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The Who「The Who by Numbers」(1975)

今回はザ・フーを採り上げます。ザ・フーのアルバムというと名盤揃いですが、その中でも7枚目のスタジオ・アルバムの「The Who by Numbers」はかなり地味で、結構スルーされている方も多いのではないでしょうか?
私もその内の一人で、2年以上前のブログ仲間の方の記事で、ようやくその存在を再認識した程度です。ただこのアルバム、やっぱり侮れませんし、ザ・フーのファンのみならず、やはりロック愛好家は耳にすべきアルバムじゃないかなと思ってます。

私の40年近くに亘る愛読書、ローリングストーン レコードガイドで本作をチェックしてみると、★★★★評価。しかも超辛口な同ガイドなのに「最も不思議なアルバムであり、最も感動的なものの1つ」とのコメントが…。この時期、ピート・タウンゼントは沈み込んでいた時期で、年老いていくロッカーがまだやっていけるのかという問題に正面から取り組んでいたらしい。そういったことが各曲にも反映されているが故の高評価なんでしょうね。

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1曲を除き、全曲ピート作。プロデュースはグリン・ジョンズ。よくイーグルスのプロデューサーが関わったから本作の音がウエストコースト風になったとの記述が見られますが、グリンは1971年発表の「Who's Next」でも関わってますからね。あまり関係ないと思うのですが。ジャケはベースのジョン・エントウィッスルが描いたもの。数字を辿っていくドット・パズル絵ですね。

このアルバム、何と言ってもA面が素晴らしい。
まずはピート自身がヴォーカルを取る②「However Much I Booze」。
ピートらしいカッティングギターのリフが印象的な楽曲。歌詞はかなりピートの個人的な想いが綴られていたので、ロジャー・ダルトリーは歌うことを拒否したらしい。
やはりここはザ・フーらしくライブ映像をアップしておきます。キース・ムーンが暴れまくってますね~。この人はハイハットをおとなしく刻むってことが出来ないんですかね~(笑)。

超ポップで私のお気に入りのナンバーの③「Squeeze Box」はシングルカットもされました。
ザ・フーにしては珍しくカントリータッチなアレンジ。後半からはピートが弾くバンジョーまで奏でられます。そして間奏ではアコーディオンも聞こえますね。結構ユニークな曲です。でもここでもキースは叩きまくってますし、ジョンのベースも独特。
アップした映像は、なぜか刑事コロンボとエキゾチックな女性が踊っているもの。これが妙に曲と合っているんですよね。当時、ドラマに使われたのでしょうか。

これこそザ・フーらしいロックナンバーの④「Dreaming from the Waist」。もうイントロからジョンのベースが唸ってます。静と動が織り成すコントラストが素晴らしい。やたらとキースのドラムがうるさいんですが、静かなところでは流石におとなしい(笑)。でもこれが動のパートになると3人が3人とも暴れまくります。3分30秒過ぎからは荒々しいザ・フーの本領発揮ですね~。

ピート作ではない唯一の楽曲が、ジョンの⑥「Success Story」。
この曲の解釈として、掲記のローリングストーン レコードガイドから以下引用します。
「バンドの経歴を振り返ってエントウィッスルが皮肉っぽい見方をするにつれて、怒りを爆発させるかのように展開し、最後にはロックンロールを心の底から支持するのである」
なんか英語を無理やり日本語訳にしたような感じで、ローリングストーンらしくちょっと分かりづらいですが、ピートが本作でいろいろと自己探求していくのとは対象的に、ジョンは「やっぱりロックだぜ!」と宣言しております。つまりピートに対するアンサーソングみたいな感じってことですね。

一瞬ポール・マッカートニーの曲じゃないの…って思ってしまった⑧「Blue, Red and Grey」。
ピートのメロディメーカー振りを存分に発揮した佳曲。なんとピートのウクレレの弾き語り。ホーンはジョンの演奏です。ロジャーもこの曲が好きだったみたいですが、当のピートは収録を嫌がったみたいです。最後はプロデューサーのグリンが推したとのこと。こんな曲もサラリとやってしまうとは…、ザ・フーって器用なバンドなんですよね。

エンディングはやっぱりザ・フーらしいロックな⑩「In a Hand or a Face」。
ドラマティックな展開はザ・フーらしい。コーラスもキャッチーだし、彼等の魅力が詰まった1曲。ドカドカうるさいキースのドラムは唯一無二の存在だし、ジョンの動き回るベースもカッコいい。ロック系のバンドってヴォーカリストが目立つのが当たり前ですが、ザ・フーに限っては、他の3人が目立っている不思議なバンドです。

いや~、なかなか味わい深いアルバムですよね。決してスルーしてはいけないアルバムだと思います。
あ、全く興味ないと思いますが、最後に線を引いた後の絵もアップしておきます…。

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