Queen「Hot Space」(1982)
4月のドゥービー、先行予約の抽選に締切間際に応募したにも関わらず、当選してしまいました。あまり応募がなかったのかなと不安になりつつも、マイケル・マクドナルドとトム・ジョンストンのいるドゥービーなんて、この機会を逃すともう見れないかも…と思うと、期待感が膨らみます。
さて今回は皆さん大好きなクィーン。でも皆さんが大嫌いな問題作です(苦笑)。洋楽を聴き始めた頃、ちょうど「フラッシュ・ゴードンのテーマ」が発表されたタイミングで、その後に発表された「グレイテスト・ヒッツ」も直ぐに購入。そこに収録された全ての楽曲に感動し、後追いでクィーンを聴き始めました。
そしてリアルタイムに発表された問題作「Hot Space」。1曲目の「Staying Power」に「??」、3曲目の「Back Chat」で腰を抜かし、4曲目の「Body Language」で聴くのを止めてしまいました。これはクィーンではない、そう判断し、この音楽的変化にガッカリしてしまいました。
実はこのアルバム、その後、何回かトライしました。自分の音楽的嗜好の変化もあるし、時代の流れもありますしね。でもダメでした(笑)。それから更に相当な月日が経過。改めて聴き直し、なんと不思議なことに何回も何回も聴き直しております。
駄作と思っていたから気付きませんでしたが、このジャケット、デザイン的にもカッコいい。ある意味ファンキー。
そう、このアルバムはディスコというよりファンク。これは、前年にシングルカットされたジョン・ディーコン作「Another One Bites the Dust」が大ヒットを記録したことと無縁ではないでしょう。もともとベーシストのジョン・ディーコンはブラック・ミュージックが好きで、そこにフレディ・マーキュリーが乗っかった格好で、このアルバムが作られたものと思われます。根っからロッカーのロジャー・テイラーやブライアン・メイは否定的だったんじゃないかなあと。
まずは私が一番気に入った作品をご紹介致します。それがフレディ&ジョンの共作の⑩「Cool Cat」。
このアルバムにはデヴィッド・ボウイと共演したあの名曲が収録されてますが、実はボウイは最初、この「Cool Cat」にコーラスで参加しようとしました。それがどうもうまく行かず、じゃあ、一緒に曲を作ろう…ということであの名曲が誕生したらしいです。「Cool Cat」はボウイでも歌いこなせなかったともいえる曰く付きの作品。
でもコレ、見事なアーバン・ファンクなナンバーと思います。フレディのファルセットを効かせたヴォーカル、そしてこの見事なリズムギターはジョンのプレイ。実はこのトラックにはブライアンもロジャーも参加しておりません。エレピはフレディですが、他はすべてジョンがプレイしております。このアルバムを象徴するようなナンバーなんですよね。正直アーバンなR&Bが好みでない方は、この私の意見を即座に却下されると思いますが(苦笑)。
そして驚愕のオープニングナンバーがフレディ作の①「Staying Power」。豪快なホーン・アレンジはアリフ・マーディンによるもの。これ、まるでマイケル・ジャクソンみたい。実は本作は「スリラー」の半年前に発表されており、後にマイケルは「Hot Spaceから影響も受けた」ようなことを話しております。このアルバムは、ハードロック・ファンから総スカンを喰らっても、一部違う方面の方々からの評価は高かったのかもしれません。
ちなみにこの作品はライブではしっかりロックバンドとしてのクィーンが存分に発揮されたものになってます。これがまたカッコいいので、スタジオバージョンとライブバージョンと、是非聴き比べてみて下さい。さすがクィーンです。
ジョン・ディーコン作の③「Back Chat」は完全なファンク・ミュージックです。
これはないだろう~と猛反発したのがブライアン。そりゃ彼のギターの見せ所がないんですからね。結局、ギターソロを入れることで妥協したらしい。ですからこの曲もブライアンはリードのみの参加。リズムギターはジョンです。確かにギターだけがクィーンしてる(笑)。
当時、確かにダンス・ミュージックがファンク化していったような気がします。パワーステーションはこの後ですし。時代を先取りした格好ですが、なぜクィーンがそこまでやるの??って当時思ってました。今、聴くと、フレディが見事に歌いこなしているし、ジョンも楽しそう…。
そしてこれもフレディ作の問題作の④「Body Language」。
wikiにも記載されてますが、ブライアン曰く「ゲイ・アンセムのような曲は、自分が締め出されている感覚があった」と語ってます。このオフィシャル・ビデオも決して上品なものじゃありません。私はこの曲は決して嫌いじゃないですが、このPVには嫌悪感を抱きます。
シンセベースはフレディによるもので、ジョンは不参加。この曲はファンクとも呼べず、アレンジを変えればマンハッタン・トランスファーがやりそうなドゥーワップ・ソングにも聞こえます。
ここでようやくクィーンらしい楽曲のご紹介が出来ます。それがデヴィッド・ボウイとのコラボの⑪「Under Pressure」。
ベースラインは当時のジョンらしいプレイ。クィーンらしい緊張感のある壮大な演奏が楽しめます。この曲のフレディとボウイとのヴォーカルの掛け合い、煽るようなロジャーのドラムが大好きです。
アップした映像は、どなたかが映像を繋ぎ合わせて作ったものですが、よく出来てますね。
今回はエッジの効き過ぎた楽曲を紹介しましたが、実は往年のクィーンっぽい⑥「Put Out the Fire」、ジョン・レノンに捧げた名曲⑦「Life Is Real」等、非常に聴きやすい曲も収録されているんですよね。そういったことも含めて考えると、時代を先取りし過ぎた楽曲が目立つだけで、バランスが取れたアルバムとも云えます。
近年はこの問題作も再評価されているようです。多分後追いの若いリスナーからの評価なんでしょうね。当時のショックから立ち直れない同世代の方々も、今聴くと多少理解出来る部分もあるかもしれません(いや、ないかもしれませんが(笑))。