。
これはどちらかというと現時点ではちょっとだけ水爆の研究に応用できるかもという程度で政治・軍事的な問題の関連性も比較的薄いということも挙げられます。
最後ですが2050年度に向けて盛んに行われている研究で皆様も是非こういう研究に取り組みたいと思われたなら幸いです。
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