James Taylor「In the Pocket」(1976)
私の大好きなジェームス・テイラー。特に、フォーキーなJTからR&Bをうまく自らの音楽に昇華させていったJT、つまり70年代中期~後期の作品が個人的にはお気に入りです。
そんななかでも1975年発表の「Gorilla」と本作は大好きな作品です。
JTの魅力って何でしょう? そのヴォーカル、メロディ、バックの演奏、すべてが心を癒してくれるような気がします。
本作でも①「Shower the People」からJT節が聴けます。このアルバム、この1曲目の出だし ♪ You can play the game~ ♪ とJTが囁いた瞬間から音楽の魔法にかかってしまいます。カーリー・サイモン(当時JT夫人)のコーラスもいいです。
この時代のJTの音楽的センスが光った1曲が③「Money Machine」でしょうか?
ほろ苦いメロディラインのイントロと、それに続く軽快なドラムのフィルイン。曲は実はソウルファンク色の強いもので、ラス・カンケルのドラムが冴えてます。バックコーラスは前述のヴァレリー・カーター。ホーン・オルガンにニック・デカロ、ホーンにはマイケル・ブレッカーが参加してます。
またJTのアルバムにはいぶし銀のように光る小作品が必ずあるのですが、個人的には本作は⑤「Everybody Has the Blues」がそれに該当します。
いろいろ大変なことがあるけど、だからといって That's not the end of the world とJTは笑い飛ばしてくれます。♪ Everybody Has the Blues ♪
励まされますね~。
ちょっと黒い⑦「Woman's Gotta Have It」はボビー・ウーマックのカバー。原曲は知りませんが、JTらしいR&B色を漂わせながらもリラックスムードたっぷりのAOR的な楽曲に仕上げてますね。
本作のハイライトは御大スティービー・ワンダーとの共作⑨「Don't Be Sad 'Cause Your Sun Is Down」でしょう。
JTの癒し系音楽と、スティービーの心に響くハーモニカがあれば、もう何も言う事はないでしょう。スティービーがヴォーカルとハーモニカで参加。
リー・スカラーの相変わらずメロディアスなベースもいいし、この曲は本当に素晴らしい。
このアルバム、セールス的にはイマイチだったような気がします。しかしノーマン・シーフが手掛けたジャケ(裏ジャケのセンスも笑えます)といい、中身の音楽、初期のフォーキーなJTとは一味違うR&B的なリズムがJTサウンドにマッチしたものといい、素晴らしい作品です。
そしてJTはワーナーに別れを告げ、コロンビアへ移籍。1977年に、これも名作「JT」を発表していきます。